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違和感

「これは誰の差し金ですか?」

「一体、何のことですか?」


ドミニクの急な詰問に一同は本気で戸惑っているようだった。


「平民を王太子殿下他最上位のものが事情を隠して庇護する。

平民の美しいと評判の女を複数の高貴な男たちが特別扱いするように周囲からは見えることでしょう。

それぞれの婚約者にも同じように見えるのですが。

この不和の種を蒔こうとしているのは誰なのかと訊いているのですよ。」


宰相は呆然として表情が抜け落ちていた。

その他も呆気にとられていて、まるでそんなことは考えもしなかったという様子だった。


「貴族学園で平民女性の世話をするのであれば下位貴族の息女を普通は考えるのではありませんか?

なぜ王太子殿下である必要があるのか。

もしや融和策に不満を持つ勢力が?これは国王陛下もご存じのことであるのか?

これは私の父、マリオン侯爵に判断を委ねなければならない案件です。

私が聖女を庇護するかどうかは即答出来かねます。」

「ま、待ってください!侯爵には…いや、これは包み隠すべき事案ではありませんな。

そのままお話しください。

これに関しては調査が必要です。

今回の依頼は撤回させて頂きます。

まったく、なぜ気づかなかったのか…不甲斐ない。

ご指摘頂きまして心より感謝申し上げます。

国王陛下はご存じないことです。そこまで深く考えていなかった。

いや、私の失態です。」


宰相に深々と頭を下げられ殿下方にも感謝されたがドミニクは釈然としないまま王宮を辞した。

侯爵邸に戻るとその足で執務室に赴き報告した。

マリオン侯爵は途中でクレージュ公爵を捕まえて王宮に飛んでいった。


翌日には事件のあらましが見えてきた。

聖女は教会に対して貴族学園への編入を希望し、教会から王宮の担当者へ相談があった。

担当者は計画を纏め上げて上司に熱弁をふるい、宰相にねじ込むことに成功した。

野心家の平民の女が考えたハニートラップもどきというのは想像に難くない。

しかしオカシイのは教会と王宮の担当者及び上層部が誰ひとりとしてツッコミどころ満載の話を不思議に思わず進めてしまったことだった。

計画を具体化した王宮の担当者は貴人牢に入れられて取り調べを受けていたが様子がおかしくなったと聞いてドミニクは確認しにいった。


王宮内の別棟が貴人牢で外観は立派なものだった。

内部も貴族の館と言っても通用するグレードであったが各部屋の仕切りは鉄格子となっていた。

その中の一室の前まで案内されると椅子に座った1人の男が牢の中に見えた。

普通に座っているだけのように見えたがその瞳は真っ暗でなにものも映していなことがわかった。

そしてただただ呟いていたのだ。日本語でーー


『システムエラー発生:状態遷移に修正不能の異常を検知しました:強制力を解除します:システムエラー発生…』


おそらく強制力というものが違和感の源だと察したがそれだけだった。

解除されたならいいかとも思う。

担当者は次の日になって死んでいるところを発見された。

毒を盛られたのでもなく外傷もなかったそうだ。

突然死としか言いようのないものだった。

自分を転生させた何者かが関わっているのだろうことは薄々感じたがそれ以上は考えるだけ無駄と思った。


聖女はその後、貴族学園に無断で侵入しようとして捕まり謹慎となった後、預言をしなくなったため教会を解雇された。

その際、無理矢理聖女に祭り上げられたと訴えたそうで手切れ金をチャッカリ貰ったとか。

その手切れ金を元手に飯屋を始め、創作料理と称して生魚を切り刻んだものを出して騒動になったとか、大量の豆を腐らせて異臭騒ぎを起こし近隣住民とトラブルになったとか、その腐らせた豆から出てきた真っ黒い汁を料理に使ったのがバレて客を激怒させたとか、お騒がせではあるが政治的には問題なさそうだということで密かに付けられた監視も1年あまりで解かれたらしい。

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