第25話
ウィルさんからマシンガントークを受け続け体感で小一時間ほど経ち、ようやく終わったようだ。
…話題には気をつけないと、おそらく魔法陣関係の話をするときは気をつけよう。
「概ね柴田君の認識であっているよぉ。補足をすると新しい魔法陣やウィル君の関わる研究に対しては特に反応するからねぇ。」
「フリー王子、そんなことはないですよ。」
うーん、自覚があるのかないのか微妙だな。
地雷を踏まないようにしなければ…
バリーさんがこちらへ近づきコソッと『これでもだいぶ改善されたのですが…』耳打ちをした。
これで改善された状態か、昔はどれだけ酷かったのだろう。
脱線してしまったので本来の話に戻そう。
「今ウィルさんにも見てもらった通り、昔の鑑定魔法までいかないかもしれませんが詳細な項目を表示できます。フリー王子の要望にもありました通り、一つの魔法陣で『人間』『物質』、『動物』そして『魔物』にも鑑定が使えるモノを作ります。それでウィルさん、魔法陣の開発手順について教えていただけませんか?」
「開発手順ですか?私の場合は、古い資料や古い魔道具に記載されている消えかけている魔法陣を復元したり。大規模魔法陣から抜き出せそうな模様を見つけて何度も試す感じですね。」
そうか、僕のように魔法陣がプログラムに見えないから模様を補完したり、動くかどうか分からないものを出来るまでトライアンドエラーするしかないのか。
その開発手法だから仕様を決めると言うことがないのか…
開発手法を決める為にこれを聞いておこう。
「今回の鑑定の魔法陣ですが、フリー王子。いつまでに完成させると言うお考えはありますか?」
「そうだねぇ。1ヶ月後にはまず王都の騎士団で試験的に使ってみたいかな。その時に出来ていなくても個別の魔法陣4種類を渡すからねぇ。ただ4種類の魔法陣運用後に全部入りの魔法陣に変更するのは二度手間だし業務に混乱が生じてしまうからなるべくは1度で済ませたいなぁ。」
1ヶ月後ということは開発の他に騎士団への説明資料を作成、ウィルさんの魔法陣発表資料作成があるな。
資料作成で1週間とを考えると開発に割ける時間は正味2週間と言ったところか。
1週間はバッファとして考えたいからなぁ。
短期間で開発をしないといけないのだがある程度情報は出揃っているし、問題は入力なんだよなぁ。
それを全て考慮するとアジャイルで作る感じになるな。
「承知いたしました。では今回はアジャイルという手法で鑑定の魔法陣を作っていきます。」
「柴田様、そのアジャイルというのは…」
「あぁ、簡単にいうと『設計』『実装』『検証』を完成するまで反復すると言ったものです。」
手法もそうだが考え方が今回の開発にはあっている気がするんだよな。
アジャイルの考え方として開発人員と対話し状況の変化に応じて対応する。
ウォーターフォールのようにガチガチに設計書を作らずに対話、検証の中で必要な情報をまとめた資料作り…うん、今回の鑑定の魔法陣開発にぴったりだ。
「開発手法は任せるよぉ。その1回目の検証はいつにするつもりかな?」
そうだよな、責任者としてはそこが気になるよなぁ。
まずは作って1回目のフィードバックをもらおう。
「そうですね、3日後に1度モノを見ていただきたいと考えています。」
「わかったよぉ。それじゃあ3日後ね、私は王宮とやりとりがあるので3人で進めていておいてぇ。」
よし、まずはウィルさんとバリーさんで役割分担をしよう。
「ウィルさん、バリーさん。3日後に向けて役割分担をしたいと思います。ウィルさんは鑑定の魔法陣を発動する際にどのように対象を指定するかを決めたいです。数字を思い浮かべる仕様だとどの対象がどの数字かと言う混乱を招く恐れがあります。どのような指定なら使いやすいか使用方法を考えて紙にまとめていただけますか?」
「分かりました。ただ、考えた指定方法ができない場合もあると思いますが…」
「そうですね…複数案考えてもらっても良いですか?バリーさんはウィルさんの話を聞きつつ騎士の立場として仕様の補強をお願いします。それと同時に検証の計画を立ててみてください。氷の魔法陣で作成した時と同様にお願いします。」
「承知いたしました。」
さて、2人に役割を振って僕は今プログラムを書くわけにはいかないから2人が進める仕様検討の進み方について監督しよう。
しかし、ウィルさんのクセの強さがこの後分かるのだった…




