第11話
手を休めていると廊下から数人の足音が聞こえる。
バリーさんは伯爵様へ報告に行き、複数の足音ということは直接確認に来たのだろう。
まずは標準魔法を一覧化しておきたいのにと思っていると足音が止まった。
部屋前まで来たようだ。
ドアが開き伯爵様とアーロンさん、エディンさん、バリーさんが入ってきた。
「柴田様、不躾な質問ですが新しい魔法陣である氷魔法を見つけたとバリーから聞きましたが本当でしょうか?」
駆け足で来たのか少し呼吸の荒い伯爵様が聞いてきた。
うーん、なんて答えようか。
標準ライブラリにはあるけど魔法陣にできないから証明のしようがないしなぁ、それにまだ新しいと言われる魔法陣があると思うんだよなぁ。
正直に話すか。
「はい、そのような記載を見つけました。」
伯爵様とアーロンさん、エディンさんは息を呑んだみたいだ。
「しかし、僕はこれを魔法陣にすることが出来ないため証明することが出来ません。」
伯爵様は一瞬言葉を探すように視線を落とした。
深く息を吸い、呼吸を整えてから口を開いた。
「柴田様、重要なのは可能性です。先日息子が開発した魔法陣ですが発表当初すごく騒がれました。昨日、契約の魔法陣が使えなくなったことはお話しいたしましたが実は他にも使えなくなった魔法陣が複数あるのです。その中の一つが鑑定の魔法陣です。」
ん?
鑑定の魔法陣もあったのに使えなくなって、それを息子さんが見つけて修正したということか?
いや、別物かもしれないな。
聞いてみるか。
「その使えなくなった鑑定の魔法陣というのはどのような結果が映し出されるのですか?」
「今の鑑定結果より詳細な情報も映し出されたそうで、住民の台帳などに活用されていたそうです。犯罪歴も映し出されるので騎士団でも取り締まる時に重宝したそうです。」
それはまずいな…
契約の魔法陣もそうだが治安に関わる重要社会インフラが停止したのに原因究明、復旧が出来なかったのか…
契約の魔法陣は紙での運用でまだ何とかなるレベルだが治安はなぁ…
機能しなくなった魔法陣はまだ複数あるのか…
「このような経緯があって今王国は沸き立っています。これから色々魔法陣が開発され、以前のような暮らしになるんじゃないかと…」
そうか、失われたものが少し元に戻ったことで希望の光が差した感じか。
ウィルさんすごいな。
しかし、今やっている作業が完了したら複数どころではない数の新魔法陣が出てくる可能性があると言ったらどうなるだろうか…
バリーさんのようにフリーズしないように小出しで伝えるか。
「伯爵様、僕とバリーさんはこれまで魔法の種類をまとめていました。」
「承知しております。」
「現在まとめた数は100を超えています。」
「え、えぇ」
「全量は推測ですが10倍しても足りません。もし100ある内1個の割合で新魔法陣が見つかるとしたら10個は見つかるという計算になります。」
咽せる伯爵様、『う、嘘だろ…?』とアーロンさん、『これは王宮と魔法省案件になるかと』とエディンさん。
「割合通りでなければこれから先見つからないかもしれません。逆に10個以上見つかるという可能性もあります。」
「は、はい?今何と…?」
「あとは概念的に聞いたことがないものも出てくるかもしれません。」
あ、伯爵様目に光がなくなって乾いた笑いが浮かんでいる。
アーロンさんとエディンさんは口を開けてフリーズしてる…
バリーさんは…ギリギリ大丈夫そうだな。
伯爵様達が元に戻るまでインデックス作成作業を進めているか。
「バリーさん、伯爵様たちが元に戻るまで作業をしていましょうか。」
「は、はい!歴史に名を刻む作業ですね!」
「そんな大層なことはしませんよ、大袈裟ですね。」
「いいえ!これはこの国の魔法陣の歴史における新しい一歩だと確信しております!」
「では、その一歩になるように作業を進めますか。魔法陣の発動よろしくです。」
「承知いたしました!」
それから伯爵様達の意識が戻るまで20個ほど魔法陣を書き出した。
なお、氷の魔法に加え新たに2つ魔法が見つかった。
1つ目は保温の魔法、2つ目はーー




