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夢を見た。ずっと、昔の夢だった。
戦場での約束。反転する世界。紅蓮の女。
異界の夜。差し出された手。
目を逸らしてしまった、救えたかもしれない人々。
雨の中の祈り。
疫病、大火。
真っ白なページに遺された、別れの挨拶。
〝ドクター、今までありがとう〟
目覚めた時、カーテンの開いたままの窓からは、光が降って来ていて。
とさりと、起き上がった体から落ちるのは、無意識に脱ぎ捨てた上着。
ぼんやりと、それを見詰める。
黒は、死者を悼むための色。
覚えていると誓ったのだ。全部全部、どれだけ重くなったとしても。白旗は上げない、どんな事があろうと、この背中に背負ったものがある以上、退くものかと誓う、不動の色。
そこには一欠片の後悔もなく、それをただ一瞬でも手放したいなんて思わない。
けれど、ただ、今は、少しだけ。本当に、少しだけ。
「……好きでもないが、嫌いでもないんだ、黒は」
本当は、自分は何色が好きだったのだろうかと、ぼんやり、思った。




