11-2
予想外に早く目が覚めてしまい、暫く逡巡した後、身なりを整えた雪路は厨房に降りた。
屋敷中がシンとしていて、自分の他に誰かが起きている気配はない。
「……お湯くらいは、沸かしておこう」
人の家だから、勝手にあまり触るのもどうかと思ったけれど。客間も他の部屋も好きに使って良いと言っていたし、と、少しドキドキしながらお湯を沸かす。
「……いつ頃、起きて来るだろう?お茶で良いかな?」
茶葉とカップを食卓に運びながら、ソワソワと扉の方を向いた時。
ガチャリ、と、それが開いた。
「あ」
一瞬、飛び上がって、それから、慌てて体ごと向き直る。
「おはようございます!」
すると、扉を、開けて入って来たアントワーヌは、おはよう、と頷いた。
「あの、厨房、勝手にお借りしてますが……」
雪路の言葉に、ああ、とカップに目を向ける。
「構わない、ある物は何でも好きにしてくれ」
その少し掠れた声に、まだ眠いのかな、と、ちょっと意外に思って。
「あ」
改めて見たその姿に、パチンと目を瞬く。
「あの、シャワー浴びました?」
「ああ」
「それなら、ちゃんと乾かして下さい、半乾きは風邪引きますよ!」
とりあえず水気が取れていれば良いとばかり、拭いただけの髪に、慌てて両手を上下する。
「ドライヤーあるじゃないですか!?風邪引いちゃうし、傷んじゃいます!せっかくフワフワで気持ち良さそうなのに!」
ほらほら、と、キョトンとしている背中をグイグイ押して廊下の方を向かせ、雪路はやり直しを促した。
「その間にお茶入れておきますから!いってらっしゃい!」
「あ、ああ?」
釈然としないものの、勢いに押されように。入って三十秒で、家主は食堂から出て行った。




