第19話
「…直せるかもしれない?」
フリー王子が頭を抱えながらそんなことを呟いた。
顔の表情は見えない、何を直すのだろうか?
そう思っているとパッと顔を上げたフリー王子は紙を受け取り魔法陣をじっくり眺めた。
「これは水の魔法陣に似ているけど違うね。どれどれ…」
王子は魔法陣を発動させるとドンっと先ほどバリーさんが出したサッカーボールの大きさより二回りは大きい氷の塊が出た。
「…適性魔法に合致すると威力や効果が上がるかもしれませんね。」
テストするのに難しいケースである適性魔法が氷魔法という検証が消化できた。
おっと、大きさを測らないと。
「さて、柴田君。検証はまだ続けるかい?」
「はい、まだ検証する内容が残っています。また、フリー王子の適性魔法が氷でしたので引き続きご協力いただきたいと考えております。しかし、王子は視察に来られたとのことですしこちらへしばらく滞在するとなると伯爵様との交渉もあると思いますのでそちらを優先して構いません。」
「うん、そうしてくれたら嬉しいな。ではハワード伯爵、今後について話そうか。柴田君のこと含めて。」
僕達はそのまま応接間へ向かった。
伯爵様をはじめハワード陣営は緊張した状態だがフリー王子は変わらず笑顔のままだ。
何を言い出すのだろう。
「ではでは、視察の結果だけど…柴田君はこのまま伯爵家で保護と言うのが一番いいかな。」
王宮に軟禁されるかもと覚悟はしたが現状維持で良かった…
「ただねぇ、柴田君のスキルとその有用性を見るとこのままというわけにもいかないかなぁ。王宮だけではなく魔法省とも連携をとったほうがいいね。」
おぉ、どんどん話が進んでいく。
ひとまずはフリー王子の話をじっと聞いていよう。
「確かハワード伯爵のご子息は魔法省に勤めてたよね?」
「はい、おっしゃる通りです。」
「そしたらハワード邸の一室をお借りして新設する行政機関の拠点を作ろうか。目的は魔法陣全般についてだけど主に新しい魔法陣の開発、既存魔法陣の改修。そして、機能しなくなった魔法陣の調査…ご子息のウィル君をそこへ異動させれば王宮と魔法省の担当者がそれぞれいて機密情報の漏れも最小限で済みそうだね。」
本来は会議を重ねてやっと決まりそうなことがどんどん決まっていくなぁ…
仕事内容と体制については問題なさそうだ。
むしろ、仕事内容が魅力的すぎる。
人数は少ないが報告体制も改善されて伯爵様の仕事量が減るな、その代わり心労は増えそうだけど…
「この機関のトップは立場的にも私だね。それから立ち上げメンバーはウィル君、柴田君、バリー君としておこうか。魔法学院の主席と次席がいれば仕事が捗るでしょ。そういうわけでハワード伯爵、私が滞在する部屋と機関用の部屋を借りるよ。」
「はい、承知しました。ところでフリー王子、バリーを国の機関へ異動させるということですか?」
「厳密に言うとこの行政機関は大っぴらに公表しないよぉ。だから公式的には所属としてはそのままと言うふうに見せよう。色々と私が調査していた件も関わってもらいたいしねぇ。」
絶対それ、国家案件レベルでしょ!
こっちは一昨日まで夜勤を必死でこなす40過ぎだぞ。
「うんうん、柴田君もやる気のようだねぇ。そういえば柴田君の危険度についてもこの機関で調査しようか。まぁ、私の見立てでは柴田君は危険人物ではないけどねぇ。」
くそ、読心を使われて断れない空気感にされた。
しかし、諜報部隊責任者様から危険人物ではないとお墨付きをもらえたのは大きい。
何より国家機密が含まれるのがネックだが、この機関の始動は楽しみでもある。




