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60cs 「昼、オフィス街」
選択肢は多いのに、どれも決定打にならない。
ラーメンかもしれない。
湯気に曇る眼鏡も構わず、喉を焼く熱さと脂の背徳感にすべてを委ねる。
味噌か醤油かでまた分岐する。
カレーもある。
鼻に抜けるスパイス、額にじわりと浮かぶ汗と、喉を突き抜ける刺激の余韻に、ただ無心で翻弄される。
パスタが割り込む。
立ち上る湯気にパルメザンの雪を散らし、銀のフォークで非日常を巻き取る。
指だけが、どんどん上へ上へと動いている。
ウィーン。コンビニのドアが開いた音。
そのくせ、どれも「絶対これ」にはならない。
決めるということ自体が、少しずつエネルギーを削っていく。
選ぶたびに、未来を一瞬だけ試しては、また戻す。
その繰り返しで、気づかないうちに疲れていく。
スマホの画面だけが何度も更新されて、
結局どこにも行かないまま、昼が少しだけ終わっていく。
慌ててパンとコーヒーを流し込む。
「あぁ、おにぎり食べたいかも」




