第22話
ウィルさんへの辞令が国のトップである国王から出されることがトドメになったのか伯爵様は『くれぐれも頼みますよ…』と弱々しく言った後、フラフラと部屋を出ていった。
それに慌てて続くアーロンさん。
エディンさんはバリーさんに何か耳打ちをしてから部屋を出ていった。
それから僕達は機関用の部屋へ移動した。
案内役はバリーさんだ、そこで今後についてを話をした。
概ね予想していた通りだがウィルさんが来るまではstdmagic.hのインデックス作成の続きを行い、ウィルさん合流後は鑑定の魔法陣について改めて検討をすることになった。
出力可変魔法陣についてもその時に少し触れるみたいだ。
フリー王子の調査案件は色々と時間がかかるそうなのでしばらくはこちらに集中することになった。
当面の予定が決まったところで昼の鐘が鳴った。
小休憩でフリー王子がウィルさんとバリーさんと出会った学院時代の話をしてくれた。
バリーさんは時折『いえ、それは…』と控えめな反論を言おうとしているようだが遮るようにフリー王子がエピソードを話すと言った感じだ。
ここにウィルさんが加わったらどうなるのだろうかと思いつつ作業を再開した。
僕とバリーさんは変わらずインデックスの作成をし、フリー王子は最初こそstdmagic.hを触った時に表示されるウィンドウを興味深そうに見ていたが所々しか読めなかった為か何やら紙に書いては箱の中に入れてと違うことを始めた。
あれが魔道具だろうか?
箱の中に紙を入れて蓋を閉めると箱が緑色に淡く光る。
合間に魔道具について見てみたいな。
「うん、いいよぉ。魔道具についても今後着手しよう、私も作ってもらいたいものがあるし。」
…また心を読まれたか。
しかし、トップから許可というか『やる』と宣言したのでそのうち魔道具についても触れるだろう。
そうこうしているうちに晩の鐘が鳴り夕食時となった。
「それじゃあ今日のところは終わりにしようか。この機関の方針としては残業は無しとしよう。それじゃあ私は伯爵に少し話があるから。バリー君案内は不要だ、部屋の外に部下がいるから彼女に案内をしてもらうよ。」
「承知いたしました。」
フリー王子が部屋から出ると程なくしてメイドさんが食事を運んできてくれた。
この人はフリー王子の部下ではないよなと思いながらスープを啜った。
最近脂っこいものは体が受け付けなくなってきているからこう言った野菜がメインのスープは嬉しい。
食事後、バリーさんは部屋を出ていった。
寝る前に新しく作る鑑定の魔法陣の仕様について案出しをしよう。
簡易鑑定関数の引数は2つあり第一引数は対象、第二引数は鑑定内容だ。
第二引数は『3』の詳細項目付きの固定でいいとして、第一引数は発動者からの思考…コマンドライン引数は対象にする場合、発動者が数字を思い浮かべるのは少し違うよなぁ。
思考を入力値とすることが出来たから数字でも数字以外の文字でも可能という前提で一度進めよう。
第一引数の対象は4種類、人間と物質と動物と魔物だ。
うーん、文字の判定は容易いが同じ意味を指す言葉、さらには名詞まで許可すると大変なことになるな…
動物と同じ言葉として犬、猫、鳥…と列挙するが存在するだけ書き出さないといけないからな。
ある程度線引きしないと収拾がつかないな。
関数の説明以外の数字を指定したらどうなる?
いや、どうなるかわからないものをメンバーに検証させるわけにはいかない。
安全第一だ。
この考えは駄目だ、寝て忘れよう…
次の日から2日間インデックス作成を進め、晩の鐘が鳴る頃には全体の3割まで進められたというところだ。
このまま作業を進められれば10日程度で全て書き出せそうだ。
そして新しく『乾燥』『加速』『シミ取り』の3つ魔法を発見した。
見つかる度にバリーさんは興奮し、フリー王子は書き出した紙を興味深そうにじっくり見ていた。
乾燥を使えばドライフルーツ的なものが作れるかもしれない。
果物をもらえたら検証してみよう。
フリー王子から明日ウィルさんが屋敷に到着する予定とのことだが早くないか?
転移の魔法陣でも使うのだろうか?
バリーさんの話では魔法が好きで魔法省に入ったと言う人物だ。
初日に少ししか話していないが真面目そうで伯爵様に似ていると言った印象だ。
突然の異動だがかつての学友となら気持ちの切り替えもできるだろう。
しかし、フリー王子に振り回されることを考えると期待と戦々恐々で相殺か?
どうなるだろうと思いつつ、眠りについた。




