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ROAD OF FRONTIER〜ジャンプで罠を踏むバカたちと星空の約束〜  作者: 春野凪
星空の約束

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22/27

身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ

【運営からのお知らせ】

高難易度イベント[Halloween The Party]を開催。(Aランク以上推奨)

開催期間:10月21日0:00~10月31日23:59迄

開催場所:水上都市アヴェルチェ


イベント中のモンスター出現率UP。

ドロップ率2倍。

22:00~5:00迄モンスター強化。(ドロップ率3.5倍)




10月20日の夜、ユズたちは水上都市アヴェルチェの周りで、日付が変わるのを待っていた。アヴェルチェの周りには、ユズたち以外にも多くのプレイヤーが集まっていた。

お互いの目線は、牽制し合っている。誰もが、最初に動く“誰か”を待っていた。



――水上都市 アヴェルチェ


小さな島が密集してできており、満潮時には膝丈まで水位が上がる。島は橋で繋がっているが、主な移動手段は船だ。水上には似通った建物が並び、入り組んだ構造になっており、マッピングが必須のエリアだ。



「……みんな、ピリピリしてますね」

「ハロウィンイベントは毎年報酬がエグいからなぁ」

「しかも今年の報酬は、上位五十名までに減ったからな」

「……揉めるで、これは」


【ピッピヨ】



ドルのポケットから東山が顔を出した。そのまま飛んで、ドルの肩に乗る。



「東山も連れてきたんですね」

「コイツが勝手に着いてきたんや」

「かわいいです〜」



ひつじが東山の頬を優しくつつく。東山も嫌がることなく、されるがままだ。ドルは少し不機嫌そうに東山を見ると、静かに口を開いた。



「……お前、危ないで。帰れ」


【ピッ】



ドルの言葉に、東山は顔を背ける。



「……完全に人語を理解してますね」

「賢いですね〜。いい子いい子〜」



ひつじが、東山の喉元を撫でる。東山は、気持ちよさそうに目を細めている。その様子を見て、諦めたようにドルがため息をついた。


時計は23時59分を示す。

0時まで、あと数十秒。ゆっくりと秒針が時を刻む。時計の針が重なる直前。東山が、ぴょんとドルの肩から飛び出した。その瞬間。全ての時計の針が、重なった。



カーン カーン カーン



0:00


アヴェルチェ全土に、鐘の音が響き渡る。



――ヒュンッ



風を裂く音が聞こえた。鐘の音と同時に、誰かの放った矢が、東山のすぐ横をかすめた。プレイヤーたちの視線が、矢の軌道をなぞる。



「東山!」



ユズの叫ぶ声が、静かな世界に反響する。そして、誰かが呟いた。



「……今、撃ったの誰だ」



ほんの一瞬、誰も動かなかった。最後の鐘が鳴り止んだ時、一斉に動き出した。ガチャガチャと武器を構える音が響き、お互いが押し合いを始める。



「どけ!」

「俺が先だ!」

「うわぁぁぁ?!」

「リーダー!」

「誰だ?!」

「てめー、やりやがったな?!」

「お、俺じゃねぇ!」



そこかしこで乱闘が始まった。悲鳴が水上に響き、早くも退場する者が出た。



――ハロウィンイベント


モンスターの討伐や島民の依頼をこなし、飴を集めるイベントだ。集めた飴の総数によってランキングが変わる。

飴を多く集めようにも、時間がかかる。社会人や学生が上位を目指すには、時間が足りない。この状況で、最も効率のいい方法。

それは。


――ライバルそのものを、減らすことだ。



上位者報酬とは別に、働きに応じて貰える個別報酬が毎年強く、イベント時のPvPは年々激化している。



「東山、戻れ!」



乱闘の中、ドルの声が怒声に掻き消される。東山は今もなお、プレイヤーたちの頭上をふわふわと飛んでいる。



「どけ、俺が行く」

「ゴリッ!」



こんどーが前に出る。周りは乱戦状態、仲間内でも関係なく小競り合いが起こっている。



「お前らは後ろにいろ」

「……なにをするつもりですか?」

「まさか、死せるいかずち撃つつもりやないやろな?!」

「それじゃあ東山も俺らも死んじまうだろ」

「……東山に当てんなよ」

「任せろ」



こんどーの目が、飛んでいる東山を捉える。ぎゅっと握りしめられた斧が、電気を纏う。



「【雷帝の扇】」



詠唱と共に斧が地面に振り下ろされた。その瞬間、前方の流れが、一瞬止まる。



――道が、開いた。



こんどーより前に、扇状に電気が走り、地に足を付けていた者から弾かれていく。防御力やHPの低い者は倒れ、そうでなくても一時的な麻痺状態となっていた。



「よし、行くぞ」



斧を肩に担ぐと、そのまま歩き始めた。ユズたちが、その後ろをついていく。



「わ〜、ゴリさんすごいです〜!」

「……頭使えたんか」

「……僕も驚いてます」

「お前らは、俺をなんだと思ってるんだ」

「脳筋」

「ゴリラ」



四人は空間を縫うように走り抜け、東山に近づく。横から攻撃を仕掛けてくる相手は、ユズが切り伏せていく。



「東山!」



ドルの声に、東山が振り向く。



【ピピッ】



ひと鳴きすると、東山はドルの肩へと戻ってきた。



「東山、危ないよ」

「もう、飛んでっちゃダメですよ〜」



ユズたちが何を言っても、東山は首をクリクリと回すだけ。居心地が悪そうに、肩の上で何度も足踏みをしていた。肩の上で揺れている東山の姿を見て、ドルが口元を歪める。



「……おい、東山」


【ピッ?】



ドルはいつも被っている緑のとんがり帽子を脱ぐと、てっぺんを潰して東山に差し出した。



「ここにおれ」


【ピヨ】



東山が帽子のてっぺんに納まる。潰れたそれは、巣のように安定しており、東山も満足そうに足を畳んでいる。ドルは少し不服そうな顔をしながら、帽子をかぶり直した。



「さ、行くで」

「……何だかんだ言って、可愛がってますね」

「……死んだら、寝覚め悪いやろ」

「はいはい」

「なんやねん」



こんどー、ひつじ、ユズ、ドルの順で並んで歩く。こんどーが前の敵をなぎ払い、溢れた敵をユズが、死角の敵はドルが排除する。ひつじはその間、回復サポートに努める。

ゆっくりと、しかし着実に前に進んでいく。こんどーの足取りに、迷いは無い。



――最短で、最も“通れる”道を選んでいる。



三人は知っていた。普段の無茶振りとは裏腹に、こんどーの背中が、いざとなれば頼りになることを。そして、誰も知らない。ユズが、三人が居ればそれだけでこんどーが強く立っていられることを。

四人は、アヴェルチェの奥へと足を踏み入れた。



“身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ”という言葉がある。


危険を恐れず踏み出すことで、道が開けるという意味だ。


――あの男は、最初から迷っていなかった。




「……うん、やっぱり強いね」

「思ったよりやるさー」



アヴェルチェに向かうユズたちを、ハルトたちが見ていた。彼らの周りには、かなりの数のアイテムが落ちている。ハルトたち四人の周りに立っている人間はいなかった。

ナルがハルトの傍まで駆け寄ってくる。



「ハルト様、お怪我はありませんか」

「ナル、ありがとう。怪我は無いよ」



言葉通り、ハルトに怪我は無い。甲冑には、敵の返り血だけが着いていた。

もう一度、ユズたちの方を見てハルトは呟いた。



「星杖 ルミナス……。彼らが持つに相応しいか、それとも……」

「いいえ、ハルト。あれは、わたくしが持つに相応しいですわ」

「ははっ、そうだねユリ。……星空の街に先に行くのは、俺たちだ」



ハルトは水面に映る空を見た。そこにあるのは、誰かに踏み荒らされた星空だ。



「……今度こそ、誰にも汚されてない宙を」

「まかちょーけー《任せとけ》。ハルトが望むなら、わんらは、盗ぬんだけさー」



ハルトは墨汁をチラリと見た。



「盗みはダメだよ、墨汁さん。正面から、倒して奪えばいい。それがこのゲームのルール、そうだろう?」

「ははっ、流石ハルトさー。あんしやいぇー《そういう所が》、しちゅん《好き》」

「流石です!ハルト様!」



ハルトは楽しそうに口角を上げて、前を見据えた。ハルトが剣を振るう度、モーゼのように道が開いていく。



「さぁ、行こうか」

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