第28話 はめられ役は御免
カインは次の日、1人でリアーナの空中庭園にある貨物列車用の倉庫に来ていた。”あること”を調べるために…。倉庫の地下にある管理室では貨物列車の線路とダイヤが表示された巨大なスクリーンがある。カインは1つ1つ確認していった。
(…リアーナの、西部地方は…これだな)
カインは慣れた手つきでコンピュータを操作して西部地方、すなわちアポローン側の路線図を立ち上げる。そして開いたのは建設予定となっている路線の検索画面だ。カインは首元からコードを引っ張り出してコンピュータに接続する。
(ギルドセンターから手に入れた、例の断層の座標をここに入力…)
検索の空白に無数の数字が表示され、ロード画面になる。そして出現した画面には――
――【この座標に線路の建設計画はございません】
カインは口角を上げてデータをコピーする。
(…アポローンにダミーの情報、か)
カインはそのまま立ち去った。そして近くのブロックに座る。東雲の計画の阻止について考えていた。そこに1つの映像が浮かび上がった。以前送っておいた紙狐の情報だった。紙狐はカインの使い魔。カインと紙狐はテレパシーでいつでもどこでも情報を共有できる。例の断層に紙狐を複数送り込んでおいたのだ。
(断層は…かなりでかいな)
視界の中に荒野にありそうな巨大な2つの崖が見える。その下に人為的に作られた洞窟があった。わずかに金属の光が見える。カインは推理する。
(なるほど…リアーナとアポローンに極秘流通ルートを開拓するのか…。工事の音が大きいからアポローンにダミーの情報も流すとは、計画的だな)
カインは周囲の地形図から線路を割り出していく。
(タワーに入ったのはリアーナにも情報を流すため。だが不可能だった。だからリアーナの権力者で特に有力な俺を惑わせる作戦に移ったわけか)
しかし、疑問もあった。それはかなり重要だった。
(なぜツリーハウスを破壊した?偶然とは片付けられない。)
リアーナの目まぐるしく動き回る人混みを見下ろすようにカインはタワーの展望台の屋根で計画を考えていた。カインはリアーナの重要設備に紙狐を送り込む。空中庭園のメインエンジン、結界発生装置、さらにはギルドセンターや金庫、セキュリティデータの管理棟まで隅々に。
東雲の姿がわかるように音声データの解析も始めた。魔界にある魔王用の解析課に要請する。
≪魔王番号D-7846、音声から相手の魔族の正体を掴め≫
”D-7846”はカインのことだ。なぜこの番号があるのかはまた後日。少々時間がかかるのでカインは待機する。カインは腕の反射に目を細める。
「東雲…。いやウラヌス、お前らの後始末は、俺がやる」
カインのその瞳には決意があった。しかし、それはハプニングによりとんとん拍子にいかなくなる。
――こうしてカインの孤独な戦いが幕を開けた。
※この物語はフィクションです。




