↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
88/91

第88話 世話の焼ける冒険者

 グレイヴたちは天井で追っているカインに気づかないまま真っ直ぐ進んでいた。しかし、エネルギールームへの廊下は薄暗く、道も複雑なのでカインは心配でしょうがなかった。


(あぁ、1人で行けば良かったか…)


 カインは色々と後悔していた。グレイヴのだらしなさと頭の悪さはカインがこの世の誰よりも知っている。そして、1つの予感がよぎった。


(まさか、仲間をさらったのは俺に錘を付けるため…!?)


 しかし、そんなこと考えたって今更どうしようもない。


(…もう少し慎重に事を進めよう)


 そのときグレイヴが足を止めた。ちょうど2つに道が分かれている。


「あ、分かれ道。どっちかな?」


 チェルルは目を凝らして見ているが道が曲がりくねっているせいで全く見えない。


(あいつら、無計画に入ったのか?)


 呆れるカインは降りようとした。しかし、両足が天井についた状態でやめた。


(ここで会ったらややこしいな…)


 グレイヴは下で剣を鞘に収めて立てている。


(何をしているんだ…?)


 グレイヴは地面に垂直に剣を立てて――手を離すと剣は右に倒れた。


「左だ!」


 カインは思わず天井から落下した。グレイヴたちはそれに気づいて振り向く。しかし、カインは完全に彼らの焦点が合う前に手前の曲がり角に素早く隠れた。


(棒倒しか…懐かしいな、じゃなくて!なぜ道をそんな方法で決めるんだ!それにエネルギールームは反対でお前らが行くのは”右”だ!まだ左右もわからねぇのか!?)


 カインは口に出したいことがいっぱいでしょうがない。さらに――


(右はセキュリティルームでウラヌスが占領している…。ハイエナの住処に身を投じることになるぞ)


 カインは仕方がないので、天井に戻り姿を消して静かに右の道に先回りする。それを知らないグレイヴは剣を担いで歩き出す。


「よぉ~し、行くか!」

「棒倒しなんかで決めて大丈夫なの?」


 チェルルは流石に心配だったようだ。しかし、グレイヴはケロッとした顔だ。


「わかんねぇから冒険は楽しいんだろ?それに違ったら引き返せばいいんじゃね?」


(この男は、本当に吞気だ。今までよくその首繋がっているな。不思議だ…)


 カインは天井で片目でホログラムを出現させた。グレイヴたちの目の前に蜂の大群が現れる。


「…へ?」


 グレイヴは顔が瞬時に真っ青になる。そのままカインは映像をグレイヴたちに一気に近づけた。音もばっちりなのでかなりリアルに見える。


「う、うわあぁー!」


 グレイヴたちは一目散に逃げる。しばらくして分かれ道に到着するタイミングでカインは映像を消した。そして、今度は分かれる前の道から蜂を出現させてグレイヴたちを上手く正解の左の道に追い立てた。


(はあ、無計画だな…あいつは)


 カインは右の道を一度確認したあと、左の道でグレイヴたちを追いかけることにした。


 しばらくすると、今度は壁一面にボタンが大量についた通路があった。


(いや、罠だなこれ…)


 カインは予想していた。グレイヴの性格ならこの後どんな行動に移るか、もうわかっていた。


(霧でも出して見えなくするか…)


 しかし、グレイヴは地面にいたチェルルをしっかり掴んだ。


「いいか、ゼッテーにボタン触るなよ?トラップだ」

(冒険で鍛えられたのか?)


 カインは予想外の展開に目を細める。しかし、チェルルは舌を出していた。


「ごっめ~ん☆1個踏んじゃった」

「え!?」

(何っ!?)


 すると壁に小さな穴が開いて3本矢が飛び出してきた。カインはそれにすぐに気づいてグレイヴたちに刺さる前にそれらを素手で全て受け止めた。


(これで近くに転がし――)


 カインはグレイヴたちに目を向けると、想像を絶する光景、いや想像はしていたがタイミングがおかしい光景があった。


「何も起こんないな。せっかくだから色々押そうぜ」

(なぜそうなる?)

「いいね!楽しそう」

(楽しむな)


 グレイヴたちはボタンを押し始めた。そのせいで斧が落ちるやら毒ガスが出るやら、タライが落ちるやら時限爆弾まで…。ありとあらゆるトラップが発動し、カインはそれらを速やかに始末していった。


 ボタンを押し続けて満足したのか、グレイヴたちはスキップしながらその廊下を後にした。


「やっぱ俺最強だな!」

「チェルルも入れてね」


 楽しそうに語り合う2人の後ろでカインは床に倒れていた。


「…一体、誰の…お、おかげで」


 ここで既にカインは疲労していた。すると、少し歩いたところでチェルルが泣き始めた。


「うえ~ん!喉渇いたよぉ~!」

「そうだな俺も。ここに水とかあったらなぁ…」

(はいはい、買って来ますよっと)


 カインは体を起こして天井に飛び上がって魔法で開けた穴で上のフロアの自動販売機で水の入ったペットボトルを2本購入して戻り、2人の前に転がした。


(水筒くらい持ち歩けよ…)


 こんなに裏方が必要な冒険者は初めてだ。アポローンの未来はまだまだ暗い。

※この物語はフィクションです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。