5癒やされる
あれからジミーは廃嫡され平民になり王都は立ち入り禁止になった。
それだけなんて甘いわね。
あの女と同じじゃないと不公平でしょう。
ルカに指示を出した。気が付いていなかったが私は存外冷酷なようだ。あんなことがなければ普通の令嬢のままだったのに。
仕事の出来る護衛を持つというのは素晴らしい。あっという間に願いを叶えてくれた。
家から出るのは控えていたが、流石に3ヶ月で飽きてきた。
私が悪い訳ではないのだ。公の場に出なければ皆その内忘れるだろう。
サラとルカを連れてお祖父様の所へ遊びに行くことにした。
「お祖母様ご無沙汰しています」
「よく来てくれたわね。心配していたけど思ったより大丈夫そうね。ゆっくりしていくといいわ。こんなに娘らしくなっていたのね」
「お祖父様が味方になってくださったので頼もしかったですわ」
「当たり前よ。可愛い孫娘を蔑ろにする輩なんて潰すに決まっているのだから」
柔らかく笑っているが言葉は鋭い。
「手並みは聞いているわ。最初に誰に教えたの?」
「メアリー伯爵夫人です」
「良い選択だったわ。あの日彼女と夕食の約束が入っていたの。数人の御婦人の集まりだったわ。面白いくらい広まったわね」
お祖母様の笑顔が怖い。
私は微笑むだけに留めた。
お祖母様は気の向いた日にカフェを開いていた。場所は屋敷から少し離れている。
お遊びだそうで店主は元シェフだった人だ。ガタイが良く用心棒も兼ねている。
お祖父様の心配症は周囲に知れ渡っている。
貴族限定のサロンでも良かったらしいがせっかくなので一般人も入れるようにしたという。
名前も「気まぐれカフェ」お祖母様らしい。
平日の午後だけの営業だ。
前伯爵夫人がオーナーなので文句を言う者はいない。
予約をすれば午前中にも開けてもらえるのでデートに使いたい恋人同士には好評だ。
貸し切りのカフェなんてロマンチックでしかないもの。
周りには背の高い針葉樹が植えてあり、緑が豊かで視線を遮っている。
その中の赤い屋根の2階建ての可愛らしい店が「気まぐれカフェ」だ。
玄関までの間には石が敷き詰められ様々な色の薔薇の植え込みが沢山咲き乱れている。
伯爵家に昔からいた庭師が世話をしているのでとても美しい。郊外なので空気も綺麗で薔薇のいい香りがする。癒しだ。
お祖父様の屋敷から時々通って楽しむことにした。
人の目が煩わしい今、ここは最高だ。
シェフが張り切って数種類のケーキを焼いてくれた。苺のミルフィーユ、ガトーショコラ、アップルパイ、マロンケーキ、1つずつが小さいので何とか食べられた。
ポットの紅茶はダージリンのファーストフレッシュだ。カップに淹れてもらうと輝くような黄金色が美しく、一口飲めば若葉の様なみずみずしい風味が広がる。
食事の量が落ちすっかり痩せてしまった体に甘みが嬉しい。
ひとりで食べても味気ないのでサラとルカにも食べてもらった。
2人とも満足そうな顔だ。お土産に買って帰ろう。
きっと食事も美味しい。出かけたくない病の息抜きにちょうど良い。
だが、こうしていられる時間は短い。弟の邪魔にはなりたくない。
どうやって自立するのか考えなくては。
ふとお祖父様が言っていた仕事という言葉を思い出した。
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