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第96話

取扱説明書を精査するため厨房の隅を借り、改めて親方から『氷水晶器』とかき氷機のメンテナンス方法を聞き取ったが僕の中にあった『刃物を研いで使う』という常識が、あっさり崩れた。


汚れ等については魔道具の洗浄で済むと言うのは予想がついた。


しかし、削る刃について研ぐ必要があると考えていたが研ぐ必要はないと言う。


スミス親方が言うには切れ味が落ちない原材料だそうだ、万が一折れたりしたら交換すれば良いと言う。


「はぁ…親方の話を聞いて僕が違う世界に来たんだと言うことを改めて思い出しましたよ。今までの常識は疑わないといけないですね…」


「柴田様はこの世界に召喚されて1ヶ月ぐらいですから、これから徐々にこの世界の理を知っていけば良いかと。」


「前聞いた時も思いましたが柴田さんのいた世界って便利なのか不便なのかよく分からないですね。」


「いや、こちらの世界とは理が違うんだ。あちらの世界の奴らはその環境下で努力をして技術を磨いて柴田が享受していた世界になったんだろ?便利も何もねぇだろうよ。」


…親方の言う通りだな。


あの世界は人々の発明や努力が積み重なってできた世界だ。


こちらの世界にも似たところもあれば、違うところもある。


「はい、そうですね。先人の努力によって出来た世界ですのでそう言ったことは考えていないですね。ただ、魔法やスキルが使えれば便利だろうなというのはよく考えていましたが…」


「魔法はこの世界の庶民にとってもそう思いますよ。あのお布施はとてもではありませんが払えないので。」


「あぁ、前にバリーさんから聞きましたが年収20年分相当ですものね。そんな大金何に使っているんでしょうね?」


「教会は秘密主義ですからね…魔法陣が付与されている魔道具を動かすためにと言うことらしいですが収支が全く不明で、本当に使っているか分からないんですよね。」


怪しいな…


しかし独立した組織ならばそう言うことも許されるのかもしれないが莫大な金額だから1度監査を入れた方がいいんじゃないか?


そもそも監査という発想はこの世界にあるのか?


「教会の上層部はいけ好かないが下の連中は一生懸命にやっているぞ。気になるなら聞きに行けば良いんじゃねぇか?」


まぁ、ウィルさんやバリーさんが苦虫を噛み潰した顔しているからそんな簡単にはいかないんだろうな…


フリー王子なら何か知っているかもな。


「教会については国に任せましょう、我々では何も出来なさそうですしね。スキルと言えばベラさん、あれからスキルの検証についてはどうですか?」


「え?はい、お父さんに今工房にある鉱石で指輪を作ってもらったので検証中です。」


スキル解放条件の時間が不明だからあとは結果を待つだけだな。


良い方向に進んで他の金属も加工出来るようになると良いな。


「それで手入れの方法については全部話したと思うが他に聞きたいことはあるか?」


「僕からはありません。ウィルさん、バリーさんは何かありますか?」


2人とも首を横に振るので無いようだな。


「無いなら帰るぞ。また何か作りたいものがあったら注文しに来い。」


そう言って親方は席を立ち、厨房を出て行った。


ベラさんが申し訳なさそうにしている。


相変わらずやることが終わったらすぐ帰ってしまうな…


後はベラさんと事務的な話をしておこう。


「ベラさん、こちらの取扱説明書の方に修理や部品交換の受付は我々が行うと記載するので実務の方はよろしくお願いしますね。」


「あ、はい。ただお父さんが作ったので修理とかそう言ったことはないと思いますが…」


「あぁ、ベラちゃん。柴田さんが言っているのはその意味もあるけど部品の紛失とかもあるから。」


「あ、そうですね。部品の紛失ならあり得ますね。」


「部品の紛失は使用者の過失なので実費請求を考えていますので部品1つに対しての見積もりはどれくらいですか?」


ベラさんが『そうですね…』と概算を教えてくれた。


これで聞きたいことも聞けたかな。


「これで取扱説明書に記載する内容に漏れはないかと思いますが柴田さん、バリーは他に聞きたいことあります?」


「いえ、これで全部ですね。まだまだ親方には作ってもらいたいものがあるので、また工房にお邪魔させてもらいますね。」


「はい、お待ちしています。」


バリーさんは…首を横に振っているので無いようだな。


「では、ベラちゃんを途中まで送っていきますね。」


ウィルさんとベラさんが立ち上がり厨房を出て行った。


さて、僕たちも魔道具にする作業をしないとな。

ここまでが2章となります。

お読みいただきありがとうございます。

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