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エレン・ブライスは婚約者を切り捨てる  作者: もも


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6加護の出現

誤字報告ありがとうございます!助かりました。

 ある日の夕方のことだ。何気なく空を見ていたら、晴れていた空が急に曇り土砂降りになった映像が頭の中に浮かんできた。しかし、慌てて地面を見ても雨など降っていない。


今のは何だったのかしら、疲れているせい?それとも白昼夢でも見たのだろうか。訳が分からなかったが気が触れたのかと言われそうで誰にも言うことはできなかった。


でも次の日本当にそれは起こったのだ。夕方昨日見た映像の通りに、空が急に曇って土砂降りの大雨になった。

この時もまだ私は、ただの偶然、気の所為だと片付けようとした。



それなのにお祖父様の顔を見ていたら別の映像が頭に浮かんだ。でっぷり太ったお客様が来て取り引きを頼まれている。お祖父様が頷き、お客様が喜んで帰ろうと玄関を出た途端にその顔が醜く歪んだ。悪巧みをするかのように。


私がはっと我に返るまで現実には誰も来客はなかった。つまりこれは…これから起きること?未来の光景なの?



「お祖父様、明日以降にお客様がいらっしゃる予定がありますか?もしかしてでっぷりと太った方でしょうか」


「そうだが、どうして知っているんだい?仕事の相手だよ」


「取り引きはお止めになってください。できればできるだけ引き延ばして、裏をお調べくださいませ」


「どうしてだい?今までも充分儲けさせてもらった相手なのだよ。今回は投資の話だが」


「おそらく今までは少額で儲けさせ、これから大損するような大口の物を勧めてくるのでしょう。間違いなく詐欺だと思われます」


「投資だ…。私はすっかり彼のことを信用していたよ。分かった、良く調べてみよう。ところで、どうしてそう思ったのか聞いてもいいかい?」


私は意を決してお祖父様を見つめた。


「お祖父様の顔を見ていたら頭の中に映像が浮かんできたのです。太ったお客様が交渉を終えて玄関を出た途端、悪い笑顔になったのが見えました」


「そんなことが昔からあったのかい?」


「いいえ、つい最近のことです。天気の変化が浮かぶことはありましたが、気の所為だと思っていました。人の未来が浮かんできたのはこれが初めてです」


お祖父様は暫く考えこんだ後、真剣な面持ちで頷いた。


「調べてみてエレンの言う通りだったら今回の取り引きは取りやめよう。もし本当なら凄い才能かもしれない。まだ誰にも言うんじゃないよ。お前の身の安全に関わるからね」


「分かりましたわ、口外いたしません」


これはただの偶然なのだろうか。もし本物の才能なら、いつか活かせると良いのだけれど。天気だけでも人の役に立つとはずだから。




その日の夕方お祖父様が大喜びで私の部屋へやって来た。


「エレン、お前の言う通り詐欺だったよ!警察に連絡して明日来た時に捕らえてもらうようにした。中々捕まられなかった大物だそうで感謝されたよ。有名な指名手配犯だそうだ」


「まあ、でもお祖父様に危険はないのでしょうか?逆恨みでもされたらどうしましょう」


「わはは、心配はいらないよ。未だ毎日剣の稽古はしているし、有能な護衛もいる。あの様子ならかなりの年月牢から出ることはないはずだ。それに私を騙そうと思ったのを骨の髄まで後悔させてやらないといけないからな」


そうだった。お祖父様が自分を嵌めようとした相手を簡単に許す訳がなかった。生きて出られるのかさえお祖父様の気持ちひとつだ。


私はほうっと息をして、心から安心した。





「それでだ、エレンの能力は絶対に秘すようにしよう。ただの天気予報だとしても知りたい者は多い。最悪の場合攫ってでも能力が欲しい者はいる。どうやって安全に活かすか、一緒に考えようじゃないか」


「雲の様子で天気を当てる人もいると聞きますので周囲にはそういうことにいたします。お祖父様が心配なのは分かりますので大人しくしておきますね」


「そうしてくれると安心だ。そうだ、提案なのだがこのままお祖父様の秘書になるのはどうだい?投資が当たればエレンにも配当を渡そう」


「家には私の予算(持参金)がありますし、賠償金もあります。お祖父様の投資でお金をいただくなんて……」


「孫娘にお金を渡すのはお祖父様の楽しみだ。いずれはエレン達に残したいと思っていた。それにこれは正当な仕事だ。給料はきちんと出すよ。お金はいくらあっても良いものだ。裏切らないからね。また詐欺に遭うかも知れないお祖父様を救っておくれ」


「それなら喜んで秘書になりますが、何をすれば良いのですか?」


「そうだね。ここにある古文書を読んでくれるかい?歴史を学ぶのは大切だ。繰り返す出来事はあるものだ。将来きっと役に立つはずだ」


お祖父様の執務室の本棚には分厚い本が沢山並べられていた。

婚約を破棄され一度は未来を失いかけた。

しかし漸く未来の仕事を手に入れた私は嬉々としてその古文書を読み始めた。

実家にはお祖父様から連絡を入れてもらい、サラとルカがそのまま私の専属として付いてくれることになった。






 あれから詐欺師は捕まり牢に入った。取り調べて出て来た証拠は多かったという。変に几帳面で騙した相手の名前と金額を書いていた。

被害者は若者から年配の人まで大勢だった。

人生が狂った人もいただろうに残念ながらお金が戻ったという話は聞かなかった。


刑期は20年だった。多くの人の恨みをかった犯罪者がどれくらい生きていられるのかご存知なのは神様だけだ。



読んでいただきありがとうございます

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