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田中 ― One-Cut-Story ―  作者: MMPP.K
5cp

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48cs 「お弁当の価値」

 昼休みは、だいたい平和だ。


 それぞれが自分の席で弁当を広げ、スマホを見たり、ぼんやりしたりする。

 音はあるのに、どこか静かな時間。


 その日も、いつも通りだった。

 彼が立ち上がるまでは。


 ふらり、と歩いてきて、食事中の同僚の前に立つ。

 そして、じっと弁当を見つめたあと、ぽつりと呟いた。


「……480円やな」


 空気が、固まる。


 本人は気にした様子もなく、次の席へ移動する。


「380円やな」


 また次へ。


「550円」


 まるで値札の見えない商品を、正確に読み上げる店員みたいに。


 誰もツッコまないまま、彼は一通り呟き終えると、満足したのか席へ戻っていった。

 静けさが、ゆっくり戻ってくる。


 そして、私の番も来ていたらしい。


「290円やな」


 愛妻弁当である。


 確かに、原価で言えばもっと安い。

 まとめ買いした食材、前日の残り、工夫と手間の積み重ね。

 数字だけなら、彼の査定はむしろ高めかもしれない。


 それでも、どうにも釈然としない。

 この弁当には、値段じゃない何かが入っているはずなのだ。


 そう思っていたのに、少しだけ、見えなくなった。


 昼休みは、だいたい平和だ。

 「290円……」

 


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