↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
87/91

第87話 全てを終わらせる

 戦車は垂直に上がっていき、ついに吹き抜けの天窓に突き刺さった。しかし、窓は魔鉱強化ガラスで何の加護も持たぬ金属では簡単には壊れない。


「…このままあと3回ほど衝突されれば、確実に外に出られるぞ」


 ルートはアルセーヌにまたがってボウガンで何度かキャタピラを攻撃していた。その一方でグレイヴは組み立てた小型飛行機で上がり、魔法でチェルルと共にもう片方のキャタピラを攻撃する。


 しかし、傷1つつかない。その間にもう1度窓にぶつかった。マグネは6階からその様子を確認していた。


「すみません、ワガハイは補助魔法しか使えないもので…。キャタピラを攻撃されるのは想定済みだったようです!他に弱点を狙わなくては…」


 マグネはぐるりと1周して戦車全体を観察する。マグネはガイド妖精なので、相手を観察すれば弱点を探ることができる能力を身につけていた。しかし、何もわからない。


「…窓にバリア、張るか?」


 グレイヴは砕け散るガラスの破片に目を瞑る。ルートは複数の目で船全体を確認。前方のデッキで夜空に目を輝かせる人々に目を細める。


「俺たちだと、気休め程度にしかならない…」


 すると、戦車のサイドから2つのマシンガンが顔を出した。そして、そのうち一方がルートに向き黒い弾を放った。弾は爆発せず、ただの黒く塗りつぶされたバスケットボールのようだった。


「…ぐっ!」


 ルートは避けられずアルセーヌごと落下した。幸い、直前で水の塊を生み出したため衝撃は軽く済んだ。それと同時に戦車は窓を突き破ってついに屋上に出られてしまった。


 ガラス片は外へ激しく飛び散ったが、ちょうど花火ショーが始まりデッキの人々は誰一人気付かなかった。


 グレイヴとチェルルも戦車に続いて同じ窓から出た。戦車は立ち位置を定めてデッキに向かってゆっくり進む。


「まずい、このまま進んだら…」

「お客さんが!」


 飛行機を操縦していたチェルルは大きく操縦かんを傾けたが、同時に取れてしまった。


「うわあっ!」


 チェルルはレバーが突然離れた弾みで後ろにひっくり返る。グレイヴは操縦かんの断面に目を丸くする。


「誰だよ!差し込むところを切り落とした奴!」


 どうやら誰かが組み立てで差し込む部分をうっかり破いてしまい、接着剤で誤魔化したようだ。しかし、その接着剤も量が少なかったため結合部分が弱っていたのだ。


 グレイヴはすぐさまポケットからガムテープを取り出して操縦かんを付けなおす。


「こ、これで動くか!?」

「だ、大丈夫!ちょーっと動きが鈍いけど操縦できるよ!」


 2人が飛行機から前方に顔を向けると戦車が目の前だった。チェルルはぐるりと大回りして上手く回避した。ちょうどルートが神々しいオーラを身にまとって、アルセーヌを担いで大きく飛び上がり屋上に到着した。アルセーヌの足に血の滲んだ包帯が巻かれている。


「…すまん、来るのが遅くなった!」

「別にいいぜ!…ってかルート、洗脳解けてもパワー使えるんだな!」

「ああ、だから裏切った奴は始末するんじゃないか?」


 その会話の間に戦車がデッキに目標を合わせていた。


「あ、まずい!」


 しかし、放たれた弾は玉虫色の虫の複眼のような壁で空気が抜けて落ちた。花火ショーの反対側の無人になっているところで、赤と蛍光緑色の液体をところどころ浴びたカインが一瞬彼らを見ていたが、静かに床の収納に入っていった。


「ど、どうなってんだ!」


 マグネもやっと非常階段を使って屋上に上がってきた。球状のバリアは屋上を大きく包んでいる。


「これは防御壁ですね。しかもかなり強力な古代式です」


 ルートはその言葉を受けて手帳を開く。


「確かにあるな…。だが、ほとんど装飾にしかならなかったために継承されなくなったそうだが」


 しかし、現在目前の光景を誰一人疑えなかった。バリアの壁に戦車本体は傷1つついていない。


「どうやら流れ弾の始末しかしないようだな…。早くこいつを止めるぞ!」


 ルートはアルセーヌを安全な場所に避難させると再びオーラをまとって勢い良く走り出す。電光石火の速さで戦車に近づいて俊敏な動きで戦車を翻弄する。


 その様子にグレイヴは心を燃やし、上部から魔法で攻撃する。真空波だったが戦車にダメージはあった。


「上手く結合部に入れば効くみたいだ…」


 わずかな勝機をつかみかけたそのとき、戦車の上部の液晶が激しく光った。


「…!」


 ルートは咄嗟にコートで自分の体を覆う。グレイヴとマグネもすぐに目を閉じたがチェルルの目の焦点が合っていない。


「お、おいチェルル!」


 グレイヴは両手が塞がっているため大声で呼びかけたがチェルルは目を開けたまま寝ている状態で全く動かない。そのせいで操縦かんから手を離してしまった。


 彼らを載せた飛行機は船の後部のプールに真っ逆さまに落下した。グレイヴは目を覚ましたチェルルを担いでプールから出る。飛行機は完全に元の紙になってふやけてしまった。


「お、おい――ぐっ!」


 ルートはプール側に駆け寄ろうとしたが戦車の攻撃でそれどころじゃない。その一方でチェルルは目を覚ました。


「…飛行機ぃ」


 沈んでいく紙をチェルルは名残惜しそうに見ている。グレイヴはチェルルを肩に載せて上がった。


「うーんと、ここは船の…」


 そこで気が付いた。謎のコードが送電装置に刺さっていることに。グレイヴはマジホで写真を撮ってモントルにかけた。


【結果、魔動機の送電線。破壊すれば弱体化の可能性あり】


 モントルの結果を信じてチェルルと動いた。


「ルート!俺たちはこのままコードを壊すから、お前はそいつの時間稼ぎをしてくれ!」


 グレイヴはすぐに船の操縦席に狸姿で入った。


 *****

 操縦席でカインはアシガルたちを全て倒して海に彼らを投げ捨てた。


「…これで問題ないな。あとは――」


 カインは背後の配電盤に近づいて、それをスキャンする。一瞬緑色の瞳孔が開かれて全てを見通した。


 そしてコードやヒューズには触れず下の隠し収納から1つの鍵を手に入れた。『エネルギールーム』と書かれている。


(…これで部屋に入れば――)


 そこでドアが開かれる音がしてカインは咄嗟に近くの机に隠れる。


(敵襲か!?)


 カインの機械の鼓動が激しくなる中、やってきたのは――。


「暗いな~。チェルル」

「そだね~」


 緊張感の似合わないやり取りにカインは呆れる。


(…あいつらか)


 カインは床に座り込みグレイヴたちがいなくなるのを待った。


(何をしに来たんだ…?)


 グレイヴたちはマジホの照明で辺りを探す。


「うーんと、配電盤は…あった」


(配電盤?)


 カインはもう一度スキャンして2人の目的を知る。だが、同時に内心ため息をついた。


(あれはここの配電盤じゃない。奥のエネルギールームだ…)


 自分の目的地と同じだったのでカインは焦った。鍵は現在自分が持っている。このままだと乗客の命が危うい。


(ああ、相変わらずだな…)


 カインは仕方がないので移動した。向かったのは操縦席の引き出し。中から何かを取り出して窓辺に設置する。カインは両耳を塞いで速やかに反対側のグレイヴたちがいる壁に待機した。


 すると、暗闇から大きな音がした。カインは引き出しの目覚まし時計を使ったのだ。


「な、なんだ?」


 グレイヴとチェルルの視線が時計の方に向く。カインはその隙に壁の観葉植物の陰にあった鍵穴に鍵を差し込んで静かに開けた。グレイヴたちがそちらを向く前にカインは天井にヤモリのように張り付いた。


「ただの目覚まし時計だよ?」


 チェルルは時計を止めてグレイヴの方を向くと先ほどと違う光景に気づいた。


「そこ、開いてるよ?」


 壁の隠し扉に気づいてグレイヴは近づく。


「暗いな。マジホじゃわかんねー。俺が剣で照らすからチェルルは離れんなよ」

「は~い」


 チェルルはグレイヴの肩に乗り、真っ直ぐ隠し通路に入っていった。その様子を確認したカインも彼らを追うように天井を這っていった。

※この物語はフィクションです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。