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第24話 英雄変身資格

 カインは工事現場に到着した。仕事も向かうついでに全て片付けた。工事現場は誰もおらずそれどころか重機以外に何もない。壁に貼られてるはずの建設工事の案内すらなかった。カインは首を傾げた。


(妙だな…。今は時間外だが工事の休止とは…。それに特に気になるのは――)


 カインが考え込んでいると――


 ――ガシャン!


 上から大きな音がした。カインはスーツの下に身に着けていた戦闘服になる。この戦闘服は魔法で召喚するタイプなので体に浮かび上がるように着替えられるのだ。カインは顔をハイネックで隠して工事現場に潜入した。


 工事現場は案外静かで人気(ひとけ)がない。


「この工事、俺は聞かされていない。つまり犯人は…」


 カインはそう呟いた。すると、動いてなかったはずのクレーンが動いてカインの後頭部に迫ってきた。


「…っ!」


 カインはすぐに横跳びで避ける。そして念動魔法でクレーンを戻しておいた。しかし、さっきまで無かった気配を無数に感じる。


(この無機質で冷え切った気配…。)


 このとき、カインは確信した。工事は噓で本当はウラヌスの何者かのアジトだ。


「…ここは、速やかに消すか」


 カインは真上に指を構える。しかし、頬に鋭利な刃物がかすめた。カインの人口皮膚が傷状に破けて内部の機械が露わになる。カインは舌打ちしてファイティングポーズをする。


「ここまで罠だったわけか…」


 カインは鞄のポケットから何かを取り出した。


 ――それはルシファーの仮面だ。


 カインは仮面を自分の目元に装着する。


「変身!」


 カインの体が赤と黒のエネルギーが包む。カインは変身した。


 まず仮面の下の目。両目が一瞬で魔眼になり、膨大な魔力が膨れ上がる。

 次に髪。黒いミディアムヘアが焼ける音と共に伸びて銀色に変化する。

 さらに服装。カインの背中から白と黒の2揃の翼が生えて、それらが複数の帯となってカインの体を包み、あの黒いYシャツと白いロングコートがカインの身にまとわれる。

 最後に魔導紋章がカインの機械の体が肉体に変化するのと同時にペンが紙にインクを滑らせるように現れる。


 カインは静かに黒く輝く編み上げブーツで地面を踏みしめる。


(変身したのはいいが、長時間なっているとギアが焼き切れる…。)


 カインは”英雄変身資格特級”という簡単に言えば変身ヒーローの最高資格の取得者だが、サイボーグ化する前に取得したので、ボディがカインの莫大な魔力に耐えられないという、唯一にして最大の欠点があった。


 工事現場から編み笠を被った様々な刺繡の入った戦国時代の足軽のような、和風と中華が入り混じったような格好をした人物が大量に現れた。前方の3人が一気にカインに飛びかかる。しかし、カインは身切って伏せて上部にエネルギー弾を生み出してアシガルたちを突入させて消した。カインは軽くその場で跳ぶ。


(ウラヌスの戦闘員、アシガル…。これは変わらず、か)


 カインは他の戦闘員――アシガルがいる位置を全て魔眼で見通した。しかし、――


『これは思ったより強いじゃねぇか、ルシファーさんよぉ』


 どこからか声が聞こえた。少しノイズがある。カインは声を辿る、アシガルを倒しながら。


(アシガルは使い魔の一種。言語能力はないはずだ)


 よく探すと大量の金物が山積みになっていた。梁にくくりつけられたスキレットからカインはうなづく。


(さっきの音の正体はこれか…)


『なんだぁ~?応答しろよ!』


 カインはこの口調に少しデジャヴを感じた。前のグレイヴからの迷惑電話だ。カインはため息をつく。


「…ぐっ」


 少し胸の奥の方から痛みを感じた。内部の装置が破損してカインの本体にダメージを与えているのだ。カインは変身を解きたかったが、相手がどこにいるのかわからない。だから発声源を探すことにした。


 ――声の主はトランシーバーだった。


 カインは義眼でスキャンしトランシーバーを入念に確認してそれを揺らさないよう手に取る。


(振動で爆破する奴だな。この俺がかかるわけないだろ?)


 カインは少し高揚していた。カインは早速声をかけた。相手はルシファーの正体を知ってるのかわからないので声は変えた。これもサイボーグ化のおかげだ。


「私に何の用だ」


 相手はゲラゲラと笑う。


『あんたがルシファーさんかい?まずは名乗っとくよ』


 カインは耳の録音装置を起動した。一瞬瞳が白濁した色になる。相手は咳払いをした。


『…俺は東雲。ウラヌスの情報屋さ。ボスの命令から逸脱して今回はバカンスだ』


 カインは声を変えたまま工事現場の柱にもたれかかる。


「随分と手馴れてるな。この機械も爆発物でしょう?」


 東雲は愉快そうだ。カインも合わせて少し微笑んだ。


『だろ?そいつはトランシーバーって言うんだ。』


 カインはここで話を変えた。


「あなたは私の質問に答えていない。もう1度尋ねましょうか?」


 東雲は黙った。カインはここで少し漁る。


「あなたのバカンスの目的、当てましょう…。月影タワーの地下のリアーナのセキュリティシステム」

『なっ!』


 カインは全て推理していた。わざわざ脅迫状を月影商会に渡したのは、金を好む存命のルシファーに富裕層のカイン・月影が頼むかもしれないから。カインは東雲の声から東雲の記憶を全て探り、真相を突き止めた。


(ルシファーの正体は知らなかったようだ…。声を変えて正解だったな)


 カインは内心安堵していた。そしてカインは最後の一手を打つ。


「残念ですが、タワーの地下の機密情報は全て消去されています。それにセキュリティは強固なのでプロの情報屋も情報を盗めません」


 カインは事実を突きつけた。「リアーナの機密情報はタワーにはない」という情報を与えた。東雲は無言だ。しかし、笑い声が聞こえてきた。


『…ふっ、ククク、ぎゃはは。引っかかったな?』

「?」


 カインは眉をひそめた。このミステリー(東雲の策略)はまだ終わってなかったのだ。

※この物語はフィクションです。

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