【第12話】激闘の防衛ライン! 三節棍の乱舞と、魔族貴公子の圧倒的加勢
【第12話】激闘の防衛ライン! 三節棍の乱舞と、魔族貴公子の圧倒的加勢
ポポロ村の入り口に設けられた防衛ラインは、すでに激しい戦闘の真っ只中だった。
「撃て! 撃てェッ! 奴らを村の畑に一歩も入れるな!」
自警団の団長・ボルグの怒号が響き渡る。
ドンガン地下帝国から仕入れた『魔導ライフル』が火を噴き、魔力で形成された光の弾丸が次々と撃ち出されていく。
しかし、押し寄せてくるリザードマンの群れは想像以上に厄介だった。彼らは強靭な緑色の鱗で覆われた巨体を持ち、その鱗は並の魔導弾を弾き返すほどの硬度を誇っている。さらに、手には粗末だが分厚い鉄の剣や槍を握っており、ライフルの弾幕を掻き分けながら、じりじりと前線へと距離を詰めてきていた。
「くそっ、鱗が硬てぇ! 前衛、近接戦に備えろ!」
ボルグがライフルを背中に回し、愛用の大斧を構え直したその時。
「——待たせたな、ボルグ!」
「先生!!」
俺たち四人——俺、フィリア、エルミナ、そしてなぜかついて来た魔族のルーベンス——が、防衛ラインに到着した。
「状況は!?」
俺がミスリルの三節棍を構えながら尋ねると、ボルグが斧で飛んできた槍を弾き落としながら叫んだ。
「見ての通りだ! まだ第一陣だが、数が多い上に鱗が硬くてライフルが通りにくい! 近接戦に持ち込まれると厄介だぜ!」
「分かった。前衛の負担は俺たちが引き受ける。フィリア、後方から援護を頼む!」
「うんっ! 任せて、マモル!」
フィリアはコクリと頷くと、素早く後方のやぐらに飛び乗った。
彼女の持つ固有スキル【鷹の目】が発動し、その緑色の瞳がスナイパーのように鋭く細められる。
ヒュンッ!
放たれた矢は正確無比な軌道を描き、前線に躍り出ようとしていたリザードマンの『目』という数少ない急所を完璧に射抜いた。
「ギャァァァッ!?」
「いいぞ、フィリア! その調子だ!」
俺も地を蹴り、前線へと飛び出した。
「シャァァァッ!!」
威嚇の声を上げながら、俺の正面に二体のリザードマンが迫る。大上段から振り下ろされる錆びた大剣。まともに受ければ、人間など一刀両断にされるだろう。
だが、合気道の極意は『受けない』ことにある。
「ふっ!」
俺は踏み込みと同時に半身になり、大剣の軌道をギリギリで躱す。そのまま右手で持った三節棍の先端を振るい、リザードマンの剣の柄に鎖を巻き付けた。
「ギッ!?」
武器を絡め取られて驚くリザードマン。俺はその引き戻そうとする力に逆らわず、自らの体重を乗せてグンと引き寄せる。体勢を崩したトカゲの無防備な顎下へ向け、ミスリル製の重い一撃を下からカチ上げた。
ゴキッ! という鈍い音と共に、一体目のリザードマンが白目を剥いて吹き飛ぶ。
すかさず、横から槍を突き出してきた二体目に対し、俺は三節棍の連結を活かしてヌンチャクのように高速回転させ、強烈な遠心力を乗せた一撃で相手の膝の関節を粉砕した。
「す、すげぇ……! あの硬い鱗の上から、打撃で骨を砕きやがった!」
後方の自警団員たちがどよめく。ガンツが鍛え上げた極上ミスリルの重量と硬度は、俺の武術と相性が抜群だった。
しかし、敵はまだまだ押し寄せてくる。
「マモル様! 私にお任せください! 頂いたご飯とスープの御恩、今こそお返しいたしますぅぅっ!」
背後から、純白と黄金の聖騎士鎧に身を包んだエルミナが飛び出してきた。3分間もかけて変身しただけあって、その神気は圧倒的だった。
「はぁぁぁっ! 『ホーリー・チャージ』!!」
エルミナは左腕の小型聖盾を前面に構えると、盾から黄金の光の障壁を展開し、そのまま音速に迫るスピードでリザードマンの密集地帯へと突撃した。
ドッゴォォォォン!!
まるでボウリングのピンのように、十数体のリザードマンが黄金の光に弾き飛ばされ、宙を舞う。
「さぁ、次から次へとかかってきなさい! このエルミナが一歩も通しません!」
エルミナは敵のど真ん中で聖槍を振るい、強烈な打撃と神聖な光を放ちながら奮迅する。彼女の纏う聖なる鎧は、リザードマンの粗末な武器など傷一つつけさせない。
まさに、難攻不落の『タンク(盾役)』だ。
だが……。
「(……いくらなんでも、一人で突っ走りすぎだ)」
俺は眉をひそめた。エルミナは敵のヘイト(敵意)を一身に集めているが、そのせいで四方八方から完全に包囲されつつあった。いくら鎧が頑丈でも、あれでは体力が持たない。
案の定、エルミナの死角となる背後から、ひときわ巨大なリザードマンが戦斧を振り上げ、彼女に襲いかかろうとしていた。
「エルミナ、後ろだ!」
俺が叫び、助けに入ろうと地を蹴った瞬間。
「——騒々しい。美学に欠ける戦い方だな、天使族」
冷たく、底知れぬ威圧感を伴った声が戦場に響き渡った。
次の瞬間、エルミナの背後に迫っていた巨大リザードマンの足元の『影』が、突如として黒い沼のように広がり、何本もの漆黒の触手となって這い出した。
「ギョェェェッ!?」
触手はリザードマンの手足を拘束し、その場に縫い付ける。
「な、何ですかこれ!?」
エルミナが驚いて振り返ると、少し離れた安全圏で黒いコートをはためかせる魔族の貴公子、ルーベンスが、右手に禍々しい魔力の鞭を具現化させて立っていた。
「チッ。あの天使、頭の中までお花畑か。いくら頑丈でも、あんな無策な突撃をすればいずれ陣形が崩れるだろうが」
ルーベンスは忌々しそうに舌打ちをすると、右手の魔力鞭を軽く一閃させた。
ヒュバッ!!
音もなく振るわれた闇の鞭は、影に拘束されていた巨大リザードマンの硬い鱗をまるで紙切れのように両断し、周囲に群がっていた数体の敵ごと真っ二つに切り裂いた。
「ひぃっ!? ま、魔族の闇魔法……恐ろしいですぅ!」
助けられたはずのエルミナが、ルーベンスの圧倒的な力を見て逆にガクガクと震え出す。
「馬鹿者、震えている暇があるなら槍を振れ。……おい、そこのマモルと言ったか」
ルーベンスが、視線だけをこちらに向けて声をかけてきた。
「なんだ?」
「貴様らの戦いぶり、悪くはないが……どうやらこれで終わりというわけにはいかないらしいぞ。……来るぞ」
ルーベンスが視線を向けた先。
森の奥から、ズシン、ズシンという、これまでのリザードマンとは比べ物にならない重い足音が響き始めた。
木々がなぎ倒され、土煙が上がる。
「な……なんだ、アレは……!?」
ボルグが絶望に染まった声を漏らした。
現れたのは、リザードマンたちの二倍以上の巨体を誇り、額に巨大な一つ目を持つ凶悪な魔物——『サイクロプス』だった。手には、根元から引き抜かれた巨大な大木を棍棒代わりに握っている。
「第一陣が終わってないってのに、あんな化け物まで投入してきやがったのか……!」
俺は手に持つミスリルの三節棍を強く握り直した。
戦場を覆う空気が、一気に張り詰める。
緩衝地帯ポポロ村の防衛戦は、ここからが本当の正念場だった。
最後までお読みいただき、本当にありがとうございます!
「マモルの合気道×ミスリル三節棍のコンボが強すぎる!」
「エルミナちゃん、さすが聖騎士の防御力! でも突っ走りすぎw」
「ルーベンス様、文句言いながらも的確に助けてくれるのイケメン!」
と少しでも胸を熱くしていただけましたら、
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次回もどうぞお楽しみに!




