【第4話】スキルの真骨頂! ボロ家を解体して『マイホーム』を召喚せよ!
スキルの真骨頂! ボロ家を解体して『マイホーム』を召喚せよ!
「おおおおっ! 君が我が愛娘、フィリアを救ってくれた恩人か! よくぞ、よくぞ無事で連れ帰ってきてくれた!」
ポポロ村の村長宅の奥まった部屋に入るなり、巨大な熊のような大男が俺の手を両手でガシリと握りしめ、ボロボロと大粒の涙を流して感謝の言葉を述べてきた。
彼こそがフィリアの父親であり、このポポロ村の村長、ラミラスである。
元Bランク冒険者というだけあって、丸太のような腕と豪快な髭を持ち、ただそこに立っているだけで威圧感がある。しかし、娘に向ける眼差しはどこまでも甘く、親バカ全開だった。
「いや、たまたま通りかかっただけですから。フィリアが無事で何よりです」
俺が苦笑いしながら答えると、奥から上品な女性がトレイを持ってお茶を運んできた。
「本当にありがとうございます、マモルさん。フィリアに何かあれば、この人、村ごと盗賊の山に突撃しかねませんでしたから」
くすくすと笑いながらお茶を差し出してくれたのは、フィリアの母親・シャーラだ。
元凄腕の僧侶だという彼女は、45歳という年齢を感じさせないほど若々しく、包容力にあふれた穏やかな美女だった。フィリアの美貌は間違いなく母親譲りだろう。
「それで、マモルさんがお困りだとか?」
シャーラが優しく尋ねると、フィリアが身を乗り出して口を開いた。
「そうなの! パパ、ママ。実はね、マモルって『家を出せるスキル』を持ってるみたいなの! だから、村の中でどこか空いている土地を貸してもらえないかなって」
「ほう? 家を召喚するスキルとは、また珍しいな。魔獣や精霊を召喚する魔法は聞いたことがあるが、建物を丸ごととは……」
ラミラスは感心したように顎髭を撫でた。
「命の恩人の頼みだ、もちろん協力したい。だが……村の中で安全かつ、ぽっかりと空いている手頃な土地があったかな?」
ラミラスが腕を組んでうーんと唸っていると、シャーラがポンと手を打った。
「あら、あるじゃないですか。ほら、うちのすぐお隣の……」
「あぁ! あのボロ屋か!」
「そうそう。持ち主のお爺さんが数年前に亡くなってから、ずっと空き家になってるでしょう? 場所は村の中心で申し分ないし、広さも十分だけど……」
フィリアも思い出したように頷いた。
「場所はいいよね。でも、屋根も抜け落ちてるし、壁もボロボロだよ? マモルの家を出すには、まずあの家を壊して片付けないといけないんじゃ……」
フィリアの言葉を聞いて、俺の頭の中に閃くものがあった。
家を壊して片付ける?
いや、待てよ。俺の【マイホーム】スキルのポイント獲得条件には——。
「(『素材交換』……もしかしたら、既存の建物を素材として吸収して、ポイントに変換できるんじゃないか?)」
俺は少し身を乗り出した。
「村長、その空き家って、俺が好きにしてしまっても構わないんですか?」
「あぁ、身寄りもない爺さんの家だったからな。村で解体費用を出すのも勿体なくて放置していたんだ。マモル君がどうにかできるなら、土地ごと自由に使ってくれて構わんよ。恩人へのささやかなお礼だ」
「ありがとうございます。それなら、何とかなるかもしれません」
俺の言葉に、フィリアはぱぁっと顔を輝かせた。
「本当!? じゃあ、マモルのお家、うちのすぐ隣になるんだね!」
「あぁ、そういうことになるな」
そうして、俺たち四人は連れ立って、村長宅のすぐ隣にあるという空き家へと向かった。
***
「うわぁ……想像以上にボロボロだな」
案内された空き家は、完全に朽ち果てていた。
木造の平屋だが、屋根の半分は崩落し、ツタが絡まり、今にも倒壊しそうな有様だ。広さだけは無駄にあるが、人力で解体して更地にするには何日もかかるだろう。
「どうするの、マモル? 魔法で吹き飛ばすにしても、隣のうちに被害が出ちゃうかも……」
心配そうに見上げるフィリアに、俺は「下がっててくれ」とだけ告げ、空き家の正面に立った。
空中に半透明の電子ボード(スキルウィンドウ)を呼び出し、ターゲットを目の前のボロ屋に合わせる。
『対象構造物を認識:廃屋』
『素材交換(解体)を実行しますか? YES / NO』
「……よし、ビンゴだ」
俺は迷わず『YES』のボタンをタップした。
その瞬間——ボロ屋全体が、淡い青色の光に包み込まれた。
「な、なんだ!?」
「家が光ってるわ!」
ラミラスとシャーラが驚きの声を上げる中、光に包まれたボロ屋は音もなく無数の光の粒子へと分解され、風に舞うように俺のスキルボードの中へと吸い込まれていった。
ほんの十秒足らず。
後には、雑草一本残っていない、綺麗に整地された真っ平らな更地だけが残された。
『素材交換完了。木材・石材・その他をポイントに変換しました』
『獲得ポイント:15,000』
『現在の所持ポイント:15,500』
「(っしゃあっ!! 余裕で一万ポイント超えた!)」
俺は心の中でガッツポーズをした。
ボロボロとはいえ、家一軒分の資材だ。ポイント変換率は相当なものだったらしい。
「す、すごーい! マモル! 一瞬でお家が消えちゃった!」
フィリアがぴょんぴょんと飛び跳ねて喜んでいる。
ラミラスは口をポカンと開け、シャーラも目を丸くしていた。
「驚くのはここからですよ。……それじゃあ、出させてもらいます」
俺は深呼吸をして、スキルボードの『マイホーム召喚(必要ポイント10,000)』の項目を力強くタップした。
ズゴゴゴゴゴゴ……ッ!!
地鳴りのような低い音が響き、広大な更地の中心に、巨大な魔法陣のような幾何学模様が浮かび上がった。
そして、下からせり上がるようにして、『それ』は姿を現した。
木や石でできたポポロ村の風景とは、完全に異質な存在。
グレーと白のモノトーンを基調とした、鉄筋コンクリート(RC)造の堅牢な外壁。
太陽の光を反射する大きなガラス窓。
二台分の車がすっぽり収まる、メタリックなシャッター付きガレージ。
そして、2階部分には広々としたバルコニーテラス。
俺が血の滲むような思いで35年ローンを組み、そして婚約破棄と共に手放すはずだった——夢の新築5LDKのマイホームである。
「お、おおぉ……俺の、俺のマイホーム……っ!」
俺は感極まって、コンクリートの外壁に頬ずりしそうになった。
まさか異世界で、ローンなし(一括ポイント払い)で自分の家を取り戻せる日が来るとは。
俺が一人で感動に打ち震えている後ろで、フィリアたち三人は完全に石化していた。
「な……ななな、なんですか、これぇぇぇぇっ!?」
フィリアの金切り声が響き渡る。
「城……いや、要塞か!? なんだこの、継ぎ目のないツルツルした巨大な石の壁は! こんな魔法建築、ドワーフの技術でも見たことがないぞ!」
元Bランク冒険者のラミラスが、恐怖すら混じった声で叫ぶ。
「まぁ……なんて真四角で、不思議なお家なんでしょう。窓に嵌まっているのは、ものすごく純度の高い水晶かしら……?」
シャーラも、信じられないものを見る目でガラス窓をまじまじと見つめていた。
「マ、マモル……これ、本当にマモルのお家なの? なんか、王様が住むお城みたい……」
フィリアがおずおずと、俺のジャージの裾を引っ張った。
「あぁ。俺のマイホームだ。これから、ここが俺の拠点になる」
誇らしさと、ほんの少しの切なさ(数日しか住めなかった悲しい記憶)を胸に抱きながら、俺は自分の家の玄関ドアの前に立った。
鍵は……と思いながらドアノブに手をかけると、システムが俺をマスターと認識したのか、カチャリという音と共にオートロックが解除された。
「さぁ、入ってくれ。歓迎するよ」
俺はドアを開け、唖然とする異世界人たちを、現代日本技術の結晶——チート・マイホームへと招き入れたのだった。
最後までお読みいただき、本当にありがとうございます!
「ボロ屋を一瞬で解体して更地にするの気持ちいい!」
「異世界のファンタジー村に鉄筋コンクリートの豪邸出現は草w」
「フィリアちゃんたちのリアクションが最高!」
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次回もどうぞお楽しみに!




