相性の良い2人
先生から渡された紙に目を通す。
そこに書かれていたのは商店街活性化対策の一環として現役山下高校生に商店街のお店を紹介してもらい、その様子を市報に載せたいとのことだ。
こんな一般人が紹介したところで商店街が活性化するのかという疑問はさておき、参加する側としては面白そうな話だ。
全員が一通り概要を見終えたところで、先生が口を開く。
「主に会長の赤崎くんと副会長の浦木さんがメインになって取材して欲しいんだ」
先生の自分への呼称が会長になったことから、改めて自分が生徒会会長になったと実感する。
だけど、あの浦木姫乃と一緒と考えると悪寒がする。そもそもアイツだって俺と一緒は嫌だろう。何かしらの形で拒否するに違いない。
しかし浦木姫乃の返事は一真の期待を裏切り「分かりました〜」とこれまた二つ返事で承諾した。
思いもよらぬ返事に呆気に取られながらも一真も慌てて「僕も大丈夫です」と返事をする。
一瞬、浦木姫乃と目が合った。彼女の顔は全く笑っておらず「この前の選挙の仕返ししてやるから覚悟しとけよ」と言いたげな表情をしていた。
その表情に思わず体がブルッと震える。本能的に危険な何かを感じたのだ。
取材の日程は来週土曜日なので、それまでに防弾チョッキを買ったりしてなんとか対策をしよう。一真はそっと心に決めた。
「私思ってたんだけどさ、あの2人って相性良いよね」
姫乃と一真の無言の応酬を遠くから見守っていた日菜が、陽斗にそうボソッと話しかけた。
「ま、良くも悪くも似たもの同士って感じだな。変に考えすぎたり相手の思考を深読みする辺り変わり者同士波長があっている」
「あ〜分かる。姫乃っちってなんかいっつも考えすぎなんだよね〜別に周りは気にしてないのに自分で思い込んで勝手にダメージ受けるタイプっていうか」
「一真も同じだ。だからあの2人は相性が良いんだよ」
一真と姫乃に届かない声量で、コッソリと会話をする。お互い、これまで密かに思っていたことを共感してくれる相手を見つけ、会話が弾むのだった。
「だったらさ、私面白いこと考えちゃったんだけど」
日菜が悪いニヤケ顔をしながら陽斗にそっと耳打ちする?
「なんだ?」
「今度の取材の時にさ、2人をくっつけちゃおうよ。もちろん友情的な意味で」
「そいつは面白そうだ。乗ったぜ」
この2人、目の前に面白そうなおもちゃがあればイジらずにはいられない性格をしている。そんな2人が出会ってしまい、目の前には面白そうなおもちゃ二つが今も口論を続けている。
「作戦会議は今度ね。私、今日塾あるから先帰る」
そう言って日菜は、一真と口論している姫乃を強制的に連れ出し生徒会室を後にした。
先生も、他の仕事があるため「まあ、色々あると思うが仲良くな」と一言添えてその場を去っていった。
「一真、どうだ?生徒会は」
「まあ、思ったよりはマシかも。なんかもっとひたすら事務的な作業をするのかと思ってた」
一真が生徒会に入りたくなかった理由は、事務作業が嫌だからというのが8割を占めていた。
なんとなく、机の上に山積みにされた何かしらの書類をひたすら片付けるだけの地味な生徒会を想像していたのだが、今回のような番外編学校行事のような仕事はむしろ大歓迎だ。
「姫乃ちゃんとは仲良くなれそう?」
「全然。今日だってめっちゃ睨まれた」
「一真は仲良くする気はあるの?」
「アイツ次第かな。俺は別になんとも思ってない。だけど向こうが俺に対して色々思う所がある気持ちは分かる。だから近づけないっていうか」
一真自身、一番の壁になっているのは姫乃が言っていたという自分への悪口だ。
もちろん、彼女の気持ちは理解出来る。ただ裏で自分の事を悪く言っていた人物に対してこちらから積極的に仲良くしようなんてそんな考えにはならなかった。
「姫のっちはさ、一真くんとは仲良くしないの?」
同時刻、塾に向かって歩みを進めていた姫乃と日菜も同じような会話をしていた。
「アイツ次第。私は別になんとも思ってないわ。だけど向こうが私に色々気を遣っているのが見え見えでそれがウザい。私のこと怖がってるんか知らないけど今日だって機嫌を伺うように何度かチラチラ見てきてたしキモかった」
「まあ姫乃っち、一真くんに対してボロクソ言ってたからね〜そりゃ向こうもビビるよ〜」
「まあ・・・確かにそうかもね」
長い髪の触覚を人差し指でクルクルと回しながらそう答えた。確かに、自分にも非がある所は反省しなければという少しばかりの気持ちが芽生えたのだ。




