聖女
学生生活も半ばを過ぎ、2年次が修了間近となったところでドミニクは王宮に呼び出された。
王宮へ向かう馬車には鉄面皮侍女とアニキ騎士が同乗していた。
成人してからは侍女ではなく侍従が付くのが慣例なのだが、本人の強い希望でそのままとなっている。
別に特別な関係でもなく無駄口をたたきあうような近しい間柄でもないのだが。
そしてドミニクの護衛であるアニキ騎士と最近になって恋仲になったようだ。
「学園に入学してからセリーヌの態度が冷たくなったのだが理由が分からない。
何か分かるか?」
恋愛上級者のアニキに一応相談ということで話をふってみると、
「女ってのは化粧ノリが悪いからって一日中不機嫌だったりしますからねー。
理由なんて考えてもしょうがないですよ。
坊ちゃんはイケメンなんだからただ微笑んでたらそのうち機嫌を直しますよ。」
案の定、明後日の方向に慰めてくれた。
それを虫ケラを見るような目で眺めていた侍女が一瞬だけフッと笑った。
(アイツ、笑ったよ!初めて見た。出来の悪い子ほど可愛いってこれのことか。)
暇つぶしで珍しいものが見れたところで王宮に到着した。
王宮の文官に案内された会議室には宰相と王太子殿下及び側近2人が待っていた。
「ドミニク・マリオン、ただいま参上いたしました。」
「お待ちしておりました。では、皆さま始めましょうか。」
用件は宰相からの相談のようだ。
「さて、最近市井で話題になっております聖女様についてご存じですかな?
神から預言を授かったという少女ですが。」
皆が頷く。
教会が見い出したというその少女は幾つかの預言をして的中させているという。
平民には知る由もない王妃陛下の愛猫の名前とか翌月に流行する菓子とか他愛もないものばかりだったが、珍しい桃色の髪と愛くるしい容姿で教会のマスコットとして据えるのに丁度いいのだろうというのが貴族社会の認識である。
「その聖女様を3年次のみ1年間貴族学園に迎えいれることとしましたので、皆さまにご協力いただきたいということで本日お集まり頂いた次第でございます。」
(聖女が貴族学園に?)
ドミニクは違和感を覚えたが他が頷いていたので先を聞くことにした。
「聖女様には今後国のために預言を行って頂くことを期待されております。
貴族社会に受け入れてもらうために学園で研鑽して頂くことになりました。
身分は平民ですので突然学園に入っても勝手が分からないでしょう。
しかし、せっかくの学生生活なので自然に馴染んで頂きたいのです。
そこで生徒会役員でもあられる最上位の皆さまに内々で聖女様を庇護していただきたい。
よろしいでしょうか。何かご質問はございますか?」
「なるほど。それは困るだろう。分かった。庇護しようではないか。」
王太子と側近2人が了承した。
「では、この件はよ」
「お待ちください。質問があります。」
宰相が締めくくろうとしたところをドミニクは遮った。
架空の世界、宗教における教会公認の聖女のためバカバカしい内容であっても神の御業とみなされている設定です。




