4 婚約破棄の計画
化粧を整え、上品でおとなしめの高価なドレスに着替えて背筋を伸ばした。
そこへサラが呼びに来た。
「お嬢様旦那様がお呼びでございます」
さあ戦闘開始ね。私は前を向いて扉をノックした。
執務室には両親、お祖父様、ジミー、ジミーの父、私の6人が揃った。
「ごきげんよう。ブラウン子爵様、ジミー様。お待たせしました」
「エレン大切な話がある。座りなさい」
「はい、お父様」
室内は重苦しい空気だ。私は両親の隣に腰を下ろした。お祖父様は1人で座り両方の家族を見ている。
ブラウン親子は対面にいた。
ジミーが立ち上がり頭を下げた。
「すまなかった!」
(言うと思ったわ)
「間違いなんだ。一時の気の迷いで大事な君を裏切ってしまった。どうか愚かな私を許して欲しい」
ブラウン子爵も立ち上がり頭を下げた。
「愚息が愚かしい間違いを犯したようで申し訳なく思っている。相手のメイドは追い出した。若いときの過ちだと思ってどうか許してやって欲しい」
ええっ!?
謝れば済むと思っているのかしら。広いとはいえ一つ屋根の下で起きたことよ。
息子の火遊びを知っていたと思う。
結婚式の1ヶ月前になって、時を惜しむように逢瀬を重ねていたところを婚約者に見られた愚か者を庇うのね。
どこまで白状したか知らないけど、証拠はここにある。
メイドは平民だった。身体の関係があり子供を孕んでいると言いふらしていた。
それでも彼は何も手を打たなかった。それがブラウン子爵家の判断ではないのかしら。
お母様はうんざりというのに顔をなさっている。一方のお父様は真っ白になってブラウン子爵を見ていた。
「ブラウン子爵、君が我が家をどう見ているのかよくわかったよ。婚約は破棄しよう。友情だと思っていた物はまやかしだったようだ」
「すまなかった。私は忙しく家には殆どいなかった。信じてくれ。愚息が君とエレンを裏切るまねをしていたと知ったのは最近なんだ」
「知った時点で手を打ってくれていたら事態はそれほど大きくならなかったかもしれないが、ことはもう広がりすぎている。お義父上から聞いた私の衝撃が分かるか。噂も社交界に広まっている。このまま侮られた家になるわけにはいかない」
「若いときの一時の間違いだと許してやって欲しい」
まだ私がジミーを好きだと思っているのかブラウン子爵はこちらを見て頭を下げた。
「子を孕んでいる愛人がいる相手を許せと言われるのですか?御免ですわ。いつ乗っ取られるかも知れない立場にしがみつきたい程、結婚をしたいとは思いません」
「君は私のことが好きだろう。もう浮気はしない。やり直させてくれないか」
青い顔をしたジミーが縋り付くような目で私を見た。
「浮気現場を見るまでは好きでしたが、今は爪の先ほども好きではありませんわ。嘘八百をならべ私を騙して楽しかったですか?結婚してしまえばどうにでもなると思っていたのでしょうが、残念でしたわね」
「そんなことは思っていない」
「あら、騙して楽しんでいたのは事実ですわよね。ほら証拠はこんなにありますの。決定的なものもございますのよ。何なら裁判をしましょうか」
相手のメイドはルカに捕らえて来てもらった。
今は我が家の地下牢に入れてある。妊娠はしていなかった。
八つ裂きにしてやりたいがジミーを潰すのが先だ。
私はまず紙の束を見せた。
がっくりと項垂れたブラウン子爵は息子を睨みつけた。
両家は婚約破棄の証書にサインをした。
証人の出番は残念ながらなかった。
あれは罪人が入る鉱山に送った。働いたお金は私に入ってくるようにした。僅かな額だが吐き気がするのでそのまま孤児院に寄付をすることにした。
貴族家の婚姻を壊した罰は重いと体で知って貰わないとね。殺されても文句は言えないのだから。
私が受け取る賠償金はかなりの額になった。
当たり前だが招待状への詫び状。式場、ドレスのキャンセル代、全てブラウン子爵家が責任を持ってくれる。
我が家側の招待客には両親から一品添えて詫び状を送った。
私は暫く療養することにした。
読んでいただきありがとうございます。ここまで重めでしたが次回から明るくなります。




