11-5
日曜の、もうすぐ正午になる頃合。ザワザワとする街の中を歩いて行く。
「それで、ウェンディに」
他愛ない話をする雪路に、静かに楽しげに頷いてくれていたアントワーヌは、しかし、ある瞬間にふと視線を動かした。
「アントワーヌさん?」
金の瞳が向いた先を、つられて雪路も振り向いた。
「……何か、あったのかな……?」
大通りの向こうの方で、何やら騒ぎが起きているらしい。
「あっちって……花嫁候補の……」
屋敷がある方向だと、気付いて無意識に少し眉を寄せる。そういえば、警官達がそちらの方向へ走って行く。
「……ヘイダルの領域ではあるが」
アントワーヌは、静かに雪路に視線を戻す。
「すまないが、少し」
「あの、私も行って良いですか?」
思わず、袖を引いた。
「その……一応、気になる、というか……」
仲が良かった誰かがいたわけでもないのだけれど。どちらかと言うと悪い思い出の方が多いのだけれど。それでも、知った顔の人達が暮らしている場所だし、お世話になった屋敷付きの女中達にも、何かあったのかもしれないのだから。何となく、気にはなってしまう。
「ああ、かまわない」
宥めるように雪路の背中を優しく撫でてから、金の瞳は再び屋敷の方へ向けられた。
「俺も、お前も、少し見に行く必要があるだろう」
そうして進行方向を変え、警官達が駆けて行った方へと向かうと。




