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マンホールの下は異世界でした!?  作者: 氷山


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…建物の中に建物があるってのもなんか不思議な光景だな。



オウジをヴォイスで癒した場所からおおよそ30分程。塔からはまだまだ距離のある、無駄金を大いに注ぎ込んだであろう、まぁまぁな階層のある校舎のような建物の前でようやく涼は止まった。



「…着いたぞ。約束の地、世界樹だ」



「え、そっち?」



美味しい異世界飯は?という疑問にとりあえず着いて来いと返事を返され、渋々ヒメを降り手綱を引き歩く涼に習い、俺もオウジから降りる。



こう見えて実は、学生に成り切りつつ食事を楽しむコンカフェなるところだったり?



…どの層をターゲットにしているのか、趣旨もよく分から…理解したくもないがそういうコトに興じる場所か?



疑問は尽きないが、腹は減る。ヒメを連れ堂々と正面の身長の3倍はあろうかという鉄製の門を押し開けてその建物へと向かって行く涼。



馬も一緒にご来店出来るところなのか、と心配になるがあの涼の迷いない佇まい…大丈夫そうだ。



「なぁ涼。オウジ達もコスプレさせたほうがいいのか?」



「…コスプレ?どうでもいいが大人しくしてろ、余計な発言はするな、大人しくしてろ」



2度念押しされた。そんなに言わなくたって俺は元より慎重さと堅実さが売りだ。



今までの下水楼でのトラブルの連続は…あれだ!地上からだいぶ下にいるせいで空気が薄くて判断力が落ちてるんだな。うんうん。



「まかせろ涼ッ!俺は全力で大人しくしてるぞ!」



「……不安しかない」



前を歩く涼がチラリと俺を一瞥し、言葉の通り不安そうな顔をして前に向き直る。



相変わらず失礼なヤツだ。



俺がしっかりと後ろを付いて来ているのを己の目で何度も何度も確認しながら歩く。そしてようやく建物内の入って左側にある受付カウンターのような所へ近づき、カウンター内でオドオドと立っていた20代前半くらいの若いお姉さんへと声をかけた。



俺は涼の言いつけ通り全力で大人しくする為にオウジと共に涼の背後へと忍ぶ。決して女性と対話するのが気恥ずかしいからじゃない、断じて違う。



「こんにちは。今日からお世話になる涼と優也です」



「ここ、こんにちはっ!お話はチサっとタイキ商会か、会長よりお伺いっし、していますっ。こ、こちらをどうぞ…」



「ありがとうございます」



涼は、女性の震える手で差し出されたカードを2枚受け取り、ズボンのけつポケットへと仕舞い込む。その時一瞬見えたカードに俺は驚愕した。



名前はカタカナ表記でユウヤ、と同じだが、顔写真が全くの別人。黒髪で右眼は赤、反対は黒眼はそのままに顔が中世的な美人になっていて髪は伸びている…全くの別人だ。



「誰だおまえッ!!」



「はいぃっ!すみませんすみませんっ!!」



「…………ハァ」



涼がため息をつき左手で顔を抑え天を仰ぎ見ている。…ムカつくポーズだな。



カウンターの向こうでは、俺の突然の大声に驚いたのか、はたまた涼のため息が自分の不手際のせいだと勘違いしたのか、短めの茶髪を振り乱し執拗に謝罪を繰り返している受付嬢。



俺はといえば大人しくしてろと言っただろ、と小声で言う涼を無視して涼の尻ポケットに仕舞われたカードを取り出し、その書かれたデタラメな内容にツッコミが止まらない。



「おれ女ぁあッ!女の子になってるぅぅ、なんでぇえ!?って、何この備考欄ッ。俺奇病を罹ってるんだけど…なんのッ!?誰か説明をぷりぃぃいずぅぅう!!」



「…こういう病気なんで気にしないで下さい」



「は、はぁ…」



ぷりぃぃいずぅぅう!!



周りの生徒風のお客様からの痛い視線に居心地が悪くなったのか、俺の奇病の発狂をバックに何やら受付嬢から説明を受けていた涼があのっ、とまだ説明したりなさそうな受付嬢に、連れが発作を起こしたのでと言い、俺の首根っこを乱雑に掴みそそくさとカウンターから離れる。



俺と涼はもう17年の付き合いだ。雰囲気で解る。……ご立腹だ。



理由は明白。明らかに偽造されたこのコンカフェの学生証風ポイントカードに錯乱した俺の言動だろう。



俺だって騒ぎたくて騒いでたわけじゃないんだぞ、涼。想像してみ?勝手に奇病を患った女の子にされてるとこ…そりゃ錯乱もするさッ!



「…………」



無言で俺を引きづる涼に遠慮しているのか、いつもの嘶きも潜めてそろそろと俺達の後をついて来ているオウジとヒメとバッチリと目が合った。



その眼差しは憐憫に満ちている。その瞳はまるでこれから待つ涼のお説教を知っているかのようで、それは俺にもヒシヒシと伝わり生唾を呑む。



ただ今の俺に出来ることは少ない。なるべく涼の手を煩わせることなく、黙って大人しく引きづられることくらいだ……



「優也…何か言うことは?」



「ごめんなさいッ!」



「…で?」



「誠に申し訳ありませんッ!!」



「謝罪はもういい。大体分かるが、何を騒いでた?言ったよな俺。余計な発言はするな、大人しくしてろって…言ったよな?」



黒い…真っ黒だ…ッ。



煌びやかなシャンデリアが天井を飾り、壁やテーブル、椅子までも全体的に白く統一された眩しいくらい明るいレストラン。



が、涼の放つどす黒いオーラによって暗く、重い空間へと様変わりしている。涼のオーラに当てられたのか、レストランの中にいた人は隅で静止する店員を1人残し去っていった。



この1人は勇気のある実直な店員さんだった。



カウンターの正面、つまりこの建物の出入り口の右側にあるレストラン本体と思しき場所へ入る際、俺を引きづる先程降臨されたばかりの魔王に、その後ろを空気を読み静かに歩く馬2頭。



この出立ちの御一行、しかも涼に声をかけたのだ。



「お客様申し訳ありません、ペットの御入店はお断りさせて…」



「…オウジとヒメは家族だ。分かったらこの店最高級の人参を生で10本持ってこい。それから適当に俺達が満足出来そうな料理もだ。そして失せろ」



「はいいっっ!!ただいまっ!!」



とのやり取りがあり、今現在、生人参10本を即座に厨房から持って来てさっきの勇ましさは何処へやら、俺達の座る店内入って直ぐのテーブルの上にそっと置くと、料理が出来上がるまでの間涼から1番離れた角地で気配を消し、固まっている。



普段はこんな理不尽な態度も要求もしないのだが、よっぽどストレス溜め込んでいて、それがとうとう爆発すんでのところまでキテいるようだ。



店員さんも涼もお気の毒に……



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