第95話
「…甘酸っぱい味わいですね、十分美味です。こちらを屋台で出しましょう。後はかき氷一杯を銅貨2枚程度で出せるかですが…」
伯爵様の舌でも合格ラインなら安心だな。
屋台で出すかき氷かだよな?
原材料の氷についてはバリーさんがとってきた魔石で出すからタダみたいなものだし、ソースは100杯分で銅貨1、2枚と言っていたな。
氷とソースについてはほとんど原価がかからない。
問題は容器と人件費、このかき氷機の製造費をどうするかだな…
「そう言えば伯爵様、このかき氷を街で出すとして販売員はどうするのですか?」
「そうですわね、最初は伯爵邸のメイド2人を交代制で。ですが、ゆくゆくは委託を考えていますわ。」
警備は巡回の騎士団もいるし伯爵様主導の社会実験の一環なら多少の赤字でも問題ないか。
委託した際のかき氷機と氷を出す魔道具の盗難防止が課題だな。
「理解いたしました。この味が受け入れればこの領地の観光名物になるかもですね。」
「…観光名物ですか?」
「えぇ、その名物を求めてその地に訪れて宿泊したり、飲食をする旅行という感じですがこの世界にもありませんか?」
「そのようなものは無いですね…商人は領をまたぐ移動等はありますが娯楽を目的とした旅行というものはないですね。後は景気の良い領へ移住くらいでしょうか?」
そうなると領内でしか経済が回らないな…
かき氷での街おこしならぬ領おこしは無理だな。
伯爵様に衣食住の面倒を見てもらっているから領外から収入を得るため何か考えないとな。
「柴田さんの世界にはそのような文化があるのですね。」
かき氷を手にしたウィルさんが話に入ってきた。
隣にはバリーさんとベラさんもいる。
「えぇ、さまざまな娯楽や飲食、祭事がありましたよ。」
「こちらが街で出されるかき氷ですか…柴田さんの世界のかき氷と比べてどうですか?」
「そうですね、僕としてはこちらの方が気軽に食べる馴染みが近い味ですね。この間のマッテオさんが作ったソースは高価なかき氷に分類されると感じました。」
「では、こちらが広く親しまれている味なのですね。」
「こほん、ではこのかき氷は暑くなってから屋台で出店ということで。それで、この改良されたかき氷機のマニュアルはウィル達に任せて良いかしら?」
「はい。大丈夫です、母上。」
「では人員等についてはこちらでまとめるから、マニュアルの方はお願いね。」
そう言うと伯爵様とアーロンさん、エディンさんが厨房から出て行った。
いつの間にか3人分の皿が空で置いてある。
アーロンさんとエディンさんも試食をしたみたいだな。
そうだ、ベラさんに確認しておかないと。
「ベラさん、ひとつお聞きしたいことがあります。先ほど親方に刃の付け替え部品は、ある程度の腕があれば半日で出来るとお聞きしたのですが本当ですか?」
「……いえ、あれは父だから半日です。うちにいる中堅の職人だと3日はかかります。」
やっぱりかぁ、これからスミス親方の見積もりはベラさんに1度確認しないとな。
当の親方はかき氷に夢中になっているし…
「そうですか…もし、このかき氷機を量産するとなったら親方しか出来ないと言う感じでしょうか?」
「うーん、練習すれば他の職人でも出来るようになりますがそこはやってみないと分からないです…」
…万が一、かき氷が流行ったら親方1人で製造しないといけないのか。王宮に献上もするし、その可能性を含めて後で伯爵様に伝えておくか。
「では、我々はこのかき氷機のマニュアルを作りますか。」
厨房の片付けをした後、改良版かき氷機のマニュアル作成に取り掛かった。
刃の付け替え部品に数字が刻印されていたのでどの部品がふわふわになるかも書けた。
…親方、芸が細かいな。




