間話10
ハワード領の領民視点
私は街1番の情報通と自負している名もなき平民です。
それは突然のことでした。
伯爵様のお屋敷で異界から召喚された人が現れたと、召喚の魔法陣が使われたら何か良くないことが起きると言うのは平民の私達も知っています。
これからどうなってしまうのでしょうか…
私のような考えの人もいれば異界人の容姿について盛り上がる人達もいます。
街の酒場ではその話で持ちきりです。
酒場では『美青年らしいぞ』『いや、絶世の美女だ』『かなり歳を召された老人だったという奴もいるぞ』なんて好き勝手な噂が飛び交っています。
中でも私は子供説が面白いと思います。
異界人が現れてしばらく経った頃、伯爵様の一人息子であるウィル様が数人連れて街中を歩いています。
護衛の騎士の方達かと思ったら、普通のおじさんもいます。
異界の人なの…まさかね。
異界の人は美青年や美女だって噂ですし、伯爵様のお屋敷の庭に美形の人がいたのを見たと言う人もいるのであの人じゃないですね。
その日を境にスミス親方が久しぶりに鍛冶仕事をしているという噂をつかみましたが眉唾物です。
あの人は今後進の育成に力を入れているはずですから。
それからまたしばらくして街の飲食店に何か魔道具が届けられたようです。
どうやら『氷水晶器』という水と氷を出す魔道具だそうです。
水は分かりますが氷とは何でしょうか?
運び込んだ騎士様の説明ではこれから暑い時期が来るからこの魔道具でこまめに水分補給をしなさいとのことでした。
よく分かりませんが水を飲めばいいのですね。
暑い時期の水はぬるいのでそんなに飲む気がしないのですよね…
試しに飲ませてもらった水は冷たくて美味しかったです、これなら暑い時期も飲もうと思います。
それから街中の人が集まる店に『氷水晶器』が行き渡り、いよいよ暑い時期が到来したと感じた数日後に見慣れない屋台が出店していました。
メイドさんが販売員ということは伯爵様が出店した屋台らしいです。
屋台には旗が取り付けられていて赤い染料で何かが書かれていますが読めません、異国の文字でしょうか?
それに見慣れない道具も鎮座しています、何を売っているのでしょうか?
あ、野次馬の男性が注文したようです。
それを受けてメイドさんが魔道具を起動させると何やら四角いモノが出てきました。
それを道具に乗せてハンドルを回しています。
しばらく見ているとお皿には白い雪のような固まりが出来ていました。
それに赤いソースのようなものをかけて男性に手渡しています。
銅貨2枚ですか、手が出しやすい価格ですね。
『冷たくて、美味い!』
男性が一口食べたようですが味はどうなのでしょうか?
一心不乱に食べているということは美味しいのですね?
私も注文します。
出来上がるまでメイドさんに色々と聞いてみましょう。
ふむふむ、これはかき氷というもので異界人の柴田さんが考案したものなのですね。
この四角いモノが氷なのですね、元は水というのが信じられません。
その旗に書かれているのは異界の言葉なのですね、通りで読めないわけです。
え!?
このかき氷機という道具はスミス親方が作ったのですか!?
あの人が直接仕事するのってどれくらいぶりでしょうか、最近は後進の育成ばかりしていると聞いていましたが…
そうこうしているうちにかき氷ができたようです。
本当に雪のようですね…
一口食べてみると今までに無い食感です。
ふわふわしていて冷たくてこの赤いソースは酸味がありながら甘くて美味しいです。
え?
ふわふわの他にジャリジャリとしたのもあるのですか!?
もう一杯ください!
これは暑い日が続くので毎日食べても飽きませんね。
後日、街で聞いた話では『氷水晶器』も異界人の柴田さんが考案してスミス工房と共同で作ったらしいのです。
これにも驚きましたが、更に驚く事実がありました。
これは毎日屋台に通ってメイドさんと仲良くなった私だから聞き出せたのです。
伯爵様邸の使用人の間で噂になっていたそうですがシェフと主婦の味方である数百年前に召喚されたソフィア様のレシピ本にある料理の1つが再現出来たと。
どのレシピが再現されたのでしょうか、知りたいです…
今とても面白いことが伯爵様のお屋敷で起こっている気がします。
いっそのこと伯爵様邸のメイドとして転職しようかな?




