第22話 ウラヌスとルシファー
アポローンの集落に到着して東屋同然の飲食店に入ったグレイヴたちはテーブルに座っていた。人型になってグレイヴも座っている。鬼気迫る空気はチェルルの一言で壊された。
「このお店、水しかないよ~」
グレイヴは顔を赤らめる。
「おい、前まではそれすら無くて店として機能してなかったんだ。これだけでも進歩だ」
エリックは体をテーブルに預ける。少し軋んだ。
「…進歩、ねぇ」
リリーは咳払いをして鞄から1冊の年季の入った本を取り出して、テーブルに置く。
「これが祖父の手記です」
グレイヴは本を見て尋ねた。
「なんで持ってんだよ」
「祖父は私の師匠で、これは御守りみたいなものです」
その明るい言葉にエリックは口を尖らせる。
「随分重い御守りだね。筋トレになりそう」
「一言余計だぞ、エリック」
グレイヴはエリックに口を挟む。リリーは手記を開いて語り始めたので全員リリーの話に耳を傾けた。
「読みます!まずは”ウラヌス”」
グレイヴはつばを飲み込む。
「”ウラヌス”は昔の極悪組織のようですね。どうやらアマチュアのひったくり犯からプロの殺し屋、さらには怪盗や呪術師などあらゆる悪党がいたそうですぅ」
エリックは質問をした。
「そのウラヌスって、何か目的とかわかる?」
しかし、リリーは首を横に振った。そして重い口調になる。
「…しかし、今から100年ほど前にウラヌスは壊滅しました」
グレイヴは目を丸くする。
「じゃあ、今のウラヌスは違うってことかよ!?」
リリーは首を傾ける。
「時空怪盗が来ていたという線もあるのでわかりません。でも壊滅原因は1人の殺し屋の裏切りだそうです」
チェルルが真剣に聞いている。
「殺し屋?うらぎり?」
リリーはページを速くめくり始める。
「えっと、裏切り者は――あ、ありました。”ルシファー”だそうです。一晩で何千人もいた組織のメンバーを皆殺しにしたそうです」
「ルシファー…」
グレイヴは復唱する。
「見た目の特徴も書かれてました!長い銀髪、黒い服に灰色のマント、トカゲと茨の絡みついた鎖の魔導紋章あり…。烏の仮面を身につけて口は全く開かない」
エリックは思わず声をあげた。
「それ、僕らの救世主じゃない?」
グレイヴは少し考えて目を見開く。
「そうだ!特徴もかぶってるしな!」
グレイヴは魔導端末を取り出す。
「俺、カインに聞いてみる。あいつは900年生きてるなら何か知ってるんじゃないかと思うんだ!」
リリーは激しくうなづいた。
「それなら早く聞きましょう!」
グレイヴはカインに電話した。だが――
「もしもし、カイン!実は――」
カインの怒鳴り声が返ってきた。冷静なカインにしては珍しく、切羽詰まった状況のようだ。
『おい!今会議中だからまた後にしてくれ!今日は忙しいんだ!』
グレイヴは腰が引けた。
「そりゃしょうがないが、怒鳴っていいのか?」
『内部の通話装置からテレパシーの要領で電話してるんだ!じゃあな』
そのまま通話は切れた。グレイヴはため息をついた。
「…忙しいらしい。話せないみたいだ」
――こうしてアポローンにウラヌスという脅威が迫っていることをグレイヴたちは知ったのだった。
だが、なぜ仮面の男――ルシファーはグレイヴたちを救ったのか。それが謎のままだった。
※この物語はフィクションです。




