第15話
「いいえ、信じましょう。」
「主様!?」
驚いた、伯爵様は信じてくれるのか。
アーロンさんの方が正しい反応だよなぁ、普通初対面に近い人に対してはそうなるよなぁ。
「ふふっ、初めて柴田様の驚いた顔を見ることが出来ました。柴田様を信じるのは根拠というより領主としての勘ですかね…私は貴族として様々な方と会話や交渉をしますが、主に腹の探り合いです。その探り合いですが、相手が嘘をついているのかどういう意図があって話しているのかを把握しなければなりません。柴田様は考えて何を話すべきか取捨選択されているかと思いますが、嘘はついてないと見えます。」
すごいな、見抜かれていたか…
貴族としての経験から成せる技だろうか。
「それに柴田様は当家で保護していますし、何より我が領の領民です。息子のウィルも助けられましたし、堅物のバリーも心開いているみたいですしね。悪人だったら結構私勘が働くのですよ。」
信じてくれるならありがたいな。
それを裏切ることのないようにしないといけないな。
「今は判断材料が足りません。この件は保留としますが、いずれはっきりとさせる必要がありますわね。この件についてはこれでいいかしらアーロン?」
「主様の決めたことに異論はありません。しかし警戒は続けさせていただきます。」
どうやら僕の危険人物疑惑については保留になったみたいだ。
アーロンさんは職務に忠実だな、まぁそれが正しい反応だな。
「ではエディン、領内でもうすぐ生まれるあるいは生まれたばかりの赤子がいるか調査して報告を。その中から協力してくださる、口の固いご家族にお願いしましょう。」
お、伯爵様の計らいでサンプル数も増やせそうだな。
ありがたいやら申し訳ないやら…
「しかし、問題は王宮への報告です。どうしましょう、通常執務も滞りますし…」
「伯爵様、王宮への報告は逐一しないといけないモノでしょうか?例えば3日置きにまとめて報告というのは出来ますでしょうか?」
「それは報告を遅らせるということですか?王宮への報告義務に抵触する可能性がありますが…」
「はい、結果的にはそうなります。しかし、状況としてこれからも新魔法陣が発見される可能性が高いです。発見する度に王宮へ遣いを出すのは非効率的かと…それと魔法陣についてどのような内容なら時間を置いてから報告しても可能ですか?逐一報告をした場合、報告をする人、報告を受ける人もそれだけの労力と時間を費やします。僕が招いたことで恐縮ですが、この報告の体制を続けるといずれ伯爵様が潰れてしまいます。」
そうなのだ。
通常業務の他に召喚の対応に加え、新魔法陣について何かあれば報告をしている。
オーバーワークになる前に対処しないとな、お世話になる身だし。
まずは報告しなければいけない内容を確定する。
それから定時連絡の提案、出来れば1週間に1度が理想だな。
「そうですね、新魔法陣の開発や魔法陣が使用できなくなったというのは至急の報告にあたります。時間を置いても良いという情報は現時点では判断しかねます。それと定期的な連絡は調整をすれば可能…だと思います。おそらく王宮の者がこちらへ滞在すると思いますが…」
王宮の担当者が監視に来る…まぁそれが妥当だろうな。
魔法陣の一覧化についてはこれが決まるまでストップした方がいいな。
今は発見した魔法陣について検証して情報をまとめておくのが吉だな。
「定期的に報告をすることを提案してみてください。それまでは見つかった3つの魔法陣について検証して情報をまとめておきます。」
これで伯爵様の仕事量が減ればいいのだが…
しかし、その考えは甘かったと翌日知ることになる。




