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第47話 白いけど腹黒い魔法少女、到来!

 これはディエゴにカインがガイドをしているときのアポローンのこと――。


 グレイヴたちはコンパスの示す方向をひたすら歩いていた。やがて岩場にたどり着く。しかし、祠らしきものはどこにもない。


「これ地図とかねぇの~」


 グレイヴはついに音を上げた。人型も辛くなって狸でその場に座り込む。エリックがその小さな背中を叩く。


「月影様言ってたでしょ?『順番に気を付けろ』って。だから地図渡さなかったんだよ」

「そうか?」


 グレイヴはエリックの説得力のある説明に驚いた。何せエリックは少しひょうきんなところがある。カウボーイらしい自由人だ。こんな説明できることにギャップを感じてしまう。


「だが、祠はなぜ解放するんだ?そもそも祠とは…」


 ルートがアルセーヌを背負って後から登ってきた。彼は観察を好み、地質だの気温だのを百目鬼特有の”視る”力で観察するのだ。だから列から少し遅れてしまう。ルートの疑問は探偵の肩書きを持つからかより興味深い内容だった。


「…そうだな。俺も知らねえ」

「いや、お前は絶対知らないだろ。月影を名前で呼び捨てにするくらいには」

「…ぐっ!」


 その言葉はかなり強烈でグレイヴは人型に戻って先頭に立つ。


「いいか?お前ら俺についてこい!」

(あっ、これすぐへばるな…)


 全員目が白い。その視線がさらにグレイヴの心を乱れうちにする。


「ぐおぉぉーーー!!」


 グレイヴはそんな気持ちを振り切ろうと走り出したが3mくらいで体力がつきた。これでもグレイヴにとって体力的には新記録で立派な成長だ。ルートがアルセーヌを降ろして駆け寄る。


「へばることをするな。こういうのは、持久力が大事なんだ」

「カインみてぇなこと言うなよ…。このお節介」

「文句言うな、このアホ狸」


 口喧嘩するなまけ癖のあるグレイヴとカインのように真面目で冷静なルートの間にリリーとエリック、チェルルが入る。


「ちょっと喧嘩しないでくださいよぉ」

「こうしてる間にうらぬすが乗っ取っちゃうよ?」

「ここで喧嘩して変に注目されたら…」


 その瞬間、どこからか女子の声が聞こえた。どこか幼いが、単純に幼子というわけでもないことがわかる。


「おいおい、そこでピーピーうるさいぞ?勇者さんたちー」


 グレイヴはすぐに顔を上げる。


「誰、だ…」


 見上げたところでちょうどその声の持ち主と思われる女子がいた。顔に影がかかり焦点が合わないほど近い。女子はよくある魔法少女の見た目で桃色のツインテールに白いふわふわの兎の耳と尻尾がある、白いフリルのついた衣装。さらには柔らかい色合いの赤いリボンで飾られたファッションだ。しかし、彼女の座っているものは見た目の可愛さとは程遠い、魔法少女の道具らしき可愛いデザインの巨大な鋏がある。


「アタシはね?ウラヌスの幹部であざとい担当、リッパー!こう見えて~女の子!」


 いやどう見ても女子にしか見えない。誰もがそう思っていた。可愛く鋏を持つその姿は可愛さより恐怖がある。グレイヴがこっそり近くのルートに呟く。


「ウラヌスって実在するのか?」

「今それ聞くか!?あいつは俺らも初めてだ」


 チェルルが2人を下から割り込むように呟く。


「あの子、リーもだけど可愛いのには必ずと言っていいくらい怖い何かあるよね~」


 これが少しだけグレイヴたちを和ませた。リッパーは鋏を真上に刃を開いて構える。


「さあて♡誰から切りたい?ジョッキー君♡」


 鋏に「ジョッキー君」と呼びながら全員の顔を空中から一瞥する。そして1人に定まった。


「じゃあ、あのリーダーっぽい…」

(まさか俺!?)


 グレイヴは1歩下がった。冷や汗が1滴頬を伝う。確かに鋏はグレイヴのところを向いている。グレイヴはいつでも剣を抜けるように構えた。体がガタガタ震えて寒くもないのに歯もガチガチ音を立てている。近くにいたルートは謎の寒気に体を震わせた。


(来たら鋏を…いや腕…でもなくて目だ。目を狙え目を狙え…)


 グレイヴは頭に血が上って血眼になってリッパーを凝視する。そしてリッパーは口を開いた。


「あの斧の女、ムカつくからバラそう♡」

(…ち、違った)


 グレイヴはその瞬間バタリと倒れた。安心感と失望が彼の中で駆け巡っていた。どうやらリッパーはリリーをリーダーと間違えたようだ。しかし、グレイヴ自身もリーダーらしいことをしていないので明確なリーダーは存在しなかった。


 リッパーは真っ直ぐリリーに突進してくる。ルートはすぐに止めようとボウガンを召喚した。


「あっ、危ない!」


 しかし、それをエリックとグレイヴが真顔で肩を掴んだ。


「大丈夫だ。リリーは」

「うん、平気」


 チェルルは鼻提灯出して眠っている。すごく吞気だ。この状況にルートは理解ができない。彼らは互いのメンバーを残酷に考えてるのかと思うくらいに、笑顔が怖かった。


「…な、お前らなんで」


 そうこうしているうちにリッパーはリリーの目と鼻の先にいた。そして目をひん剝いて鋏を憑りつかれたように振りかざす。しかし、リリーは斧を振り回した。


「キャー!来ないでくださいぃ」

「ふごっ!?」


 気が付けばリッパーは空の彼方向こう。どうやらリリーは斧でホームランを決めてしまったようだ。そのままリッパーは飛んでいなくなってしまった。全員ポカンと空を見ている。


「あっ、吹っ飛んだ」

「あれは当分帰れないんじゃない?」


 実はグレイヴとエリックは「リリーが地面に埋める」と思っていた。だが、天と地の差があった。そのままの意味で。ルートも今回の件でリリーの持つ馬鹿力に正直驚いていた。


「クラゲがあんな馬鹿力を発揮できるのは、少なくとも50年修行を積んだ者のみ…それを若い彼女が…」


 こうしてグレイヴたちは何事もなかったかのように、歩き出したのであった。ただグレイヴがリーダーらしくないことにグレイヴだけが不満だった。正直ルートも同じ考えでリーダーに間違われたかった。

※この物語はフィクションです。

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