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【第2話】転生と合気道、そして純情弓娘との出会い

【第2話】転生と合気道、そして純情弓娘との出会い

「うおおおおおおおおっ!?」

足元が抜け落ちるような浮遊感と、視界をグルグルと回る極彩色の光のトンネルを抜けた先。

俺の体は、ドスッという鈍い音と共に硬い地面の上に放り出された。

「いっ……ててて」

腰をさすりながら立ち上がると、むわっとした青臭い土の匂いが鼻を突いた。

見渡す限り、鬱蒼と茂る木々。どこからともなく聞いたことのない鳥の鳴き声が響いてくる。

どうやら本当に、異世界の森の中に放り込まれてしまったらしい。

「あのポンコツ女神……ファミレスのパフェ食うために、説明も適当に飛ばしやがって」

文句を言いながら、ふと自分の体を見下ろして驚いた。

着ている服はコンビニに行った時のままのジャージ姿だが、全体的に体が軽く、筋肉の張りが違う。

近くにあった大きな水たまりを覗き込んでみると、水面に映っていたのは、残業続きで疲労が顔に出ていた25歳の俺ではなく、大学で合気道に打ち込んでいた頃の、ハリのある20歳くらいの若々しい姿だった。

「少し若返ったか?……まぁ、腰痛が消えてるのはありがたいけど」

現状を整理しよう。

俺はトラックに轢かれて死に、リリスというジャージ姿の見習い女神によって、この『アナスタシア』という世界に転生させられた。

与えられた能力は『言語理解』と、そして……

「えっと、スキルを貰ったんだよな。『スキル』発動!」

声に出して念じてみると、ピロンッという軽快な電子音と共に、目の前の空間に半透明の電子ボードのようなウィンドウが浮かび上がった。

『スキル【マイホーム】起動』

『所持ポイント:0』

『マイホーム召喚:必要ポイント 10,000』

「なるほど、ゲームみたいなUIユーザーインターフェースだな」

ウィンドウの項目をスクロールして確認していく。

どうやら、俺の家は異世界転生のボーナス特典として、システム上に『収納』されているらしい。

しかし、家を現実世界に出現させる(召喚する)ためには『ポイント』というものが必要なようだ。

「ポイントの稼ぎ方は……『善行』『特定アイテムの納品』、そして『素材交換(解体)』か」

善行は人助けとかだろう。素材交換というのは、要するに木材や石材、あるいは既存の建物をスキルで『解体』して、家の材料ポイントに変換するシステムらしい。

「とはいえ、こんな森の中にいきなり5LDKの家を出しても仕方ないな。インフラはどうなるか分からんし、まずは人がいる街か村を探すのが先決だ」

俺は電子ボードを閉じ、合気道の道着に見立ててジャージの紐をしっかりと締め直すと、森の奥へと歩き出した。

***

小一時間ほど歩くと、木々がまばらになり、馬車が通ったようなわだちのある未舗装の街道に出た。

「お、道だ。これに沿って行けば人里に着くはず——」

そう安堵した直後。

街道の先から、甲高い女性の悲鳴と、下品な男たちの笑い声が聞こえてきた。

「や、やめて! お金なら全部渡すから!」

「へへっ、金だけじゃ足りねぇな。上玉じゃねぇか。俺たちと少し遊んでいけよ」

足音を殺して茂みの影から覗き込むと、三人の薄汚れた男たちが、一人の少女を取り囲んでいた。

男たちはボロボロの革鎧を着て、手には錆びた剣や棍棒を持っている。どう見ても野盗か山賊の類だ。

囲まれている少女は、栗色の髪をツインテールに結んだ、信じられないほど可憐な容姿をしていた。

背中には弓を背負っているが、男たちに距離を詰められ、武器を構える暇もないようだ。

「(……善行ポイントを稼ぐチャンス、ってのもあるが。目の前で女の子が襲われてるのを見過ごせるほど、俺は冷血漢じゃない)」

数学教師として、そして合気道部の顧問として、生徒を守るのは当然の義務だ(彼女が生徒かどうかは別として)。

俺は茂みから静かに歩み出た。

「おい、お前ら。その子から離れろ」

突然現れた俺に、男たちは一瞬ギョッとしたが、俺の服装ジャージと手ぶらであるのを見て、すぐにゲラゲラと下劣な笑い声を上げた。

「あぁ? なんだテメェ。武器も持ってねぇ素人が、痛い目見ねぇうちに失せろ!」

「マヌケが! 死にたくなきゃすっこんでろ!」

棍棒を持った大柄な男が、威嚇するように俺に向かって歩み寄ってくる。

少女が青ざめた顔で叫んだ。

「逃げて! 貴方じゃ勝てないわ!」

俺は小さく息を吐き、足幅を広げて重心を落とした。

「心配ない。刃物のない素人相手なら、負ける気はしないんでね」

「舐めやがってェ!」

大柄な男が、怒りに任せて棍棒を大上段から振り下ろしてくる。

だが、俺から見ればその軌道は、まるでスローモーションのように単調だった。力任せで、軸が全くブレている。

「——遅い」

俺は半歩踏み込み、振り下ろされる棍棒の軌道からスッと体をかわした。

同時に、すれ違いざまに男の右手首を掴み、そのまま相手の突進する力を利用して、円を描くように体重を乗せて巻き込む。

合気道の基本技、四方投げ。

「がはっ!?」

男の巨体が宙を舞い、背中からドスッと激しい音を立てて地面に叩きつけられた。

呼吸を奪われ、白目を剥いて気絶する男。

「な、なんだと!?」

「こいつ、魔法も闘気も使わずに……っ!」

残る二人の男が驚愕の声を上げる。

「闘気? よく分からんが、隙だらけだぞ」

俺は倒れた男の手から棍棒を拾い上げると、瞬時に距離を詰め、二人目の男の顎を柄の部分でカチリと打ち抜いた。脳震盪を起こして崩れ落ちる二人目。

三人目の男は、仲間があっという間に倒されたのを見て、恐怖で顔を引き攣らせた。

「ひぃっ! 悪魔だ!」

男は錆びた剣を放り投げ、一目散に森の奥へと逃げ出していった。

「ふぅ。まぁ、こんなもんか。少し体が軽いから、力の加減が難しかったな」

拾った棍棒を放り捨て、俺は震えながらへたり込んでいる少女の元へ駆け寄った。

「怪我はないか? 立てるか?」

俺が手を差し出すと、少女は大きな緑色の瞳を瞬かせ、おずおずとその手を取った。

「あ、ありがとう……ございます。た、助かりました。貴方は……?」

「俺は真守まもるだ。加藤真守」

「マモルさん、ですか? すごく強かった……。魔法も闘気も感じなかったのに、あの大男を指一本触れただけで投げ飛ばすなんて。旅人さん、ですか?」

「えっと……どう言ったらいいのかな。まぁ、遠いところから来たんだ。ちょっと事故に遭って、気がついたらこの森にいて」

『トラックに跳ねられて異世界に来た』なんて言っても信じてもらえないだろうから、適当に誤魔化しておく。

少女は少し不思議そうな顔をしたが、すぐにパァッと花が咲いたような笑顔を見せた。

その笑顔の破壊力に、俺は思わず心臓がドクンと跳ねた。婚約破棄されたばかりの心に、この純情そうな笑顔は染みすぎる。

「私、フィリアと言います! マモルさん、行く当てがないなら、私の村に来ませんか? 助けていただいたお礼をさせてください!」

「村があるのか? それは助かる。案内してもらえるか」

「はいっ! ここからすぐ近くの『ポポロ村』というところです。私の父が村長をしてるんです」

俺はフィリアの後ろを歩きながら、こっそりと空中に『スキル』のウィンドウを呼び出した。

『善行ポイント獲得:盗賊から少女を救出』

『所持ポイント:500』

よし、ちゃんとポイントも入っている。

俺は安堵の息をつきながら、新しい世界での第一歩となる「ポポロ村」へと向かった。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

「主人公、魔法なしでも合気道で強い!」

「フィリアちゃんの純情な笑顔に癒される!」

「はやくマイホームを召喚してほしい!」

と少しでもワクワクしていただけましたら、

ぜひページ下部にある【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援していただけると、作者のテンションが爆上がりします!

また、ブックマーク登録をしておくと、次のお話(ポポロ村の全貌とマイホーム召喚の準備!?)を逃さずチェックできます。

皆様の評価とブクマが、この物語を育てる最高のポイント(肥料)です!

次回もどうぞお楽しみに!

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