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第37話 シナリオの裏で

 ――カインが東雲の策略の阻止のため動く前、アポローンのグレイヴたちは…。


 アポローンでマサムネが”無限のオアシス”を開拓したと言われる、”ディーアウト山”という山に来ていた。そこはかつては緑で生い茂っていたが、今ではほうき草すら生えていない寂れた冬の山になっていた。


「この山、一応伝説にあんだよな…」


 正直、グレイヴは信じられなかった。絵本や言い伝えでは「山から大量の水が流れ、その水はどんな厄災でも祓う力を持っていた」となっていた。しかし、自分の目がそれを半信半疑にさせる。エリックは尻尾の砂ぼこりを軽く払う。


「どうせまた作り話。オアシスなんてあるわけないじゃん…」


 エリックの心無い言葉にグレイヴは言い返せなかった。彼らがここに来たのは鈴ではなく、アポローンの国民の相談を受けたからだった。リリーの話だと何か大きな魔獣が山一体の魔力を独占してる可能性があるらしい。グレイヴは国民の情報を整理していた。


(確か大きな白い鳥を見たんだったか?村をすっぽり覆うほどの影がしばらくあった…)


 やがて山の頂上にたどり着くと一同は声をあげた。


「「「「えぇーー!!」」」」


 大きな崖にえぐれたような痕跡があったのだ。洞窟のようになっていて奥の方まで続いている。


「真っ暗でよく見えねぇ…」


 洞窟の奥に目をやると赤い大きな2つの瞳が光った。


「へ?」


 グレイヴが呆然と立っていると洞窟の奥から気配がして、だんだんと近づいてきた。そして白い姿が一瞬見えると――グレイヴたちを暴風で一掃した。


「うわぁーー!!」


 グレイヴは思わず狸姿に戻る。小さな体が地面に転がった。チェルルはすぐに駆け寄って絆創膏を取り出した。


「だ、大丈夫?」


 心配しているチェルルがとても可愛くてグレイヴは痛みを忘れてしまった。人型に戻ってむくりと起き上がる。


「おう、俺はピンピンしてるぜ!エリックとリリーは?」

「こっちもへーきー」

「斧のおかげでそこまで飛ばされませんでしたぁ」


 エリックとリリーは地面に突き刺さったリリーの斧に咄嗟にしがみついたおかげで無事だった。


「なんで斧刺さってんだ?」


 不自然な刺さり方だったのでグレイヴは疑問を投げかける。するとリリーは胸を張る。


「なんか出てきそうだったので、ぶっ刺しました!」


 その答えにグレイヴは声を荒げる。


「気がしてたんなら俺にも教えろよ。1人だけ飛ばされて恥ずかしいだろ…。」

「それがグレイヴなので」

「は?」


 しかし、リリーと痴話げんかに発展する間もなくさっきの”白いモノ”はグレイヴたちの上空に現れる。


「こ、こいつは…」


 現れたのは白い翼を持つ魔獣だった。依頼人の目撃情報の魔獣の特徴と完全に一致する。ただ――


「…これ、鳥か?」


 グレイヴの問いかけに3人は首を横に振る。どう見ても鳥の魔獣ではない。


「…プテラだね」

「うん、くちばしとか翼に羽ないし…」


 外の世界を未だに知らないグレイヴには答えは出なかったが、現役の冒険者であるエリックとリリーはすぐに自分たちの頭の引き出しから答えを導き出した。相手はプテラノドンの魔獣だったのだ。しかし、雰囲気がどこか違うことに一同は気づいていた。


「…なんか眩しいな」


 エリックは銃を構えて警戒態勢に入る。


「これ強力な奴だ。だから山が枯れたんだ…。」

「そのようですぅ」

「この子、悪い子!」


 全員の意見が一致した。グレイヴは大声で指示を出す。


「行くぞ!」


 それと共に全員武器を構えてプテラを倒すことにした。だが、プテラは今までと桁違いに強く、強風で攻撃を軽減され、さらに表面の鱗が傷1つつかないほど硬い。プテラの咆哮でグレイヴたちは一斉に耳を塞いでダウンした。


「くそ、頭が割れそうだ…」


 グレイヴの人型もどれくらい保てるかどうかわからない。しかし、考えていた。


(カインに負けたくねぇ…。あいつは俺の弟の名前を名乗って俺のサポートを、していた。)


 意識は他の3人は完全に失っていたが、グレイヴだけは気合いと根性、そして持ち前の鋼のメンタルで耐えていた。カインの使用人時代の頃を思い出す。目は見えなくても彼は必ずグレイヴの味方をしていた。だからこそ、グレイヴはジルからカインに名前が変わろうと、正体が魔王であろうと年齢に大きな差があろうとずっとカインのことを気にかけていた。


 ――だが、その面を剝がすと金銭目的と貴族の地位向上というどす黒い理由があったのでカイン自身は早く縁を切りたいと思っている。


 それを全く知らないこの馬鹿は心の中で自分に訴えかけるように叫んだ。それは自身の口からも出てくる。


「カインは、俺の弟なんだ!だから俺はアポローンの加護のためなんだってやる!」


 グレイヴはいつしかカインを弟のように感じていた。決して長くない戦いとカインの冷たさが彼の心を()()研ぎ澄ましたのだ。


 ――このときグレイヴは自分の中で熱い何かを感じていた。

※この物語はフィクションです。

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