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第16話 洞窟のスライム

 グレイヴは人型でエリックと鈴の示す方向をたどり、洞窟にたどりついた。奥が真っ暗で全く見えない。


「…今灯りつけるからな」


 グレイヴは小さな炎を宙に浮かせてそれを前方に配置する。これは簡単な魔法松明だ。これはさすがにグレイヴは最初から使えていた。エリックは目を丸くした。


「初め驚いたよ。この魔法使えて基本魔法のほとんどが使えないだなんて…」


 エリックの余計な一言にグレイヴは顔をしかめる。


「…うるさいなぁ。置いてくぞ」


 グレイヴはエリックを促して洞窟に入っていった。鈴は明らかに洞窟の奥を指している。念のため、エリックは銃の弾を補充していた。洞窟の蛇行した道を進んでいくと――グレイヴは目の前の大きなピンクの柔らかい塊にぶつかった。グレイヴの体はポヨンと飛ばされる。


「…うげっ!」

「前くらい気を付けなよ。何のための松明?」


 エリックはため息をつく。


「一言多いぞ!エリック!」


 呆れた顔のエリックに思わず真っ赤になって逆上するが、鈴がその静かな空間で鳴り響いた。こだましているからか、より神秘的に聞こえる。


「魔獣がいるのか?」


 グレイヴは辺りを見回したが、湿った空気の漂う洞窟にいるのはエリックと目の前の大きなピンクの半透明の塊だけだった。


「…は?いないぞ」


 エリックはピンクの塊を指さした。


「…それじゃない?普通に考えて、スライムだよ?」


 グレイヴはピンクの塊を一瞥した。彼は魔獣に詳しくないのでスライムは初めて見たのだ。


「これが、スライム?初めてだ…」


 エリックもまた目を丸くする。


「…僕もだよ。こんなに大きいのは初めてだ。スライムのサイズは魔力の量に比例するから相当強いよ、これ」


 すると、ピンクの塊が動いて先に行けるようになった。グレイヴたちもスライムを追うため、先に進む。進んだ先には開けたところに出た。そこはアポローンの希少資源である小さな泉のある美しい岩場だ。スライムが振り返って可愛らしい顔がやっと見えた。グレイヴの顔に思わず笑みがこぼれる。


「前の”ムゲン・ハムハム”といい、こいつも結構可愛いな…。」


 しかし、やはり可愛いものには力がある。スライムが大きく口を開けて空気をぐおーと吸込み、大量の空気を一気に吐き出した。グレイヴとエリックはその場で踏ん張る。


「…暴風がすごすぎて銃が構えられない!」


 グレイヴは洞窟の大きな岩が視界に入る。


「あの岩に一旦逃げ込むそ!」


 エリックとグレイヴは飛ばされそうになりながらも岩になんとか身を隠した。しかし、風は一向に収まらず岩も少しずつひび割れていった。


「このままじゃ、俺たち”ザ・エンド”だ!」


 グレイヴはかっこよくセリフを決めたつもりだったが、やる気のない目でエリックは口を開く。


「それを言うなら――」


 そのときだった。


「それは”ジ・エンド”!それにこの子は私の友達のチェルルなの!」


 明るい女性の声が聞こえた。すると、近くの岩場から巫女の格好をした透明なクラゲの帽子を被った可愛らしい女性が現れた。しかし、その手には大きな斧がある。


「…なんだ、お前。まさか、侵入者か?」


 グレイヴは剣を抜く構えをする。しかし、エリックが軽くどついてやめさせた。エリックは笑顔で女性に話しかける。


「君も冒険者かい?」


 女性の緊張感が抜けていく。


「はい。私はクラゲ属のリリー・大海です。このチェルルとアポローンで魔獣討伐していたら、変なお札貼られちゃって暴れるようになっちゃったんですぅ」

「「札?」」


 女性――リリーは涙目だ。グレイヴとエリックはスライムを見上げた。確かにスライムの頭上に札が貼られているが、薄暗い洞窟で貼られた場所が高すぎてよく見えない。


 グレイヴは顎に指を当てて考えていた。しかし、結論は言うまでもない。


「操られているのか?」


 リリーは激しくうなづく。


「はい!あの札を剥がせば助けられるはずです。」


 エリックは首を傾げる。


「…でも、どうするの?こいつデカイから簡単に近づけないよ…」


 グレイヴも同意見だ。スライム――チェルルは体がとても大きく、札はその頭のてっぺんにある。しかも近づけばさっきの暴風攻撃で飛ばされる。札に近づく手段がない。


 しかし、リリーの目は自信に満ち溢れていた。そして、斧を肩に担ぎなおす。


「私に考えがあります!チェルルのことは、私が一番知ってるので!」


 リリーは敬礼のようなポーズをする。斧が無ければ単純に可愛い女の子だ。初めこそ、疑っていたグレイヴとエリックだったが、2人は彼女を信じることにした。


 *****

 ――一方、その頃リアーナではカインがビルの屋上に立っていた。機械義肢の反射でグレイヴたちの洞窟の様子を伺っている。


「その”信頼”は吉と出るか凶と出るか…。初対面の奴を信じるとは…」


 カインの口角が上がる。その笑みの裏には黒とも白とも言えないグレーの何かがあった。


「このまま投げ出せば、決行できるんだがな…。”エクリプス計画”を…。」


 かつて勇者の奇襲により大切なものを失い、今現在、リアーナで体の欠損と同時に手に入れた新たな大切な存在…。魔王・月影がどちらを取るのか…。それは”エクリプス計画”に隠されている。


 これはクロエが前世『事故で死んだ医者に憧れていた病弱な少女』だったことを思い出す5秒前のカインである。この後、カインは歳を感じてしまうのであった…。

※この物語はフィクションです。

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