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ROAD OF FRONTIER〜ジャンプで罠を踏むバカたちと星空の約束〜  作者: 春野凪
星空の約束

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26/27

果報は寝て待て

「もうアンタとはやっていけないわ!」

「それはこっちのセリフだ!」

「もう……離婚よ!」



俺は知っていた。



「大輔、お母さんとお父さん、どっちについて行きたい?」



どれだけ嫌だと言っても。どれだけ迷って悩んでも。結果は変わらないことを。



「じゃあ、私来週この子連れて実家帰るから。離婚届よろしく」



俺は知っていた。



「じゃあ三日後の夜、一時にここで集合な!母さんたちには内緒だぞ!」

「うん!約束だからね!」



三日後には、俺はこの街を出ていることを。

でも、信じたくなくて。また、三日後も同じように、家族揃ってこの街に居られると思いたくて。その日の約束が果たされることはないと、知っていたのに。



「忘れなさい。お父さんのことも、あの街のことも」



あの時、誰にも言えなかった。ごめんも、ありがとうも。嫌だという否定の言葉さえ、何一つ。

だから、迷い悩むのをやめた。



「迷っても変わらねーだろ」



だから、忘れようとした。



「忘れりゃいいのに、お前も俺も」



だから。



「……あの日、見逃したものを、取り戻せる気がして」


「僕の、遠い約束なんだ」


「……大ちゃん……約束……星……」



だから、言えなかった。

お前の思い出にある約束が、俺の勝手な理由で果たされなかったことを。何一つ悪くないお前を、俺の勝手な理由で縛り付けていることを。

だから、俺は黙ったまま、遠い約束にお前を連れていくと決めた。知らぬまま、果たしたいと願ってしまった。



――約束は、まだ終わっていない。




「3……2……1……」



ゴーン ゴーン



ギルドの時計から、0時を告げる鐘が鳴った。



「お疲れ様でした〜」

「あー、疲れた」

「やっと終わりか」

「全員なんとか五十位以内キープできましたね」



ハロウィンイベントが終わり、ユズたちはいつものギルドに集まっていた。

運営から、一斉に通知が入る。



「報酬入りましたよ!」

「即時報酬有難い……」



ドルが、空を拝み始めた。そんなドルを無視して、ユズたちはステータスを確認する。



「上位者共通報酬は……、称号【ハロウィンの支配者】?」

「……HP25%以下で全ステータス上昇。被ダメ軽減に回避率アップ……」

「瀕死前提やんけ」

「まぁ、でも強い効果ですね。特にメェさんと相性が良さそうです」



さらに画面をスクロールしていく。



「個別報酬も入ってますね」

「私とポコちゃん、攻撃力がすごく上がってます〜!」

「えっ?!ポコちゃんも?!武器なのに?!なんで?!」

「紛うことなき最強さんじゃねーか」

「何しとるんや運営!手がつけられんぞ!」

「これ、対人戦どうなるんや……」

「やめてください、考えたくもない」



各々がステータスを確認していく。個別報酬は、統計上、イベント時の行動で内容が変わると言われている。

最初にこんどーが、口を開いた。



「……俺もSTRに強化入ってるな」

「それ以上、攻撃力上げてどないすんねん」

「力isパワー、だろ」

「もうええねん、それ!……それで、内容は?」

「攻撃力15%アップ。攻撃範囲の拡大にノックバック強化、だとよ」

「……これ以上、罪を重ねるなよ」

「……自首してください」

「俺を犯罪者扱いするな」



今後の戦闘に不安を覚えるユズとドル。こんどーに攻撃範囲の拡大なんて、FFで瀕死になる未来が見える。

何故獣に知恵ではなく武器を渡すのか?ユズとドルは、運営に憤りさえ感じていた。

そこに、東山が飛んできた。



【ピヨッ】



机の上に乗ってひと鳴きすると、ドルの方をじっと見つめる。意図が分からず数秒見つめあった後、まさかと思いドルがステータス画面を確認する。



「……お前の報酬も入っとるな」

「東山にも?!?!」

「アイテムだけやけどな」

「称号は、上位者報酬だからな」



ドルの顔が不満げに歪む。



「……俺のステータスに反映されとるねんけど。……俺がテイムしたことになっとるんか?」

「宝くじ先輩が飼い主です〜」

「なんで俺やねん」



ドルが東山のステータスを開く。



「【ハロウィンの王冠】、初撃自動カウンター。……お前、えぐいやん」

「ほぼ初見殺しだな」

「対人でこれ来たら泣くぞ」

「他にはないんですか?」

「……あるで。攻撃力15%アップ。移動速度2倍。飛距離2倍。……だから、ひよこが飛ぶなや」


【ピヨッ】



ドルがステータスをいじると、東山の頭に小さな王冠が乗る。東山が飛び上がり、いつもより早い速度で、ユズたちの頭上を飛び回る。



「実演です〜」

「要らんねん」

「ドルさんの個別報酬は何だったんですか?」

「そういえば、俺のは……」



ドルが言葉を止める。



「ドルさん?」

「……当たりや」

「なにがですか〜?」

「【アルテミスの矢】。……無限に矢が供給されるらしい。しかも攻撃力15%アップ……。」

「は?!」

「それはすげぇな」

「……弾切れの無いSSR武器アーチャー。俺が……最強や」



アイテムボックスから、アルテミスの矢を取り出すと、嬉しそうにニヤニヤと顔を緩ませるドル。

そんなドルを見て、こんどーは、つまらなさそうに手を差し出した。



「見せてみろ」

「いやや、絶対折る」

「……折らねぇよ」

「なんや、今の間は!!絶対貸さんぞ!」

「いいから、貸してみろ!」

「いやや!」



ドルとこんどーが鬼ごっこを始める。ひつじは東山の頭を撫でている。いつも通りの光景に、ここ数日の喧騒が嘘のようだ。

ユズがため息をつくと、隣に座っていたひつじが話しかけてきた。



「そういえば、ユズさんのはどうなんですか〜?」

「え?」



ユズが自分の画面を見る。



「……【戦術共有】。半径5m以内の味方のスキル発動速度・精度上昇、回避率5%アップ。術者は範囲内の敵の詠唱・行動を可視化」

「当たりやん」

「地味に有能だな」

「地味言うな。めちゃくちゃ強いでしょうが」

「団体戦なら、ユズさん無しは考えられないです〜」




イベントが終わった。

ユズが天井を見上げると、東山がくるくると飛んでいる。頭痛のする光景に、目を閉じて物思いにふける。



「……とんでもない戦力になったな」


【ピヨッ】



東山がユズの頭に、止まった。




“果報は寝て待て”という言葉がある。


努力の結果は、焦っても掴めない。


ただ、待つしかない。



だが――



待っていた先にあったのは、少しばかりやりすぎな“果報”だった。

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