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「元気さん、確かに涼の言う通りアレはないよ…。あんなボロ小屋じゃ寮とは言えないし、第一あの小屋に学園生全員寝泊まりとか、ありえねぇッ!」
「え?そんなに酷かったかい?確かに2人部屋でリビングにキッチン、寝室の2部屋しかないけどトイレとお風呂は別だよ!?ベッドなんて2段だよ!?楽しいよ!?」
「楽しいわけあるかぁぁあッ!!」
2段ベッドにそこまで楽しさを見出せないが、トイレと風呂が別なのはいいなッ!ただ問題はそこじゃねぇんだよ。
最大の問題は……人口密度だよッ!!
2部屋に全校生徒とか…涼の言葉を借りると、舐めてんのかッ!?
「あんな10畳あれば万々歳!みたいなとこに何百人も住めるかぁぁあッ!!」
「「……は??」」
「……えッ?」
なに?何で2人してそんな憐れむような目でこっち見てくんの??
え?なに2人共許容範囲内なの?熾烈なトイレ争奪戦に、何百人に対して2段しかないベッドの奪い合い、すし詰め雑魚寝気にしねぇの!?
…おっそろシイ精神力をお持ちで。俺はそんなの御免被る。俺は雨風凌げなくてもいいから星空の下、広々と寝たい。
「…また妙な勘違いしてやがるな」
「えっと、優也くん?あの小屋はね?君達の寮じゃないよ?あれは…」
「馬小屋だ、馬鹿」
「ええっ?!だって寮に行くって涼が…ッ!!」
「…ヒメとオウジの寮の視察だ。チェックしといて良かった。まさか…あんな環境だとはな……元気さん?」
どういうことだ?とまたしてもどす黒いオーラを放ち、元気さんに詰め寄る涼。ふざけたあの学生証も忘れてねぇからな、と更に凄む。
「あれはっ、ひ、ひろこちゃんのちょっとしたイタズラ心で、私じゃないよぉ!?ほんとだよっ!?」
ひぃぃっ、と情け無い言い訳と声を上げながら俺の背後へと隠れ、助けてと足元に縋り付いてくる元気さん。本当に威厳、ねぇな。そんなんで商会、学園の長なんてやってけてるのか?
って、そんなことより今はこの状況をどうかしねぇと怒りの矛先が俺に向いちゃたまらんッ!
「り、涼?とりあえず落ち着こう?元気さんがオウジとヒメの新しいお家用意してくれるって!ね?なんなら用意出来るまで元気さんの自宅で懇切丁寧に預かってくれるって…!ね?元気さんッ!」
「も、勿論だよ!丁寧至極尽くさせてもら…えっ!?私の自宅!?」
「…何か文句があんのか?可愛い俺の家族と暮らせる名誉だろ。三食、飯は最高級人参だ」
「…はい」
元気さんの元気がない返事を聞いていると心が痛くなるが、俺にとばっちりが来なかったことを鑑みるとまぁまぁの落とし所だろう。
俺達の寮は馬小屋から、人間の住める一室にグレードアップしたし、オウジとヒメに至っては元気さんの自宅を経由して、新設される馬小屋での3食最高級人参生活。
……成果は上々だ。




