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俗に言う出会いは最悪ってやつだ  作者: ルーラブ


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7/12

失敗

一真たちが熱い会話を交わす様子を片隅で見ているのは浦木姫乃だ。


「私、あんな感じですぐ簡単に学校を変えるとか生徒ウケ良さそうなワード並べて票取ろうとする人大っ嫌いなのよね」


相変わらず一真達に対して不快感を示す姫乃。そして相変わらず愚痴は友人の日菜が全て受け入れていたのだ。


「まあまあ、この後の演説で見返えせば良いじゃん!」


「それもそうね」


姫乃と友達になってから長いということもあり、なんとか宥めることに成功した。


そして自分の応援演説の番が来たのを良いことに「じゃ行ってくるわ!」とステージに消えていった。


彼女の背中を見送りながらエールを飛ばす。そして自分自身に対しても「そうよ、私はこんなところで負けてられ無いのよ」と鼓舞した。


時を同じくして、応援演説に向かう日菜に対して姫乃より熱烈なエールを一真は飛ばしていた。


「頼む!絶対当選してくれ!じゃないと面倒なことになる!」


先ほどの自分の演説を振り返り、どうも手応えがあったことで少しばかり不安になる一真。とにかく今自分に出来ること他の候補者が当選するよう祈ることしかない。


そして日菜の応援演説にそっと耳を傾ける。


「私は生徒会長に相応しいのは浦木姫乃さんだと思います。彼女はクラスでも人気があり、常にリーダーシップを発揮して周囲と協力しながらクラスがより良くなる方向に進むよう日々努力しています」


彼女も、言葉を途切れさせることなく演説を続ける。そして応援演説の制限時間5分を丸々使って演説を終了した。


そして演説を聞きながら舞台袖で見守るように応援していた一真は一つの感想を抱く。


「なんていうか・・・無難すぎる・・・」


応援演説というテンプレートに沿ったような、良くも悪くも無難すぎる演説だった。もう少し捻ってくるというか、何か一工夫あるかと思っていたがあまりにも普通すぎて少しだけ心配になってしまう。


「ま、まあでも!魅力は伝わったし次はいよいよ本命の浦木姫乃の演説だ。きっと周囲を巻き込む力でとんでもない演説をしてくれるに違いない!頑張れ!」


日菜とバトンタッチでステージに上がる姫乃を見守りながら、再び心の中からエールを飛ばすのだった。


彼女の第一声を固唾を飲んで見守る。きっと自分も他の生徒も今日一番に注目しているに違いない。ガンバレ!


「んっご、ゴホンッ!えっと、この度生徒会長に立候補しました2年2組の浦木姫乃です。えっと・・・えっと〜・・・」


彼女はステージに上がった途端、大勢の生徒に見られているという緊張感から覚えていた言葉を全て忘れてしまった。


そして言葉を忘れたことに焦ってしまい、更に緊張が増してしまうという負のループに陥ってしまっていた。


「ヤバイヤバイどうしようどうしよう。落ち着け落ち着け!思い出せ思い出せ!」


自分を鼓舞する。こうして言葉を止めている間にも他の生徒の注目が集まってしまい、それが更にプレッシャーになる。


考えないといけないのに、考えれば考えるだけ思考が止まってしまう。そして額からは冷や汗が滲み出てきた。


時間にして約15秒ほどの沈黙は、彼女にとって永遠にも感じられた。そして混乱の中なんとか言葉を捻り出す。


「わ、私は生徒会長になったら学校を正しい方向にみ、導けるようにします。この学校は、伝統ある学校として・・・・地元住民に親しまれてきました。山下高生というだけで何かサービスしてもらったり地域の人に良くしてもらった覚えは皆さん恐らくあるでしょう」


言葉に詰まりながら、なんとか記憶を辿り文字を紡ぐ。どうやら自分の脳みそは使い物にならないらしく考えることを放棄している。脊髄反射で出てくる言葉を必死にマイクに向かって投げかける。


「この伝統というのは一朝一夜にして成せるものではありません。私たちも諸先輩方が紡いだ歴史の一部だということを認識して行かなければならない。なのでそんな伝統を紡いでいる山下高校を更に正しい方向に導けるよう、私は尽力します!」


なんとな、なんとか喋り終えた。全員の前で醜態を晒した羞恥心と恐怖感から涙声になっていたが、なんとか涙を堪えて自分の出せる精一杯を出し尽くした。


穴があったら入りたいとはこのことだろう。姫乃は演説を終えると一礼する余裕もなくすぐさまステージ袖に逃げるよに向かった。


そして控え室で待っていた日菜の顔が見えた瞬間、安堵して堪えていた涙が溢れ出てしまった。


控え室には他の生徒も居るのでワンワン言って泣くことはなく、ただ言葉を殺しながら、日菜の胸の中で目から涙だけを流し続けるのだった。


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