第9話
伯爵様は何かを考えている様だな。
何を考えているのだろうか?
「あの、先ほどはありがとうございました。おかげさまで最悪の事態にならずに済みました。学会には追加資料を提出することになりそうですが…」
そういえば息子さんと話すのは2回目だけど挨拶していなかったな。
追加資料を提出することになるのは自身の検証不足が招いたことだろうからまぁ頑張れ。
「そういえば挨拶が遅れましたが柴田玄と言います。鑑定に出ていた通り異世界から召喚されました。」
「!?すいません!こちらの方こそ挨拶が遅れました。メアリー・ハワードの息子ウィル・ハワードです。魔法省に勤めています。」
話に聞いていたが改めて魔法省と聞くとエリートっぽいなぁ。
魔法陣をミスしていたとはいえ、あの訳のわからない模様だと思うと1箇所の誤りで済んだのはすごいな。
さすがエリートと言ったところか。
…いかん、そろそろ眠気のピークだから寝させてもらおう。
鑑定魔法陣についてはもう少し確認したいことがあるがウィルさんと予定を合わせて後日だな…
「すいません、伯爵様。徹夜明けで寝ていないのでどこかで休ませてもらえないでしょうか?」
急に話しかけたせいか伯爵様がハッとしている。
ウィルさんとの会話中も何か考え込んでいる感じだったからなぁ。
「すいません、徹夜明けと気づかずに…客間をお使いください。バリー、後はお願いね。」
「承知いたしました。」
挨拶をほどほどにバリーさんの案内で客間と言われるシックだが高級感を感じさせる調度品で揃えられている部屋に来た。
「では、私は部屋前におりますので何かあればお声がけください。」
そう言ってバリーさんは部屋を出た。
限界だからこのままベッドで寝かせてもらおう。
寝て起きたら元の世界に帰っていることはないかなと考えつつ意識を手放した。
ぐっすり眠れた。
どうやら元の世界には戻っていないようだ。
[ぐー]
そういえばリリース作業前から何も食べていなかった、伯爵様に頼んで何か食べ物をもらおう。
部屋の前に誰かいるかな?
「お目覚めですか?」
バリーさんが立っていた。
僕が寝ている間もずっと部屋の前にいたのだろうか。
そうだとしたらなんだか申し訳ない気持ちになる。
「おはようございます?そういえば今って夜ですか?」
すっかり忘れていたがずっと室内だったのでこの召喚されてきた世界が日中か夜中なのかわからなかった。
「いいえ、朝です。もう少しで朝食になります、柴田様の朝食はお部屋にお持ちいたしますので。」
よかった、こちらから要求する前に食事の話が出た。
では、お言葉に甘えて部屋で待っていよう。
しばらくしてメイドさんが食事をワゴンで持ってきてくれた。
バケットサンドか、見た目は元いた世界と変わらないが挟まっている肉は何の肉だ?
元いた世界のものと遜色がないくらいの美味しさだ、食文化を広めてくれてありがとう。
名も知らぬ3人目の召喚された人よ。
おっと、バリーさんもここで食べるみたいだな。
「柴田様、食事をしながらお聞きください。主様は本日召喚についての各種対応と通常の執務があるため夜までお時間が空きません。」
ということはそれまで自由に過ごせるということだな。
「私は引き続きお目付役ということで柴田様のお側におります。」
バリーさんという魔法陣発動人材がそのままいてくれるのはいいね。
開発環境を手に入れたから色々できるな。
「それで柴田様は本日いかがされますか?」
いきなり魔法陣の解析をしてもいいのだが闇雲にやると非効率だよな。
なら…
「バリーさん。食事の後、大量の紙と筆記用具を用意してください。今日は魔法陣のインデックスを作ろうと思います。」




