第23話 脅迫状は突然に
――これは、グレイヴたちがアポローンで冒険してるときのカインの話
カインはデスクの前の1枚の紙に絶句していた。
「こ、これは、…。」
その紙には新聞の切り抜きで、『お前の秘密を知っている。バラサレたくなかったらリアーナ・ギルドセンターに行け』と書かれていた。カインからは構造上冷や汗は出ないが、瞳が小刻みに揺れていた。
「俺の、秘密…。」
カインの秘密、それは”自分がかつて裏社会の存在だったこと”だ。それは表でも裏でも言えるようなものではない。しかし、カインには疑問があった。手紙を裏返したり透かしてみたりしてみたがそれは全く解決しない。
(…普通、金銭目的じゃないのか?電話が何時に来る、大金貨何枚用意しろといったようなものがこの手紙にない)
カインは考えた。最近カインは戦闘用サイボーグパーツを効率よく手に入れるため、ギルドセンターに会員登録してほぼ毎日参加していた。しかし、向こうには金庫がなく、報酬は所定の銀行の専用の窓口で受け取る。それにカインは金銭以外にもパーツを受け取っているため目的は、「高く売れるサイボーグパーツ」か「大量の金銭」、組織関係なら「顧客情報」も新たに考えられる。
カインはある言葉がよぎった。
「…ウラヌス」
すぐにカインは赤紫の魔眼を使って手紙を再確認した。今回は左の頬に赤い脈を生み出して魔眼をそこに出している。魔眼は黒い目の中心に赤紫の瞳が怪しく輝いている。魔眼ありとなしの様子を見比べるためだ。
すると、――手紙の端のわかりにくいところに変わった言語があった。カインはすぐに確信する。
(ウラヌスの暗号…。間違いない。特殊なインクを使っている。)
カインは解読した。内容は――
『堕天使よ、月をこの度赤く染める。貴様の翼と冠もへし折れる』
謎の文章だった。カインは顎に指を添える。
(堕天使は俺だ。それはわかる。――ではこの”月”は?)
しかし、カインはスケジュールが迫っていたので手紙を鞄の奥底にしまい、部屋を出た。
――カインに、ウラヌスの脅威は確実に迫っていた。
◇◇◇◇◇
カインはスケジュールの暇を縫って脅迫状通り、リアーナ・ギルドセンターに来ていた。
リアーナ・ギルドセンターとは、簡単に言えばギルドと何ら変わらない。ただマジホの特別なアプリと連動していて報酬が自分好みにリクエストできるというハイテクな要素がある。その仕事の場所はリアーナが所有する地上が主で、ランクが上がれば空中庭園の特別な任務を受けられる。ランクは「ビギナー」「マイナー」「メジャー」「キング」「クイーン」の5段階だ。
カインは最近加入したので、ランクが「マイナー」とまだ低い。しかし、今回は建物の裏に回った。
カインには見えていたのだ。
(インクは真新しいが、やはり魔力の痕跡の件は改善されてなかったか…。)
カインはわずかに笑みを浮かべる。ウラヌスの開発した特殊インクは、特定の魔法を使わないと浮き上がらないという優れたものだが、インクの魔力が強力過ぎて書いた場所に魔力の痕跡が強く残るという欠点があった。大抵の人物にはわからないが、カインのようなベテランなら簡単に後を追えるのだ。カインは金属の首筋に赤い脈を出して魔眼で魔力の痕跡を追っていた。
しかし、裏の倉庫には誰もいない。カインは慎重に倉庫の中に落ちている手紙に近づいた。
(この紙質…脅迫状と同じだ。それにインクも使ってある。)
カインは手紙を拾って、手紙に魔法をかける。簡単な炙り出しだ。普通そのまま残るので凡人は使用しないがカインの場合自分の意志で時間を戻して消せる。時間関係の魔法はこの世界ではかなり上級で少し練習した程度ではできない。生命にも関わるが不老不死のカインには関係ない。
(インクの文字は…)
白紙に黒い焦げた文字が浮かび上がる。カインは目を細めた。
――『青い槍がそびえる地、この過酷なテラスで待っている』
こう暗号で書かれていた。カインはすぐに内容を理解した。
「青い槍は月影商会の監修の月影タワー。過酷なテラスは…」
月影タワーとはカインが月影商会の頭取になって1年経った記念のリアーナのシンボルの1つだ。全体的に青白く尖った形で、多くの人が訪れている。
カインはマジホで月影タワー周辺を調べた。工事現場だ。紙狐に視界を共有させると工事現場は骨組みしかない。カインは口角を上げる。
(過酷なテラスは、骨組みの工事現場か。タワーにはテラス席も屋上もない。――決まりだな)
こうしてカインは身1つで月影タワーに向かった。目立たないように体を透明にして空を飛ぶ。
――だが、このあとさらなる事態が発生する。
※この物語はフィクションです。




