【第13話】VSサイクロプス! 合体技と必殺の『フレイム・アロー』
【第13話】VSサイクロプス! 合体技と必殺の『フレイム・アロー』
ズシン、ズシン……!
地響きを立てて森の奥から姿を現したのは、身の丈が五メートルはあろうかという巨大な一つ目の魔物——サイクロプスだった。
「グォォォォォォォォォォッ!!」
ビリビリと空気を震わせる咆哮に、自警団の若者たちが恐怖で顔を引き攣らせ、後ずさる。
ただでさえリザードマンの群れに苦戦しているというのに、あんな規格外の化け物まで相手にしなければならないのか。
サイクロプスは太い丸太のような腕で、根元から引き抜いた巨大な大木を軽々と振り回した。ブンッ! という風切り音だけで、近くにいたリザードマンごと地面が抉り飛ばされる。
「ひぃぃっ!? な、なんて馬鹿力ですか……っ!」
前線でリザードマンのヘイトを集めていた天使・エルミナが、巨大な影に見下ろされて悲鳴を上げた。
サイクロプスの一つ目が、ピタリと、純白と黄金の鎧で目立っているエルミナを捕捉する。
「グガァッ!!」
魔物は凶悪な笑みを浮かべ、両手で持った大木をエルミナの頭上めがけて全力で振り下ろした。
「エルミナ! 下がれ、それじゃ持たない!!」
俺が叫ぶが、生真面目すぎるポンコツ天使は、退くどころか両足を踏ん張り、小型聖盾を真上に掲げてしまった。
「私が下がれば、村に被害が……っ! 聖騎士の誇りにかけて、受け止めますぅぅっ!!」
ドッッッゴォォォォォン!!!
凄まじい衝撃音が響き、エルミナの足元の地面がすり鉢状に陥没した。
「ぐぅぅぅっ……!!」
彼女の展開した黄金の神気障壁が、大木の直撃をギリギリで防いでいる。だが、障壁にはピキピキと亀裂が走り、エルミナの膝が限界を告げるようにガクガクと震えていた。
いくらチート級の防御力を持つ天使族の鎧でも、あの質量と破壊力をまともに受け続ければ、いずれ潰される。
「無茶しやがって……っ! ボルグ団長!!」
「おうよ、マモル先生! 行くぜェッ!!」
俺とボルグは地面を蹴り、エルミナに群がろうとしていたリザードマンたちを蹴散らしながら前線へと躍り出た。
「ふっ!」
俺は三節棍を限界まで伸ばし、遠心力を乗せた一撃でサイクロプスの分厚い足首を強打する。
「痛ぇのをお見舞いしてやるぜェッ!」
同時に、ボルグが大斧をフルスイングして、もう片方の足首に斬りかかった。
「ガァァッ!?」
二方向からの強烈な打撃に、さしもの巨体もバランスを崩し、大木を押し付ける力がフッと緩んだ。
「今だエルミナ、下がれ!!」
俺が三節棍の鎖でエルミナの鎧の端を引っ掛け、強引に後方へと引き寄せる。
「で、でも! 私が盾にならないと……!」
「信じろ! 俺たちで隙を作る。お前は一旦下がって、回復魔法で体勢を立て直せ!」
俺の強い口調に、エルミナは一瞬ハッとした後、コクリと力強く頷いた。
「は、はいっ! すぐに自己ヒールをかけます!」
エルミナが後方へ跳躍し、光の魔法陣で自身の回復を始めるのを確認してから、俺とボルグは再び迫り来るリザードマンたちとサイクロプスの相手へと向き直った。
だが、バランスを崩したとはいえ、サイクロプスの圧倒的な暴力は健在だ。
暴れるように大木を振り回す一撃は、かすっただけでも致命傷になりかねない。
「(……デカすぎる。足元を狙うだけじゃ、決定打にならないぞ)」
俺が額に冷汗を滲ませながら回避に専念していると、後方から冷ややかな声が飛んできた。
「全く、頭の悪い戦い方だ。図体がデカいだけの木偶の坊に、正面から付き合ってどうする」
黒いコートをはためかせた魔族の貴公子、ルーベンスだ。
彼は懐から手品のように魔晶石を取り出すと、それを地面に投げつけながら、やぐらの上で弓を構えているフィリアに向かって顎をしゃくった。
「おい小娘。私が一瞬だけ隙を作る。あの単細胞の『眼』を狙撃しろ」
「は、はい! ……って、私は小娘じゃなくてフィリアです!!」
緊張感の中でいきなり「小娘」と呼ばれ、フィリアがやぐらの上からムッとして言い返した。
「名前などどうでもいい。外すなよ」
ルーベンスは不敵に笑うと、投げた魔晶石に向けて膨大な闇の魔力を流し込んだ。
「我が契約の元に、地の悪魔よ、姿を現せ——『ロックゴーレム』!!」
ゴゴゴゴゴゴッ!!
地面が割れ、周囲の岩や土くれが渦を巻くように集まり、瞬く間にサイクロプスとほぼ同等の巨体を持つ、無骨な岩の巨人が立ち上がった。
「ルゥゥォォォォッ!!」
岩の巨人は咆哮を上げると、サイクロプスめがけて一直線に突進した。
「ガァァッ!?」
サイクロプスが振り下ろした大木を、ロックゴーレムは両腕を交差させてガッチリと受け止める。凄まじい衝撃でゴーレムの岩の腕にヒビが入るが、痛みを感じない土塊の魔物は、そのまま強引に一歩踏み込み、サイクロプスの胴体に巨体ごと組み付いた。
「ギガァッ! グォォォッ!」
サイクロプスが苛立ち、両腕でゴーレムの岩の背中を何度も殴りつけるが、ゴーレムはビクともせずに相手の動きを完全に封じ込めた。
「今だ小娘!!」
魔力を消費して片膝をつきながら、ルーベンスが叫んだ。
「だから! フィリアって言ってるだろ! この馬鹿親父ぃぃーっ!!」
温厚で純情なフィリアが、完全にキレた。
彼女は自分の名前を呼ばれない怒り(と、ルーベンスの偉そうな態度への不満)を、愛用の弓へと一気に注ぎ込んだ。
シュゥゥゥゥッ……!
フィリアの体から立ち上る赤い『闘気』と、矢の先端に灯る『炎魔法』が融合し、矢そのものが小太陽のように激しく輝き始める。
これが、フィリアの持つ最強の必殺技。
「いっけぇぇぇぇっ! 『フレイム・アロー』!!」
ビュゴォォォォォンッ!!!
放たれた矢は、弓から離れた瞬間に音の壁を突破し、まるで一条の火の鳥のような軌跡を描いて空を切り裂いた。
サイクロプスがゴーレムの拘束を振り解こうと顔を上げた、まさにその瞬間。
炎の矢は、サイクロプスの巨大な一つ目のド真ん中を、寸分の狂いもなく貫き通した。
「ギッ……ギャァァァァァァァァァァァァッ!!!」
脳髄まで達する炎の熱と衝撃に、サイクロプスは天を仰いで鼓膜を破るような絶叫を上げた。
大木を手放し、両手で顔を覆いながら悶え苦しむ巨体。
「まだですぅぅっ! トドメは私が!!」
そこに、自己ヒールを完了させ、神気を限界まで高めたエルミナが空へと舞い上がった。
背中の天使の羽が大きく広がり、戦場の空を神々しく照らし出す。
「神よ、邪悪なる者に裁きの光を……!」
エルミナが右手に構えた聖槍に、天から降り注ぐような眩い黄金の光が収束していく。槍そのものが、巨大な光の柱のように輝き出した。
彼女は空高くから、身をよじって苦しむサイクロプスの脳天めがけて、一直線に急降下した。
「『ホーリー・ジャッジメント』!!!」
ドッッッッッッシャァァァァァァァァァァァァァン!!!!!
エルミナの聖槍が、サイクロプスの頭頂部から串刺しにするように深々と突き刺さった。
と同時に、槍から解放された数百万ボルトの神聖な光雷が、魔物の巨体の内側から爆発的に弾け飛ぶ。
黄金の光が戦場全体を包み込み、俺たちは思わず目を閉じて腕で顔を覆った。
やがて光が収まると。
そこには、全身から黒い煙を上げ、完全に炭化して崩れ落ちるサイクロプスの姿があった。
そして、その頭上から軽やかに着地するエルミナ。
「……ふぅ。これで、お腹いっぱいご飯を食べた恩返しができました!」
彼女が聖槍をくるりと回して構えを解くと、残っていたリザードマンの残党たちは、化け物じみた天使の力に完全に戦意を喪失し、武器を放り出して我先にと森の奥へと逃げ出していった。
「「「うおおおおおおおおおおっ!!」」」
「やったぞ! 化け物を倒した!!」
「俺たちの勝ちだァァァッ!!」
静寂の後、自警団の若者たちから、地鳴りのような歓声と怒号が巻き起こった。
ボルグが空に向けて大斧を突き上げ、フィリアがやぐらの上でピョンピョンと飛び跳ねながら、俺に向かってブンブンと手を振っている。
「ははっ、終わったな」
俺は肩で息をしながら、三節棍を折りたたんだ。
魔法も闘気も持たない俺。
名前を間違えられてキレた純情弓娘。
3分間変身で突っ走るポンコツ天使。
そして、口は悪いが的確なサポートをするツンデレ魔族。
種族も性格もバラバラな俺たちだが、その連携は、ポポロ村の歴史に残るほどの完璧な防衛戦を成し遂げたのだった。
最後までお読みいただき、本当にありがとうございます!
「ルーベンス様の『馬鹿親父ぃ!』への流れが最高w」
「フィリアちゃんの闘気+魔法の必殺技、めっちゃカッコいい!」
「エルミナのトドメの神聖魔法、さすが聖騎士の威力!」
と少しでも胸を熱くしていただけましたら、
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皆様の評価とブクマが、このポンコツパーティーの最強の絆です!
次回もどうぞお楽しみに!




