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魔女と鉱石、帰還譚  作者: 空野
Chapitre.11
108/323

11-1

 夢を見た。ずっと、昔の夢だった。

 戦場での約束。反転する世界。紅蓮の女。

 異界の夜。差し出された手。

 目を逸らしてしまった、救えたかもしれない人々。

 雨の中の祈り。

 疫病、大火。

 真っ白なページに遺された、別れの挨拶。


 〝ドクター、今までありがとう〟


 目覚めた時、カーテンの開いたままの窓からは、光が降って来ていて。

 とさりと、起き上がった体から落ちるのは、無意識に脱ぎ捨てた上着。

 ぼんやりと、それを見詰める。

 黒は、死者を悼むための色。

 覚えていると誓ったのだ。全部全部、どれだけ重くなったとしても。白旗は上げない、どんな事があろうと、この背中に背負ったものがある以上、退くものかと誓う、不動の色。

 そこには一欠片の後悔もなく、それをただ一瞬でも手放したいなんて思わない。

 けれど、ただ、今は、少しだけ。本当に、少しだけ。


 「……好きでもないが、嫌いでもないんだ、黒は」


 本当は、自分は何色が好きだったのだろうかと、ぼんやり、思った。


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