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第21話 謎の救世主

 グレイヴ一行は魔法式の檻に閉じ込められたまま、目の前の仮面の男に釘付けになる。


「なぁ、誰か知り合いいるか?」


 グレイヴは全員に尋ねた。初対面の人物が他人を救うだなんて普通に考えておかしいからだ。しかし、全員首を横に振った。グレイヴは思考を巡らせる。


「だったら誰だ?俺も知らねぇし」


 そんな彼らをよそに、仮面の男はカメレオン目掛けて走り出す。カメレオンは口に大量の岩石を入れ、男に一気に発射した。しかし、男はそれを利用して電光石火の如く軽々と岩石を飛び移り、気がつけばカメレオンの顔の前に飛び上がっていた。カメレオンの口からは炎が漏れ出ている。


「これ不利じゃない?」

「仮面さーん、危ないですよ!」


 リリーとチェルルは目を輝かせてまるでヒーローものの映画が映ったテレビに釘付けの子供のようだった。気づけばエリックも同じ目になっている。グレイヴは戸惑った。


「は?これ応援すんのかよ!?」


 グレイヴは男の正体にしか意識が行っていない。


(あれ…どこかで会ったか?)


 宙に浮かんだ男は片手から赤と黒の禍々しい稲妻をバチリと一瞬出した。するとカメレオンの頭上が一瞬で黒い雲で覆われる。男の手には巨大な稲妻の槍があった。そして、――


 カメレオンの頭から尻尾の先までそれを串刺しにした。その痛みでカメレオンが咆哮する前に巨大な雷が太い柱のようにカメレオンに命中する。


「…っ!」


 カメレオンは声をあげる間もなく赤と黒の柱の中でその影を消した。


 それを見届けたグレイヴ一行は盛大な拍手をする。全員涙目だ。当たり前だ、命の恩人なのだから。


「すげー、天才だよあいつ」

「いつか恩を返したいね」

「感動ですぅ」

「クッキー美味しい」


 最後のチェルルの言葉だけがどうでも良さそうだったが、チェルルはチェルルなりに生きてる幸せをクッキーと一緒にかみしめていた。


 その一方でイルとルカは男にクナイを構えて戦闘態勢に入る。


「よくも、拙者らの魔獣を…」


 しかし、――


「…待て、ルカ」


 イルが震えた声と震える体で男を指さす。


「…あ、あやつの、く、首筋と、と両腕の、ま、魔導紋章を見よ…」


 魔導紋章とは技を極めた達人の証の1つであり、体にタトゥーのように浮き上がるものだ。


 仮面の男には首筋と両腕に黒い宝玉を持った複数のトカゲと鎖に絡みついた色とりどりの茨が浮き上がっている。その中でも特徴的なのが、首筋にある赤い炎を両腕に載せた黒い天秤だ。ロングコートの袖がネットになっていてその紋章ははっきり見える。


 イルカ忍者隊は腰が引けて1歩ずつ下がっていく。


「これはいかん!あの男が生きておったとは…」


 ルカが焦る。


「これは主に報告せねば…」


 イルがそう言うと、イルカ忍者隊は「退散!」「ドロン!」と煙をあげて消えていった。それを見届けると、仮面の男は檻の中のグレイヴたちに向き直る。


「「「…ひっ」」」


 全員身の毛がよだつ。しかし、男は大きく飛び上がり、鳥かごの上部の金具に足蹴りを一撃与えた。すると、鳥かごは花の蕾が開くように破壊されて破片は煙となって消えた。


 グレイヴは男に1歩近づいた。


「…なぁあんた誰だ?なんで俺たちを助けた?」

「…」


 男は黙ってコインをはじいた。すると――バシュー!


 コインが膨らんで大量の白い煙が辺りを立ち込める。グレイヴたちはむせた。


「…げほ、何これ」


 チェルルの一言にエリックは解説する。


「コイン型噴煙弾だ!しばらく吸わないようにして!」


 エリックの助言に全員口を塞ぐ。やっと煙が晴れて胸いっぱいに空気を吸い込むと仮面の男は姿を消していた。全員放心状態になる。


「何だったんだ?あいつ」


 結局男のことはわからなかった。だが、確かなのは男は”ウラヌス”とやらに反抗的で強く、堕天使のように優雅でミステリアスだということだけだ。リリーは俯いている。


「…ウラヌスって、確か祖父の日記にあったはずです」


 グレイヴは目を丸くして尻尾を振りながら問い詰める。


「それどこにあんだよ?リアーナか?」


 リリーは首を横に振って腰の鞄を軽く叩いた。


「今持ってます。重いし大きいので、向こうに見えるあのお店で教えます。」


 リリーの指した方向には小さな集落があり、人気(ひとけ)はなさそうだった。だが、廃れた店の看板がわずかに見える。エリックは銃をしまった。


「じゃあ、早くそこで聞こう!」


 こうしてグレイヴたちは寂れた集落に向かったのだった。


 *****

 その頃、リアーナでは――


 カインがとある会議室に駆け込んできていた。


「すまんな。少し電話が…。」


 ふくよかな男性が微笑ましく手を振る。


「いいんですよ。月影様は多忙ですので…。」


 カインは自分の席に座ると、肩から一筋の煙が上がった。


「あっ…。」


 すると、カインの頭上のスプリンクラーが煙で作動してしまった。なぜか水でずぶ濡れになったのはカインだけ。スプリンクラーはカインの頭上のものしか作動してなかった。


 若い男性が席を立つ。


「つ、月影様!今管理者にスプリンクラーを止めさせますので…。」

「あぁ、恩に着る」


 カインはスプリンクラーの位置から動かず、水が滴る中考えていた。


(アポローンの魔獣の減少が、異様に速い。…まさかディエゴが)


 カインはただ俯いていたのだった。

※この物語はフィクションです。

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