2-10
昼時を過ぎて、支給の昼食を食べた後に、採掘現場から鉱夫が一人、やって来た。
「採掘用の機械が故障しまして……」
数台あるので作業が大幅に滞る事はないが、当然修理の必要があると言う。
「どうします?」
どうしますと聞かれても雪路にどうにかできるわけもない。しかし、この場で最も立場が高いのは雪路で、一応、補佐期間中はこの地区の責任者のような物なのだから、どうにかするしかないだろう。
「ええと、じゃぁ、とりあえず残ってる機械で採掘作業を続けて貰って、私は藤埜大尉に報告して来る、で、どうでしょう?」
「それが良いですじゃろうな」
年配の書記官も頷くので、ひとまず、雪路は誠の所に報告に行く事になった。
そうしたわけで、地図を片手に朝の事務室に向かい、見覚えのある鉄の扉をノックする。
「……どうぞ」
書記官のものらしい返事があって、雪路はそおっと扉を開いた。
「失礼します」
「何だ?」
書類を睨んでいた視線を一瞬だけ上げて、誠はそう訊いた。
「あの、地区の採掘用機械が故障したらしくて……」
返事はなく、書類を睨んでいる誠。
「修理の手配が必要なそうなんですが……」
「……手配したのか?」
「え、いいえ」
首を振ると、眉間に皺を寄せ、誠は顔を上げた。
「お前に任せた地区だ。手配が必要だと分かっているなら、何故しない?」
「え」
「手配先や費用の申請方法なら書記官達が知っているはずだろう。そこまでやってから報告しに来い。使いだけなら子供でも出来る」
「……はい、すみません」
実はちょっと思い付いたけれど、勝手にそこまでやったなら、それはそれで怒られそうだと思ったのだ、という言葉は流石に口に出せなかった。
不機嫌そうに書類に目を戻す誠に、失礼しました、と声を掛け、雪路はションボリ部屋を出た。
「……あの人の前だと、何をやっても裏目に出るぅ……」
カンテラが照らす坑道をトボトボ歩きながら、雪路は心の底から深く溜息を吐いた。




