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ROAD OF FRONTIER〜ジャンプで罠を踏むバカたちと星空の約束〜  作者: 春野凪
星空の約束

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14/27

郷に入っては郷に従え

土曜日の昼頃、ユズとこんどー、ひつじがギルドの机を囲んで話していた。すると、扉が勢い良く開き、笑顔のドルが入ってきた。ドルは、一枚の紙を持って、三人の方に歩み寄る。



「宝くじ先輩ご機嫌ですね〜」

「嫌な予感がしますけどね……」

「酷いこと言わんといてやー」

「普段の行いだろ」

「ほんでな、コレ見てみ」



何を言われようと笑みを崩さないドルは、手に持っていた紙を机の上に置いた。その紙は、日焼けして茶色に変色している。インクも薄れ、長らく誰の手にも渡っていなかったことが伺えた。



「護衛クエスト、四人パーティ限定」

「簡単なお仕事……」

「報酬も高額です〜」



見るからに怪しい謳い文句に、ユズの顔が引き攣る。こんどーとひつじさえも眉をひそめている。



「ええやろ?!」

「詐欺だろ」

「違う。当たりが見えとる宝くじや」

「現実見ろ!」



ユズたちに提案を突っぱねられたドルは、ショックを受けた表情でユズの肩を掴んで揺らす。



「オマケもあるって書いとるんやで?!受けへん理由がどこにあんねん!」

「だから、それが詐欺だって言ってんでしょうが!」

「なんでぇーなー!行こぉーよぉー!」

「小学生か!ええい、離せ!」



ドルがズルズルと座り込みながら、ユズの左足にまとわりつく。ユズが足を振って引き離そうとするが、全く離れる気配がない。

結局はドルの熱い説得の末、しぶしぶ護衛クエストを受けることになった。




─────────────────




ユズたちは、クエストに書かれていた場所へと向かう。目的地に近付くにつれ、ロココ調の大きな建物が見えてきた。それは目的の場所、ヒューイット邸であった。屋敷の周りには、金で縁どられた黒の柵が並んでおり、高級感を放っている。

ユズが呼び鈴を鳴らすと、すぐに執事風の年老いた男が屋敷の奥から出てきた。



「お待ちしておりました、冒険者様方」



執事は綺麗な所作で深々と頭を下げた。歳と共に銀色に染まったであろう髪が、太陽の光を反射していた。目の端の皺や首筋が、執事の年輪を感じさせる。

それを見たこんどーが、感心したように言葉を漏らす。



「……最近のNPCは精巧だな」

「本当に。……見分けがつかないですね」



執事はユズたちを一瞥すると、背を向けて歩き始めた。



「こちらへどうぞ」



ユズたちは、促されるまま敷地に足を踏み入れる。門から屋敷まで歩いて二分はかかる。屋敷に招かれ、長い廊下を歩く。廊下の突き当たりにあるアーチ状の扉をくぐると、そこには庭園が広がっていた。


庭園は薔薇園になっており、真っ赤な花弁が瑞々しく咲き誇る。丁寧に世話をされているのが分かる。薔薇園の真ん中には噴水があり、少し拓けている。その拓けた場所に、一台の立派な馬車が止まっていた。

執事が馬車の前まで行くと、足を止めてユズたちを振り返った。



「早速ですが、あなた方にはある御方の護衛をお願いしたいのです」



それだけ言うと、執事は馬車の扉をノックした。



「お嬢様、お連れしました」



ギィッと木製の扉を軋ませながら、執事が扉を開く。そこには、薄ピンク色のドレスを着た、中学生くらいの可愛らしい女の子が座っていた。ピンと伸びた背筋が美しい。

彼女は立ち上がると、執事の手を取り、ゆっくりと馬車から降りてくる。



「ご紹介いたします。こちらが、ヒューイット家のご息女。メルイン・ヒューイットお嬢様でございます。お嬢様、こちらが冒険者の皆様です」

「……本日は、よろしくお願いいたします」



このくらいの年頃の少女特有の少し高い声。しかし、どこか品格を感じさせる声が、ユズたちの耳を震わせた。

スっと執事がメルインの前に出る。よく見ると、メルインの表情は硬く、緊張している様だ。



「お嬢様は三日後に開かれる、王都アルカリオスの舞踏会に参加されます」

「舞踏会って、美味いもんありそうだな」

「王都?!王族もおるんか?!俺も参加できるんか?!」

「私も王子様に会いたいです〜!」

「ちょっ、止めてくださいよ!恥ずかしい」



話の途中で騒ぎ出した四人に、執事がわざとらしく咳払いをする。



「ここ最近、王都への道では魔物の被害が増えていると聞きます。さらには盗賊も出るとか……」



執事の背後で、メルインが俯く。お腹の前で品良く揃えられていた彼女の手が、僅かに震えている。



「どうか、お嬢様を無事に送り届けて頂けるよう、お願い申し上げます」

「分かりました、任せてください」



ユズの言葉に、二人はほっと息を吐いた。メルインの肩も少し下がった。


それもつかの間。



「報酬は前払いか?敵の数で変動あるんか?」

「おやつは持参か?いくらか持たせてくれ」

「私も馬車に乗ってみたいです〜」



三人のあまりの自由さに、メルインと執事は困惑していた。



「あの……、本当に任せてもよろしいのでしょうか?」

「も、もちろんです!すみません、今のは忘れてください!」

「……承知致しました。お嬢様をよろしくお願いいたします」

「はい!任せてください!」



懐疑的な目を向けられたユズの背中に冷や汗が伝う。なんとかその場を取り繕うと、メルインが馬車へと乗り込み、執事は御者台に座った。

それを合図に、ユズたちは馬車の四方に散った。



「ハイヤッ!」



掛け声とともに執事が馬車を走らせる。

馬車の左前方にユズ、その後ろにドル。右前方にひつじ、右後方をこんどーが歩く。

時々草むらからモンスターが飛びだしてきては、馬車目掛けて近寄ってくる。ユズたちはそれを討伐していく。



「メェさん、そっち行きましたよ!」

「任せてくださ〜い」



ポコッ



「おい、後ろから来てるぞ」

「へいへい」



シュッ



杖を振るい矢を放つ。そうしてユズたちは、順調にモンスターを狩っていく。

ユズたちの護衛により、傷一つなく進む馬車。メルインは、馬車のカーテンから顔を覗かせる。先程の硬い表情ではなく、好奇心に溢れた目で外の世界を見ていた。

そんなメルインの様子を見た執事は、御者台の上で、小さく口角を上げた。



「このまま進めば、日没までには森を抜けられそうです」

「順調ですね」



執事は、モンスターを倒しているひつじの姿を見て、微笑んだ。



「……あなた達に任せて良かったです」

「そう言って貰えて、良かったです」



馬車はゆっくりと進む。拓けた道から、森の中へと入っていく。晴れた空は木々に遮られて薄暗い。人通りが少ないためか、小石が詰まり、馬車をガタガタと揺らす。



「……ん?」



森の奥を見ていたドルの足が、突然止まった。ドルの様子に気付いたユズが、足を止めて振り返る。



「どうしました?」

「……あっちで珍しい薬草が群生しとる」

「今は護衛優先ですよ」



ユズは、呆れた目でドルを見た。薬草に目を留めたまま動かないドルは、そんなユズの視線に気付くことない。



「分かっとるって。ちょっとだけ、な?」

「あっ、ちょっと!」



そう言うと、ドルはユズの静止も構わず森の中に入っていった。異変に気付いた執事が馬車を止め、ユズに声をかけた。



「……どうされましたか?」

「あ、いえ……。気にしないでください」

「……そうですか」



執事は、訝しげながらも再び馬車を走らせる。

ユズは、チラチラと後方を確認しながら歩くが、ドルが戻ってくる様子はない。ドルが抜けた分を補うため、御者台の横から馬車の真横に移動した。キリリと痛む胃を押さえながらユズは護衛を続ける。

今度は反対側から、ひつじの声が響いた。



「わぁ、リスさん!かわいいです〜!」



ひつじが木の影にしゃがみ込み、リスを眺めている。



「はぐれるぞ」

「大丈夫ですよ〜。ちょっとだけですから」

「先行くぞ」

「は〜い」



ひつじの後ろを歩いていたこんどーが声をかけるが、ひつじは気にした様子もなくリスに夢中だ。こんどーはそのまま、ひつじの横を通り抜けた。

明らかに減った護衛に困惑を隠せない様子の執事が、ユズに話しかける。



「……あの」

「……はい」

「……本当に大丈夫ですか?」

「大丈夫です。任せてください」



ユズはそう答えるが、決して執事の目を見ようとはしない。目はずっと泳ぎっぱなしだ。

メルインは、その様子を馬車の窓越しに見て、ぎゅっとドレスの裾を握りしめた。出会った時のように、緊張で顔を強ばらせていた。外の世界を見ないように、カーテンを閉めて心を落ち着かせようとした、その時。馬が悲鳴を上げ、馬車が止まった。前の御者台では、執事が慌てている気配がする。



「……え?」



メルインは困惑しながら、そろりと窓の外を見た。そこには、盗賊と思われる男たちが、十五人ほどで馬車をとり囲んでいた。盗賊たちの持つ剣が、ギラリと怪しく光っていた。



「ひっ……!」



メルインは、思わず後退あとずさる。すぐに周りを確認するが、誰もいない。



「え、あの……?」



左を見ても、右を見ても、ユズたちの気配はない。さっきまで、馬車の隣を歩いていたはずなのに。

声だけが、遠くの方で聞こえる。



「うおっ、レア素材や!」

「かわいい〜!もふもふです〜」

「ユズ、あっちにワニみたいなのが居たぞ。ちょっと見てくる」

「ちょっと!早く来てくださいよ!」



――誰もいない。



その事実が、メルインの呼吸を浅くする。

盗賊たちは下卑た笑いを浮かべながら、ジリジリと馬車に近寄ってくる。もうダメかと、メルインが目を強く瞑ったその瞬間。



ドゴォン



大きな音とともに、馬車が揺れた。



「大丈夫ですか?!」



馬車の異変に気付いて戻ってきたユズが、盗賊たちを薙ぎ払っていた。多勢に無勢であるはずだが、ユズはテンポよく盗賊の攻撃を捌き、カウンターを入れていく。乱戦は縺れ、ユズはそのまま茂みへと消えていく。

取り残されたメルインの肩が震える。馬車の御者台にいる執事も、静かに息を殺しながら周囲を見渡す。執事は手網を強く握った。



「……お嬢様」

「な、なにかしら……?」

「……現在、護衛は機能しておりません」

「どうしてそうなりましたの?!」



メルインと執事は顔を青くしながら、ただその場で留まることしかできなかった。

草むらから低い唸り声が聞こえる。手網を持つ、執事の手が震えた。草が大きく揺れ、そこから巨大なトロールが現れた。



「きゃぁぁぁぁ!」



メルインの悲鳴を聞いたユズが、慌てて草むらから戻ってくる。カーテンの隙間から、メルインが震えながら頭を抱えて蹲っているのが見えた。



「ちょっ、ちょっと待ってくださいね!今呼び戻しますから!!」



ユズはそう言うと、森に向かって叫んだ。



「戻って来てください!全員!!」



ユズの声が森に響き、カラスが一斉に飛び立つ。一瞬の沈黙が、辺りを包んだその直後。三人は何かを抱えて、走って戻ってくる。



「ユズくん!見てこれ、デカいのあった!これは売れるで!!」

「ユズさ〜ん、この子うちで飼ってもいいですか〜?」

「おい、ユズ!ほら見ろ、アラマウントクロコダイルの赤ちゃんだ!」



それぞれが口々に言いたいことだけを言う。



「うるさい!僕は聖徳太子か!!!全員元の場所に返してきなさい!!」



ユズが叫ぶ。こんどーとひつじは、不服そうな顔をしながら抱えていた動物をその場に下ろした。二人は、リスとワニが必死に逃げていくのを眺めている。

ドルはユズの腰に付けてある外付けのアイテムボックスを奪うと、持ってきた薬草を、詰め込むだけ詰め込んで、ユズに渡してから離れていく。

ユズは胃がきゅうっと絞まるのを感じて、お腹を擦ることしか出来なかった。

馬車の前にいるトロールは、変わらず低い唸り声をあげている。こんどーは、カーテンの隙間からメルインの怯えた表情を見た。こんどーは、一歩前へ出るとトロールへと近付いた。



「任せろ」



そう言うと、こんどーは強い力で斧を振り下ろした。地面が抉れ、衝撃で土が舞う。振り下ろされた場所からまっすぐに地割れが伸びて、トロールの足元を崩す。



「きゃっ」



すぐ隣の馬車が揺れ、メルインの小さな悲鳴が馬車の中から溢れた。



「ちょっと待って!馬車の近くでやるな!!」

「問題ない」

「あるんだよ!!」



トロールはこんどーの攻撃に怯んだが、すぐにまた攻撃態勢に入る。馬車に襲いかかろうと、こん棒を振り上げていた。こん棒で、馬車の横を殴りつける。木製の馬車がひしゃげて小さな穴が空いている。


メルインは、その穴から覗く、ギョロリとしたトロールの目と目が合ってしまった。



「ひっ……!」



メルインは顔を真っ白にして、逃げ場のない馬車の中で、少しでも遠くに逃げようと隅に寄って身を縮める。

トロールがもう一度こん棒を振り上げた、その瞬間。



――ヒュンッ



ドルの矢が、トロールの肩を貫いた。肩を貫いた矢が、そのまま御者台と馬車の境を掠める。



「うわぁぁぁ!!」

「ちょっ、落ち着いてください執事さん!……ドルさん!!」

「当たってへんからセーフや、俺は悪ない」

「アウトだろ、その発言は!!」



ユズは怒るが、ドルはそっぽを向いて耳を塞ぐ。



「もぉ〜、みなさん危ないですよ〜」



ひつじが、ふわふわと軽い足取りで近づいてくる。そのまま杖を振り上げて、トロールの足に叩きつける。



「ポコちゃん!」



ポコッ



軽い衝撃音とは裏腹に、トロールは吹き飛んだ。吹き飛ばされたトロールは、馬車のすぐ前に叩きつけられた。



「きゃぁぁぁ!」

「うわぁぁぁ!」

「危ないっつってんだろーが!!」



メルインと執事が叫び声をあげる。執事はこの数十分で一回りほど年老いたような気さえした。メルインは座席にしがみつき、涙目になっている。



「……あの……」



メルインの声は、誰の耳にも届かない。もう一度声を張りあげる。



「あのっ……!」

「はい、どうしました?」

「本当にこれ、大丈夫なんですか……?」

「大丈夫だ」

「まかせてくださ〜い」



こんどーとひつじが自信満々に答える。その隣で、ユズは頭を抱えている。



「何を任せたらいいんだよ……」

「結果的に守っとるやろ」

「ギリギリ悪化してんだよ!!」

「ほら、守っただろ」

「え?」



ユズが振り向くと、倒したトロールの山の上にこんどーが立っていた。他にも居たのか、数匹のトロールは、いつの間にか全て討伐されていた。


森に静寂が訪れる。


ボロボロの地面。

傾いた馬車。

震えるメルインと執事。


ユズは、一度目を閉じてから、ゆっくりとメルインたちを振り返った。



「……ね、大丈夫でしたでしょう」

「怪我は無いからな」



この惨状を目にしても、まるで何事も無かったかのように言い張るユズたちに、メルインと執事はしばらく言葉を失っていた。やがて、震える声で執事が呟く。



「あなた達は、倫理観をどこに置き忘れてきたんですか……?」

「倫理観ならあるだろ」

「お前にはないやろ」

「守銭奴に言われたくねーよ」



四人は、何事も無かったかのように再び配置につく。そんなユズたちを見て、メルインが言葉を零した。



「……あなた達、本当に……」



メルインの喉がごくりと鳴り、一瞬、言葉を飲み込んだ。



「……プレイヤー、なの……?」



メルインの言葉が、風に溶けた。誰も答えないまま、配置についた。

風が吹き抜け、じっとりとした汗を乾かしていく。



「まぁ、守れたな」



こんどーが、倒れたモンスターを横目で見ながら言う。



「せやな。報酬分の仕事はしたで。……まだ、剥ぎ取る時間はあるか?」

「薬草摘んでただけだろう」

「ちゃんと弓も撃ったわ」



ドルは肩を回しながら、トロールに近付く。ひつじがニコニコと笑い、歩く度にルミナスの装飾が揺れる。



「無事でしたね〜」



ユズがメルインを見ると、怯えたままのメルインと目が合った。ユズは一瞬、口を噤んだ。その後、ゆっくりと口を開いた。



「……まぁ、なんとかなります」



ユズの、フォローするでも慰めるでもないその言葉に、執事は静かに目を閉じた。



「……お嬢様」

「……はい」

「帰りは、王都の兵に依頼致しましょう」

「わたくしも、それがよろしいかと……」



メルインは、再び走り出した馬車の中で、彼らに依頼したことを後悔するのだった。



「クーリングオフは、できますの……?」

「あかーん!!」




“郷に入っては郷に従え”という言葉がある。


この世界において、どちらが郷で、どちらが異物なのかは分からない。


ただひとつ、確かなことがある。


このゲームでは。


彼らの方が正しい、らしい。




無事に王都につくと、メルインは挨拶だけを済ませて、逃げるように別邸へと入っていく。執事だけがその場に残った。



「こちらが、報酬になります」

「おおきに」



執事が、ドルに報酬の入った布袋を渡す。



「……こちらは、オマケの報酬です」



執事が懐から羊皮紙を取り出し、ユズへ渡す。



「……羊皮紙?」

「なんも書いてないです〜」



渡された羊皮紙を見るが、そこには何も書かれていなかった。執事がメガネを一度あげると、口を開いた。



「……ご存知でしょうか、見えないインクというものが流行っているそうですよ」

「見えないインク、ですか」



執事はもうほとんど日が沈んだ、藍色の空を見上げながら言った。



「……先代の旦那様が、星を追う方でした。夜風にあたりながらご覧になるといいかもしれませんね。……それでは私はここで。失礼いたします」



そう言うと、執事は別邸へと入っていった。



日が完全に沈んだ頃、ユズたちは宿屋で羊皮紙を広げた。やはり、そこには何も書かれていない。



「なんや、ほんまに詐欺かいな」

「……いや、きっと意味はあるんだと思います」



どの角度から見ても、何も書かれていない古びた羊皮紙だ。蝋燭の明かりに照らしてみても、暗号解読用の特殊なインクを落としてみても、何も変わらなかった。



「あのおっさん、夜風にあたりながらって言ってただろ。外に出てみたらいいんじゃねーか?」



こんどーの言葉に、ユズは頷くと、羊皮紙を持って外に出た。

街灯の灯りが道を照らす。空には、やけに大きな満月が浮かんでいた。月の光によって、一際明るく照らされた場所で、ユズは丸めた羊皮紙を広げた。



「えっ」



羊皮紙を見ると、薄らと文字が浮かび上がっていた。しかし、かなり薄くて読めそうにない。ユズは羊皮紙を持ち上げて顔を寄せる。月が羊皮紙を照らす。少しずつ、文字が濃くなっていく。

一瞬、その文字を読んだユズの目が大きく見開かれ、羊皮紙を掴む手に力が入った。ユズは震える声で、三人に言った。



「……これ多分、星空の街への暗号です」

「え〜?!」



三人は驚きの声とともに、羊皮紙へと顔を寄せる。光の当たった文字がキラキラと星屑のように輝いている。



【これ解けた者、星空へと導かれん


その一

闇夜の地 雫が落ちて石を穿つ

月の雫がハマる時 その地は扉となるだろう


その二

星の錠 光を纏いて呼び起こす

星降る鍵がハマる時 その扉は開かれるだろう


その三

零月の夜 歌を唄いて涙を流す

偽りの夜が満ちる時 その光は流れるだろう】




「星の錠……光を纏いて、か」

「……これが本当に星空の街への暗号なら、多分ポコちゃんだ」

「ほなら、一と三、それぞれギミックがあるっちゅうことか?大変やな」

「……そうですね。でも……」



ユズは小さく笑って、空を見上げた。



「ようやく、前に進める」



夜風が吹き抜け、頬を撫でる。ユズは眩しそうに月を見ている。

そんなユズを、こんどーは黙って見つめていた。


満月が、少し笑ったような気がした。

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