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第25話 救助はタイムリミット

 カインは困惑していた。東雲の策略を彼の心を読んだにも関わらず見抜けなかった。カインは歯軋りをする。東雲は嘲笑したままだ。


『俺はあんたの正体はわからねぇが、あんたが生きてることはわかった』


 カインは冷静さをなんとか取り戻して声を変えてトランシーバーを見る。


「あなたの目的は、一体?」


 東雲は上から目線で返す。


『確かにタワーにアクセスしようとしたが、ガチで硬いセキュリティでダメだった…。だから、”ルシファー生存説”を確信させようと思ったんだ。』


 カインは疑問に思う。


「なぜ私の生死を定める必要が?」


 東雲は笑っている。


『いいのか?そこでボサッと突っ立てて』

「どういう意味だ」


 カインはすぐに返す。周囲のアシガルは会話中に全体魔法で全て元の紙切れにし、紙狐にするため今目の前にその紙の束があるのだから、脅威は去ったはず…。そのとき――東雲は冷たく言い放った。


『近くのイベントのツリーハウスの根本に細工した。折れるぞ』


 ――ピー…


 カインは焦った。ただ目の前のトランシーバーに声をかけたが、応答はなかった。


(通話が切れた…。)


 ――メキメキ…バキッ!


 工事現場から見えていたツリーハウスの根本が大きな音をたてて折れた。東雲は事実を言っていたのだ。そしてカインはあるものが視界に映って目を丸くした。


(…クロエ!)


 なんとクロエが倒れてきたツリーハウスに走って向かっていたのだ。カインは咄嗟に工事現場から飛び降りた。すると、トランシーバーが赤く点滅を始めた。


(しまった。今の振動で…)


 カインはトランシーバーを工事現場に投げて残し、そのまま宙で変身解除して仮面をしまい、戦闘服のままツリーハウスに爆風と共に飛び込んだ。


 *****

 クロエは真っ先に崩れ行くツリーハウスに走っていた。瓦礫が彼女の角に少しだけ降りかかる。


「お願い…。間に合って!」


 そのとき、戦闘服のカインがクロエの前を封鎖するように着地して瓦礫を両手で持ち上げた。カインはクロエに声を荒げる。


「死にたいのか!?」


 クロエは激しく首を横に振る。足踏みまでしていた。


「そんなわけないでしょ?早くどいて!」


 カインは1歩も動かない。両足が地面に食い込む。


「できるわけないだろ!?」


 クロエは大声で全てを明かした。


「その奥に、男の子がいるの!早くしないとつぶれちゃう」


 カインはその一言に目を丸くした。


「それ先に言え!パーツの劣化で5分くらいしか持たないんだ。急げ!」


 クロエは驚いた。自身の頬を指さす。


「その傷何なの?あとその格好何?なんで昨日メンテ行ったのに劣化してるの?」

「いいから、行け!!」


 クロエはカインの一声に自然と体が動いていた。そしてカインの横を通って奥の方に向かった。


 ――それから3分経った。


 カインの両肩が悲鳴をあげ、口から大量の煙が出ている。両足もひび割れて小さな破損した部品がカインの地面に転がっていた。カインは後ろの暗闇に目をやる。


「クロエ、早くしてくれ…。」


 カインの意識は遠のいていく。


【バッテリー残量2%。推定時間、残り1分】


 カインの視界にバッテリーの警告メッセージが表示される。カインは貧血のような状態で頭から蛍光緑色のオイルが流れてきた。オイルは両手のふさがったカインの体を伝う。


 すると、わずかに足音が聞こえた。カインが振り返るとクロエの姿を確認した。手には誰かいるようだが、視界の砂嵐が酷くて姿を確認できない。カインはスピーカーモードにした。警告メッセージが音声化される。


「【バッテリーカウントダウン10、9、8――】」


 クロエはそれを聞いて走り出す。カインは目で応援するしかなかった。


(間に合え、頼む。持ってくれ…。)


 カインの体の力が少しずつ抜けていく。根性ではどうしようもできない。


「【5、4――】」


 クロエはやっと少年を担いでカインの前に到着したが、そこでクロエは転んでしまった。カインは苦しかった。


(俺はまた、大切な人を守れないのか…。)


 一瞬、火の海とプラリネの明るい笑顔がクロエと重なった。しかし、クロエは即座に立ち上がって走り出す。カインの両目は鉄球のように真っ黒で何も見えていない。


「【3】」


 クロエはカインの目の前に来る。だが、少し瓦礫が下がり始めた。


「【2】」


 クロエは少し伏せて走る。


「【1】」


 カインの体がフッと軽くなる。全身の力が一瞬で抜けた。


 ――ガシャーン!


 ここでカインのバッテリーは切れてしまった。支えていた瓦礫が辺りに散らばって土ぼこりが舞う。ツリーハウス倒壊事件の現場は土ぼこりで見えなくなってしまった。

※この物語はフィクションです。

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