↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔女と鉱石、帰還譚  作者: 空野
Chapitre.2
17/323

2-11

 そのまま落ち込んだ気分が戻らず、その日は仕事を終えて。

 何があったか察した書記官達が慰めてくれたが、どうにもモヤモヤしたものは拭えない。しかも顔に出ていたらしく、帰り道で待っていてくれたウェンディからも、今日は早く帰ってゆっくり寝なさいと、飴を数粒貰い、帰宅を急かされる始末。

 「本当に子供かよ、ってなっちゃうよねぇ……」

 シャワーを浴びて、食堂で夕食を採り、早々と自分の部屋に戻った雪路は呟いた。

 窓を開けば、街を照らす瓦斯燈の灯と、無限に連なる鉱山の黒いシルエット、そして星空が見える。

 ウェンディに貰ったカラフルな包装の飴玉を手の平で転がしつつ、ふぅ、と絨毯に座り込んで溜息。

 「就職先、間違えたかなぁ……」

 冷たい夜風は、あまり当たるものではないと分かっていたけれど。憂鬱な気分を少しでも晴らしたくて、あえて冷たくて透明な風に顔を晒してみる。

 雪路の部屋の斜め下は談話室だった。そこでも今日は換気の為か窓を開いているらしく、ザワザワと他の花嫁候補達の声が聞こえてくる。

 『今日はエリック様は鉱山にいらっしゃらなかったわ』

 『あの人、誰にでも優しくて気のあるような事を言うわよね』

 『でも、そこも慣れてる感じで素敵なのよぉ』

 キャッキャッと騒ぐ声に、ああ、そういう人なのか、と納得。

 (小野小町は完全に外してたけど……。でも、ああいうの、プレイボーイ?って言うんだっけ?)

 ウサギのマークを思い浮かべてつつボンヤリしていると、一際大きなイザベラの声もしてくる。

 『アントワーヌ様は、今日は執務室にずっといらしたわ』

 『ええ!羨ましい!』

 『イザベラ、よく平然としていられるわ!あの方を一日見ていられるなんて、それだけで私なら心臓が疲れて止まっちゃう……!』

 『あの方はお忙しいから、滅多に丸一日いらっしゃる事なんてないのだけど、今日は篭っていらして。お茶の時間に、珈琲と紅茶、どちらが宜しいか、聞いてみたのよ』

 ワイワイと囃したてる周りに、鼻高々で語る姿が目に浮かぶようで、雪路は再び溜息を吐いた。

 『紅茶の方が好きなんですって』

 『きゃぁあ!イメージ通り!』

 『私は苦い珈琲が好きそうだと思ってたぁ!』

 嬉しそうな悲鳴の上がる階下に、なるほど、恐れられていても人気は高い、というのは本当だと感心。

 『明日はいらっしゃるかしら?』

 うっとり楽しげなイザベラの声に、羨ましいな、と素直に思う。

 「……私は明日が憂鬱……」

 呟いて、まだ何か語るイザベラの声を遮るように、窓を閉じた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。