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マンホールの下は異世界でした!?  作者: 氷山


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はじめまして異世界


暫く涼と2人でというか俺が一方的に話しかけていたが、ふと気づいた。いや、気づいてしまった。



…周りの異様さに。今まで気づかなかったことのほうが不思議なくらいの光景。



最初は大きな藁家が燃えていただけだったが、気付かぬ間にだいぶ移転したらしい炎達は、村のほぼ全域を焼き尽くしていた。



藁で全体的に黄色かった村が、今じゃ俺の前半身と同じく真っ黒だ。



お、俺らのせいじゃねぇからな?



確かに涼がハルを投げ込んだあとの火災ではあるが…。



「これ俺達のせい?」



「………さぁな」



そこははっきり違うと言ってくれ涼!



まさかハルが中にあった蚊取り線香でも倒したのか?そうだとしたらこの村ほぼ全域を焼いた大火災の原因は俺達ということになるけど……



……悪い方に考えのはよそう。きっとあの姉弟がいきなり藁壁を貫通してきたハルに驚いて蚊取り線香でも倒したんだろう。



ん?これじゃどっちにしても俺達が原因か?



いやいや、藁家なんかで蚊取り線香燃やしてる方も悪いだろ。



………本当にあったかはわかんないけどな。


 


それに今どき藁で家なんか作ってんじゃねぇ!お前らの時計は弥生時代かなんかで止まったままかよ…。



今では灰となった藁家を前にいいわけを考えていると、ダスダスと強めの足音と怒鳴り声。



「やっぱりあんたらの仕業か!」



恐る恐る振り向くとやっぱりいたのはあの娘で……弟はどこ行った?



「ゲッ、さっきの目つき悪い女の子じゃん。俺苦手……涼パス!!」



「はぁ?」



サッと涼の背中へと隠れる。ため息が聞こえるが俺は気にしない。



「よくも私達の村を……。どうしてくれんのよ!」



「俺達のせいではないかもしれねぇだろ」



「とぼけないで!あんた達が投げた妙な物体のせいで……。あんな恐ろしい物持ってるなんて…」



「…ただの携帯電話だが?」



「けーたっ?…とにかく、高度な技術で作られた殺人兵器だということはよく分かったわ」



「そんなわけ「ささ、殺人兵器ぃぃぃぃ!?!?」…うるさい」



隠れてるなら黙っとけよ、という涼の呟きはこの際無視するとして。



涼の背から顔を少しだけ出して、目つきの悪い女の子としっかりと目を合わせた。



俺の『ハル』がとんでもない言いがかりを付けられているのに黙っている訳にはいかないだろッ!!



「あんたのそのケータ?から異様な音がした

時……」



「『ハル』だ!」



「携帯電話、な」



「名前なんてどうでもいいのよ!その兵器が怪しく震えて奇怪な音、声を発したあと……居間に紅い龍が現れたっ!」



震えたのはバイブ機能、不本意だが彼女の言う異様な音や奇怪な音、声とはスタホの着信音のことだろう。



間違いなく俺が『ハル』に設定…いや、教えこんだものだ。犬でいうお手とかと同じ要領だな。



凄いだろッ!他にも『ハル』は色んなこと覚えてるんだぞッ。例えば……っと話が逸れたな。『ハル』の素晴らしい芸についてはまたの機会にねっとりと長い時間をかけて紹介するとしよう。



今気になるのは、あの藁家に居間なんてあったのかという小さな疑問なんかじゃない。



その居間に現れたという紅い龍。はっきり言ってハルにそんな芸当は出来ない。



教えた覚えもないしな。だけど、この女の子は『ハル』から出てくる紅い龍を見たという。……確かに『ハル』にそんな事が出来るならぜひとも芸に加えたい!が、現実問題でそれは無理だと言うことは俺でも分かっている。



「へー紅い龍ねー。それはそれは凄いことで……ヒィィぃッ!!」



ギロり、女の子からあの眼で睨まれたらそれだけで俺の口からは悲鳴が漏れるように出来ているらしい。



サングラスでもかけさせとくかな…。



「…蚊取り線香から藁に引火したのを見間違えたんだろ」



「さすが涼!俺も同じこと思ってた」



「違う!うちにそんな高価なものあるわけないでしょ!」



蚊取り線香ってそんなお高い物だったか?



ま、こんな藁家に住んでるくらいだからビン〇ーなんだろうな…。地上に戻れたら俺のバイト代でこの村に寄付でもするか。村人全員に蚊取り線香くらいは買ってあげられるはずだ!



……村人?そういえばこの姉弟以外の村の住人って見てないな。聞いちゃいけないことだったらアレだしここは気配を読める涼に相談するのが妥当か。



涼の背に張り付いていたので、目の前は涼の背中。つんつんと突っつくと視線は女の子を見たまま、何?と返してくる。



のぞき込んでも横顔しか見えず、全体的にピリピリとした空気を発している。何をそんなに警戒してんだか…あっ。また矢が飛んでくるかも、とか?



「なぁなぁ。この村に他の住人っている?」



「……いない」



わぉ、断言。少し気配を探るように見回したあとまた女の子に視線を戻しこの一言。



涼もこう言ってることだし他に村人はいないってことだな。良かったー。ちょっと心配だったんだよな。火災に巻き込まれた人がいなかったか。



仮に『ハル』のせいで引火したとして、それに巻き込まれて死人が出てたとしたら……やめよう。例え話でもするもんじゃないな。



第一『ハル』にそんな機能ないしやっぱり紅い龍は、女の子が居間で燃える藁と見間違えたんだろ、ってことで解決!解決させる!今この場で考えても答えが出ないことをいつまでも悩んでても時間の無駄だしッ。



そして、次の問題。



これは涼と睨みあってる女の子に聞いた方がいいか……俺達だけじゃ解決出来ないし。



「ねぇ涼、涼ってば!」



「…次は何?」



「あの子にこれから君たちはどうするの、って聞いて!」



「自分で聞けよ」



「いやー俺あの眼苦手だし…。ほら、女の子はもっとこう、ふわっとしててポワポワした……」



もういい、と呆れた顔を向けられるも女の子への質問役は任せられてくれるらしい。



さすが涼っ。わかってるぅー。



背中に隠れたまま聞き耳だけを立て、待機する。また涼のため息が聞こえたがスルーだ。



「…俺の後ろの背後霊からのなんだけど、君たち姉弟はこれからどうすんの、って」



さすが涼っ。俺の嫌がることわかってるぅー。



確かに涼の背後に引っ付いてはいるが、その紹介はないだろ…。しかも俺からのってことサラッとバラしやがってっ!



……やめて下さい。女の子、その痛い視線やめて下さい。



涼越しにチクチク視線感じるんだけどぉぉおッ。



「心配…してくれてるの?」



女の子のか細く今にも消えそうな呟きは、聞き耳を立てていた俺の耳にしっかりと届いた。



聞き耳立ててて良かったー。目つきと口は悪いが、俺達と同じくらいの歳の子がこの村に幼い弟と2人だけで住んでて頼れる人がいない…心細かったんだろうな…。



こっそり様子を伺うとさっきまでの睨みは何処へやら、俯いてなんだか年相応の女の子に見えた。



殺気が和らいだ今ならこの娘と話せる気がする!素直な女の子は嫌いじゃない!



ゆっくりと恐る恐る涼の背から隣へと静かに移る。涼より一歩後ろなのはご愛嬌だ。



「君、名前は?」



「千沙(ちさ)…」



「そっか。俺は優也、でこっちの仏頂面のが俺の親友の涼!」



「…アホ面の方が優也だと覚えとけばいい」



「なにおぅう!?」



そして始まる貶し合い。



馬鹿だのアホだの言葉は低レベルだが…。



それを聞いていた千沙はフフッと鋭かった目を細めて笑う。



うん、笑顔が可愛いな女の子は嫌いじゃない。





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