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エレン・ブライスは婚約者を切り捨てる  作者: もも


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6/8

6加護の出現

 あれっ?これは見たことがあると思ったのは、ある日の夕方だった。


晴れていた空が急に曇り土砂降りになった。

以前にもあった気がしたが、この頃夕立なんてあったかしら。雨不足だと新聞に書いてあったはずなのに。

だが気の所為だと思った。天気が急変するなんてよくあることだから。



それなのにお祖父様の顔を見ていたら映像が浮かんだ。でっぷり太ったお客様が来て取り引きを頼まれている。お祖父様が頷き、お客様が喜んで帰る。

玄関を出た途端にその顔が醜く歪んだ。悪巧みをするかのように。


私が来るまでに来客はなかった。これは…これから起きること?



「お祖父様明日以降にお客様がありますか?もしかして太った方でしょうか」


「そうだが、どうして知っている?仕事の相手だ」


「取り引きはお止めになってください。できれば引き延ばしてお調べください」


「どうしてだ?今まで儲けさせてもらった相手だが」


「投資でしょうか?多分今までは少額で儲けさせ、これから大口の物を勧めてくるのでしょうが、詐欺だと思われます」


「投資だ…。すっかり信用していた。良く調べてみよう。どうしてそう思ったのか聞いてもいいかい?」


「お祖父様の顔を見ていたら映像が浮かんできたのです。太ったお客様が玄関を出た途端悪い笑顔になったのが見えました」


「そんなことが昔からあったのか?」


「いいえ、つい最近です。天気が浮かんでくるのはよくありましたが、気の所為だと思っていたのです。人が浮かんできたのは初めてです」


「調べてみてエレンの言う通りだったら取りやめよう。凄い才能かもしれない。まだ誰にも言うんじゃないよ。身の安全に関わるからね」


「分かりましたわ、口外いたしません」


偶然なのだろうか。もし才能なら活かせると良いのだけれど。天気だけでも人の役に立つと思う。


その日の夕方お祖父様が大喜びで私の部屋へ来た。


「エレンの言う通り詐欺だった。警察に連絡して明日来た時に捕らえてもらうようにしたよ。中々捕まえられなかった奴だそうで喜ばれたよ。有名な詐欺師だそうだ」


「まあ、お祖父様に危険はないのでしょうか?逆恨みされたらどうしましょう」


「心配はいらないよ。未だ剣の稽古はしているし、護衛もいる。かなりの年月牢から出ることはないはずだ。それに私を騙そうと思ったのを後悔させてやらないといけない」


そうだった。お祖父様が簡単に許す訳がなかった。生きて出られるのかお祖父様の気持ち1つだ。


私はほうっと息をして笑顔になった。





「それでだ。エレンの能力は隠すようにしよう。天気だって知りたい者は多い。攫ってでも能力が欲しい者はいる。どうやって活かすか考えようじゃないか」


「雲の様子で天気を当てる人もいると聞きますが、お祖父様が心配なのは分かりますので大人しくしておきます」


「そうしてくれると安心だ。そうだ、このままお祖父様の秘書になるのはどうだい?投資が当たればエレンにも配当を渡そう」


「家には私の予算がありますし、賠償金もあります。お祖父様の投資でお金をいただくのは……」


「孫娘にお金を渡すのはお祖父様の楽しみだ。いずれはエレン達に残したいと思っていた。それにこれは仕事だ。給料は出すよ。お金はいくらあっても良いものだ。裏切らないぞ。また詐欺に遭うかも知れないお祖父様を救っておくれ」


「それなら秘書になりますが何をすれば良いのですか」


「そうだね。古文書を読んでくれるか?歴史を学ぶのは大切だ。繰り返す出来事はあるものだ。将来きっと役に立つ」


お祖父様の執務室の本棚には分厚い本が沢山並べられていた。

漸く未来の仕事を手に入れた私は嬉々として読み始めた。

家には連絡を入れてもらい、サラとルカがそのまま付いてくれることになった。






 あれから詐欺師は捕まり牢に入った。取り調べて出て来た証拠は多かったという。変に几帳面で騙した相手の名前と金額を書いていた。

被害者は若者から年配の人まで大勢だった。

人生が狂った人もいただろうに残念ながらお金が戻ったという話は聞かなかった。


刑期は20年だった。多くの人の恨みをかった犯罪者がどれくらい生きていられるのかご存知なのは神様だけだ。



読んでいただきありがとうございます

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