第17話 チェルル救出大作戦!
アポローンの洞窟、風も弱まってきていた。グレイヴとエリックはリリーから”作戦”を聞いて、納得した。しかし、エリックは顔を曇らせる。
「…それ、結構賭けじゃないか?必ずそうなるとは限らないし…。」
グレイヴは前に出た。
「それでもやろう。一緒にいたリリーだからこそわかる、完璧な作戦だと思うぜ」
リリーはうなづいてグレイヴとエリックを真っ直ぐ見る。斧を可愛く構えた。
「じゃあ、早速作戦通りいきましょう!」
3人はハイタッチをして、作戦を決行した。リリーの言葉が蘇る。
――『まず、2人はチェルルの前で挑発してください。悪口はチェルルが攻撃しちゃうので、誘う感じで優しくお願いします』
(それ、挑発とは言わないんじゃないか?)
このとき、グレイヴとエリックは同じことを考えていた。そして、チェルルの前に立った。しかし、いくら考えても”優しい挑発”は思い浮かばず結果、言ったのは――
「おーい、こっちだ!」
「こっちに大好きなリリーちゃんがいるよ!」
短い一言だった。正直、2人は恥ずかしかった。
――『挑発してチェルルが2人に集中したら、すぐに二手に分かれてください!チェルルは急に1つのものが複数の方向に動くと混乱して倒れるので!』
言われた通り、グレイヴとエリックは左右に分かれて走り出した。その結果、チェルルは混乱してペチョッと潰れるように倒れた。話を聞くにはリリーは分身魔法が苦手なのでこの作戦には最低でも2人助けが必要だったのだという。
倒れたあと、グレイヴとエリックは指示を受けていなかった。ただ――
――『後は私に任せてください!』
「…何をするつもりなんだ?」
グレイヴはそう呟く。すると、リリーは隠れていた岩のてっぺんに飛び出た。そのまま斧を地面に叩き付け、その反動で一気にジャンプする。グレイヴとエリックの口は開いたまま塞がらない。
「はぁ!」
リリーはチェルルの頭上に飛び上がり、札を腰の神楽鈴で殴った。エリックは思わずツッコミをする。
「斧使わないのかよ!」
「いや、使ってただろ…。ジャンプで」
エリックのツッコミにさらにツッコミを重ねるグレイヴ。なんだかカインと目が似てきた。
――ビリッ!
札は綺麗に剝がれて地面に落ちた。チェルルの体から紫色の靄があふれ出てきて体がみるみる縮んでいく。ついには猫くらいの大きさになった。リリーは涙を流して倒れたチェルルに駆け寄る。
「チェルル!」
リリーがチェルルを抱きかかえるとチェルルは目をこすって何事もなかったような顔をしていた。
「あれぇ?チェルル何してたんだっけ?リー、なんで泣いてるの?お腹痛いの?」
チェルルの幼稚で可愛い声と性格に3人は浸る。グレイヴは腕を組んでいた。
「平和だね」
「そうだな…」
このとき、グレイヴは思い出していた。カインがまだジルの頃、一緒に楽しく過ごしていた日を。
(あのとき、もし俺が崖に捨てなければ今頃アポローンは…)
グレイヴは首を激しく横に振る。
(俺は何を考えているんだ!あれは最低の行為だぞ!)
グレイヴは剝がれたチェルルの札を拾って観察する。札には蜘蛛の巣の中心に赤く塗りつぶされた円が描かれている。どこか不気味なその札をグレイヴは黙って自分の腰に巻いてある小型バッグにしまいこんだ。あとでカインに聞くつもりだった。
自分が何も変わっていないことを酷く後悔した。リリーはチェルルと何やら話し合っている。すると、2人はグレイヴとエリックに向いた。
「今回はありがとうございます!お礼として私とチェルルもあなたたちの旅に参加させてください!」
グレイヴはエリックと顔を見合わせてうなづいた。
「いいぞ!俺はグレイヴ・天照寺」
「僕は旅人のガンマン、エリック・花屋敷!」
全員自己紹介をする。
「聖女見習いの僧侶、リリー・大海です!」
「チェルルだよ!」
*****
こうして、リリーとチェルルが加わり、グレイヴは冒険を続けたのであった。このとき、リリーがエリックのように怯えなかったのは、そう遠くない未来でわかることになる。
※この物語はフィクションです。




