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第13話 最初の魔獣と仲間

 ――この世界の生物には大きく分けて2種類いる。

 1つは人類。つまり、人間だ。

 そして、もう1つは魔物。これはさらに”魔獣”と”魔族”の2つに分かれる。前者は狩猟対象で、後者は人間と同じく理性を持ち、普通に生活している。しかし、人間と異なり体の性質に種族ごとに大きな違いがある。


 *****

 噴水広場の事件の翌朝、グレイヴは狸姿で鈴を加えて歩いていた。無風だが、その毛は軽やかに揺れている。また、本人は気づいていないが代々伝わる”勇者の(つるぎ)”は、小さくなって狸の体にシンデレラフィットしている。カインが新品に戻すのと同時に持ち主に合わせて体のサイズに適した大きさになるよう魔法をかけておいたのだ。


 鈴の傾く方向を辿ると国境の森に到着した。枯れたものと緑が生い茂るものが国境を挟んで混ざった状態で並んでいる。その中の大きな岩の前で鈴が鳴った。


 ――チリン!


「――うわ!な、なんだ?」


 グレイヴは思わず人型になる。白いシャツに紺色の動きやすいズボンで、かなりシンプルで初期の冒険者に相応しい服装だ。グレイヴは目の前の大岩を見上げる。


「これを、登れってことか?」


 岩の表面は不思議な模様を描いている。だが、グレイヴはそんなことより首をほぼ真上に上げないと頂上が見えないほどの岩の大きさに心を奪われていた。グレイヴは剣を背中に回して袖をまくって両頬を軽く叩く。


「…よーし」


 グレイヴは岩をよじ登り始めた。模様の凹凸のおかげで手をかける場所はある。しばらくして、やっと3分の1まで行くと――突然岩が動き始めた。


 激しい地響きでグレイヴはバランスを崩す。


「…じ、地震!?――って、あっ!」


 グレイヴは気づいたら岩から体が離れていた。


変化(へんげ)!」


 グレイヴはこのとき鳥になろうとした。しかし、なったのは――丸い茶色い毛玉だった。実はグレイヴは変身魔法のとき、”変化”と言うのだが魔法なので、からっきしダメなのだ。


「しまった!」


 しかし、地面で大きな毛がクッションになったおかげで、怪我はしなかった。不幸中の幸いである。


 グレイヴは人型になり、もう一度岩を見上げると――そこにいたのは大きな亀だった。背中に大きな木が生えていてその下にさっきグレイヴがよじ登った岩――甲羅があった。グレイヴは亀の魔獣に既に遭遇していたのだ。


 グレイヴは剣を構える。しかし、鍛錬などしたこともない彼には新品の剣が重くて持ち上がらない。


「…クソ、重いっ!前なら片手で持てたのに…」


 ここにカインがいたらこう言うだろう。


 ――『それは刃こぼれのし過ぎで鋼のほとんどが無くなっていたからだ。それに錆びの塊で鞘から抜けなくなっていたから抜いたことないだろ』


 そんな冷酷な言葉がグレイヴの脳裏によぎった。しかし、亀は目の前に木の葉を手裏剣のように放ってきた。しかし、剣は今やっと持ち上がる。葉が目と鼻の先に来た――そのとき


「…危ない!」


 後ろから若い男性の声がして複数の銃声も聞こえた。次々に木の葉が撃ち落されていく。グレイヴが振り返ると、そこには赤い短髪のカウボーイの青年がいた。尻尾と帽子から飛び出た耳から狼の魔族だとわかる。両手には磨き上げられた銃が輝きを放っている。青年はにこやかに銃を構える。


「僕はエリック・花屋敷!しがないガンマンさ!助太刀するよ」

「…あ、あぁ、俺はグレイヴ・天照寺…」


 あまりにも軽快なエリックの調子にグレイヴも圧倒される。しかし、彼の銃の腕は服がコスプレでないことをよく体現している。グレイヴは木の上に登り、軽々と亀の攻撃を避けるエリックに向けて声を上げる。


「花屋敷!こいつの背中に飛び乗れるか?」

「エリックでいいよ。OK、それくらい朝飯前さ!」


 エリックは近くの木の幹を蹴って勢い良くジャンプして亀の甲羅の上に着地した。グレイヴも木の枝からジャンプした。しかし、微妙に届かず高い木から落ちてしまった。


「うわぁ、助けてくれぇ!俺飛べないんだよ!」


 すると、グレイヴの腰に青いベルトが巻き付いた。


(…この色、エリック?)


 見上げるとベルトが伸びてカウボーイの投げ縄のようにベルトを操るエリックがいた。


「大丈夫かい?このまま引き揚げるよ」


 エリックはグレイヴの返事も待たずにグレイヴを持ち上げる。おかげで2人は甲羅の上に無事に到着した。グレイヴは息を整えると大木に駆けつけて剣を振る。しかし、傷しかつかない。


「この木を、あいつの…!頭に、切り倒せばっ!いけると、思う!」


 グレイヴはまだ物理攻撃を10回しか当ててないのに額に汗がにじんでいる。すると、エリックは2丁拳銃を縦に並ぶように構えてバズーカ砲にした。


「…グレイヴ、そこから離れて!」


 グレイヴは声を上げる前に木から離れた。エリックはスコープに目を当てる。


「…右、よーし。左、OK。方向は…こっちか。ロックオン。喰らえ、”コンドル・バズーカ”!」


 ――ドガーン!


 エリックが引き金を引くと、巨大な魔法弾が放たれて大木に命中した。大木は悲鳴をあげて根本からへし折れる。


 ――メキメキ…バキッ!!


 倒れた木は亀の頭に大きな鈍い音をたてて命中した。それにより、亀はその場に崩れ落ちたのだった。


 亀が動かないことを確認すると、グレイヴとエリックはハイタッチして大いに喜んだ。


「…やった!俺の初討伐だ!ありがとうな、エリック」


 しかし、エリックは急に距離を開けた。その顔はこわばっている。振り返ったが、倒れた亀しかいない。エリックは魔獣に恐れているわけではないようだ。


「…思い出した。”天照寺”はこのアポローンの権力者…。先ほどはご無礼を!」


 エリックは頭を下げる。このとき、グレイヴは自分が外部からどう見られているのか、エリックの怯えた目から全て理解した。グレイヴはすぐにエリックと目線を合わせる。


「やめろよ。俺は勇者の血は引いてるが、この戦いで全部わかった。『俺は無力だ』って。だから、敬語はやめてくれ」


 こう話すと、グレイヴは今まで胸を張っていた自分が恥ずかしかった。”無能の天才”だなんて言われていたことをエリックからこのとき初めて聞かされた。


 その瞬間、カインの言葉が脳裏をよぎる。


 ――『仲間を増やしてもいい、お前が決めろ』


(…仲間?)


 グレイヴは困惑した。今まで金と権力で得てきた仲間とエリックはどう違うのか、と。グレイヴは拳に力を入れる。少し顔が赤く、目をそらす。


「…なぁ、エリック。俺はこの鈴が示す有害な魔獣を討伐してる。良ければ、俺と冒険してくれないか?その、これは命令でもないし、報酬もないから、お前に任せるよ」


 グレイヴはエリックにやったこともない、中途半端なカンペを読み上げるように頼み事をした。グレイヴが目をやっとエリックに向けるとあったのは輝く笑顔だった。


「いいよ!僕、旅人でパーティー経験ないから、行くよ!改めてよろしく、僕はエリック・花屋敷。戦闘職種は2丁拳銃使い、種族は人狼だよ!」


 グレイヴは自然と笑顔になる。すると、エリックがリュックから何か取り出した。赤いベルトだ。


「これ、あげる。これは”魔導ベルト”って言うわずかな魔力で伸び縮みさせたり魔法をまとわせたりできるんだ。頑丈だから切れないよ!――ただズボンはゴム入ってるやつでやってね…。僕、昔ズボンずり落ちたから…。」


 エリックの気まずそうな顔に当時の様子がグレイヴにわかった。吹き出しそうだったが、ここは耐えた。グレイヴはベルトを受け取ってズボンにはめた。


「ありがとうな、俺は幸いゴム入ってるのしか持ってないから安心しろ!」


 グレイヴはガッツポーズをして、狸に戻った。そして、エリックに抱かれて鈴の方向に向かったのだった。最後にエリックが一言、「なんで、自分だけ楽してるの~?」と森をこだまさせたのだった。


 ◇◇◇◇◇

 こうして、グレイヴはエリックを仲間に引き入れ、魔獣討伐の旅を再開した。

 次はどんな出会いが待っているのか…?

※この物語はフィクションです。

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