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ROAD OF FRONTIER〜ジャンプで罠を踏むバカたちと星空の約束〜  作者: 春野凪
星空の約束

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19/27

将を見て兵を知る

「君たちが噂のギルドだね」



ユズたちが町を歩いていると、四人組のパーティに声をかけられた。ユズたちは立ち止まり、声の主に向き直る。



「えっと……どちら様ですか?」

「イケメンです〜」

「俺のがイケメンや」

「それはどうかな」

「あ?やんのか、ゴリ」



ひつじにイケメンと言われるだけあって、爽やかな好青年といった面持ちだ。綺麗に磨かれた甲冑を着こなし、赤いマントが映えている。腰には二本の剣を携えていた。

青年の背後には、絹のように綺麗な長い黒髪を持つ女魔導士と、眼鏡をかけた聖騎士風の大柄な男。そして、黒いフードを被った小柄な男が控えていた。



「草原エリアを壊滅させ、巨大生物を殲滅したって聞いたよ」

「星杖ルミナスをお持ちなんですって?」

「全部、君たちだろう?」



ユズは目を逸らしたが、こんどーたちは気にした様子はない。



「人違いです」

「不可抗力だ」

「俺は知らん」

「ポコちゃんです〜」



異口異音。さらに他責思考。統率なんて欠片も取れていない。



「……思ったよりもバラバラですわね」



女が呆れたような目でユズたちを見ている。



「……なるほど」



青年は小さく笑うと、こんどーへと近寄る。



「やっぱり君たちで間違いないみたいだね」



青年は、爽やかな笑みを浮かべながら、こんどーに手を差し出した。



「僕の名前はハルト。よろしく」



こんどーは、差し出された手を見下ろしたまま、握ろうとしない。



「……なんで俺に?」

「おや?君がリーダーなんじゃないのかい?」

「そんな訳あるかい」

「ありえません〜」

「……そうなのか」



こんどーの後ろから野次が飛ぶ。それを聞いたハルトは、少し残念そうに眉を下げるとユズの方を見た。



「じゃあ誰がリーダーなんだ?君かい?」

「え、いや……僕は……」



ハルトの質問に口ごもるユズ。そんなユズの前を庇うようにドルが出た。



「俺や」

「違います」



無慈悲にもユズに即座に否定される。ドルは若干ショックを受けている。その後ろで、ひつじが周りをキョロキョロと見回しはじめた。



「……えっ!じゃあ私ですか〜?!」

「もっと無い」

「ありえん」

「全員違います」



ひつじの惚けた回答に、四人は揉め始めた。あまりの統率のなさに、ハルトは口を挟めずにいた。そんなハルトに、黒フードの小柄な男が近づく。



「ハルト様。こいつら……統率が取れていません」

「見れば分かるよ、ナル」



女が首を振って小さくため息を吐きながら、ユズ、ひつじ、ドル、こんどーの順番に指を指していく。



「これで、噂の実力ですの……?弱そう。バカそう。胡散臭そう。……筋肉のある殿方は……素敵ですわね」



女がこんどーを見てポッと頬を染める。



「見る目あるな、アイツ」

「胡散臭いってもしかして俺か?!……と言うか、よりにもよってゴリ?!見る目無さすぎやろ!」

「弱そうって言われた……」

「バカそうって、まさか私ですか〜?!」



喚く四人を横目に、ハルトが諌めるように口を開いた。



「ユリ、実力は本物だ。ただ……」



ハルトが目を細めて、四人を見る。まるで、品定めをするかのように。



「……組織としてはお粗末だな」



大柄の男が笑う。



「負ける気がしないさー」

「墨汁さん。……ああ、そうだね」



ハルトは小さく頷くと、もう一度四人を見た。



「……だが、面白い」



一瞬だけ、口元を緩める。ハルトは、ゆっくりとユズたち四人の顔を順に見た。



「君たちは、――見込みがある」



ユズたちは、首を傾げる。ハルトは、一歩ユズに近づくと、耳元で囁くように言った。



「僕も《・・》、星空の街を探してるんだ」



ユズの動きが一瞬止まる。何を言われているか理解できなかった。

ハルトは腰に挿していた剣のうち一本を、軽く鞘から持ち上げた。それは、一瞬だった。それでも、その剣は目が眩むほどの光を纏っていた。



「綺麗だろう。……まるで、月みたいに」



その言葉を聞いたユズとドルの肩が一瞬揺れる。ハルトはフッと小さく笑う。



「第一試験は終わったつもりだよ」

「第一試験……?」



ハルトの言葉に、ユズは首を傾げる。



「君」



ハルトはひつじへと話しかける。



「私ですか〜?」

「そう。もしよければ、俺のパーティに入らないかい」

「えっ?」

「はぁ?!なに言うとるねん!」



ひつじの前に、目を釣り上げたドルが割り込む。



「どいてくれないか。俺は彼女に言ってるんだ」

「俺ら無視して勧誘か。えらい無粋なヤツやな」

「彼女の意思に君たちは関係ないだろう」

「そもそもお前らにメェちゃんが扱えるわけないやろ」

「ははっ、まるで厄介者みたいに言うんだね」

「あ゛ぁ?!」



ひつじの扱いにくさなど、同じパーティでないと理解できないだろう。ただ、そこに悪意はなく、純然たる事実を発しただけのドル。それをくさす様に笑うハルト。二人はしばし睨み合う。



「わ、私!」



ひつじが声をあげると、全員がひつじの方を見た。ひつじは、不安そうに瞳を揺らしながら、パーティメンバーを見た後、少しだけ目を伏せた。



「私は、ユズさんたちと遊ぶのが好きなんです……」

「メェさん……」

「だから……」



――捨てないで。



続きを口に出せないまま、ギュッと杖を握る。それを見たユズが間に入る。



「行く気はないみたいですよ。……不躾な勧誘はやめてください」



そうハルトに言い放つと、ユズは振り返ってひうじに向かって微笑んで見せた。



「大丈夫ですよ。僕らもメェさんと遊ぶのが好きなんです」

「……ユズさん」



ひつじの瞳がまだ揺れている。ただ、さっきまであった不安の色は薄れていた。

二人の様子を見ていたハルトが、短くため息を吐いて、肩を上げる。



「……そうかい。残念だよ」



そう言うと、ハルトは踵を返して仲間の方へと歩いていく。仲間の元まで行くと、ピタリと止まり、顔だけをユズたちに向けて言った。



「次は……貰うよ」



ハルトの声が一段、低くなった。その目は、ひつじの手の中にある、ルミナスを見ていた。すぐに、何も無かったかのように目を逸らし、再び歩き始めた。赤いマントを靡かせながら去って行く後ろ姿が、ほんの少しだけ、足を引きずっているように見えた。

ハルトの隣には、ユリと墨汁が支えるように寄り添う。ナルが、ハルトの背中を守るように音もなく立っていた。ナルの黒いフードには、星のマークが記されていた。

四人はわずかに目を見開く。“第一試験”その意味を、ユズたちは理解した。すでに遠くにいるハルトたちを、睨みつけるように見ていた。



“将を見て兵を知る”という言葉がある。


優秀なリーダーがいれば、組織は個として動く。


だが。


このパーティにリーダーは存在しない。


それでも、問題はない。


――だからこそ厄介だと、ハルトたちは知らない。

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