3
ハルの救出大作戦は成功した。
…結果的にはな。
俺はこの作戦とも呼べない救出劇に大いに不満だらけだ。
まず一つ。
2人で小川に飛び込んだ意味がない。
結局燃え盛る藁家に突撃したのは俺単身。涼は外で待機。
……涼、お前がしたのはただの行水だ!!
涼曰く「まぁ、ノリ的に?」だそうだ。
そして、二つ目。
涼が使えると言った穴の件。
使ってないッ!!!
俺をハルと同様穴に向けて投げつけただけじゃねぇか!普通に熱かったぞ。
涼曰く「ブチ抜くにはここが一番」だったそうだ。
あっただろ!!元々備え付けの藁屋の玄関がッ!
で、三つ目。
巻き上げについて。
俺が涼に抗議していたその隙に腰に巻かれたらしいロープ。この時点で涼は自分が藁家に入る気は無かったことが伺える。
そこはまぁ、百歩譲って単身のほうが成功率が高く、危険が少なかったらしいので良かったとしよう。
問題は使われたロープ。
足元をチョロついていた雑草共が涼へプレゼントに、と持ってきたらしい木のつる。
燃えるだろ。
たまたまハルがすぐに見つかったから良かったものの救助が長引いていたら確実に俺はつるの燃えカスと共に藁家に取り残されていた。
涼曰く「燃え尽きる前で良かったな」…。
………放火してもいいか?
「そんな怒るなよ優也」
「…涼は、俺を親友だと思ってないんだな。だからいつも冷たいし素っ気ないし何か扱い雑だったのか…それならもっと早く……」
「そんなわけないだろっ!!」
普段声を荒らげることが滅多にない涼。
そんな涼の突然の大声に俺はあいた口が塞がらない。
俺今絶対マヌケな顔してるな。美形な涼の前だということが更に負い目を感じさせられる。
「だ、だって!親友ならこんな無茶苦茶な作戦で炎の中に放り込まないだろ!?」
そうだ。
大切な親友ならあんないつ切れるかもわからないロープ1本繋げただけの俺を火事真っ最中の藁の塊に投げつけたりしないはず!
涼は俺のこと本当は………
「……お前なら、大丈夫だと思った」
「え…」
「言っただろ?それでも俺は…大事な親友を、優也を失いたくないって」
真剣な顔で俺の目を真っ直ぐに見てそう言う涼は、今まで見てきた中で1番といっていいほどイケメンだった。
美形だからこの言動も様になるな、なんて皮肉ではなくて。
本当にイケメンだった。
俺は解っていたはずだ。涼があの時本気で俺の心配をして、ハルを救出に行こうとした俺を止めたこと。
そんな涼の心配を知っても、行こうとしたのに見捨てることなく一緒にこの無茶な作戦?を決行してくれたこと。
やり方は悪かったが、協力してくれていた。それに木のつるで引っ張り出された俺を受け止めてくれた。
…涼のことだ。もしロープが燃えて切れたとしても、自分を省みず炎のゲリラ豪雨の中でもきっと助けに来てくれただろう。
涼はそんなやつだって分かってたはずだったのに…な。
「涼……ありがと、な」
「…分かったならいい」
「りょおおぅぅ…。やっぱりお前は俺の親友だよぉぉぉお!!!マイ ベスト フリィエンドォオ!!」
ベすっ-
抱きつこうとしたのを寸前で交わされた俺は、藁家の燃えカスと熱い抱擁を交わした。
「おい、涼!お前のせいで真っ黒じゃねぇか!!」
「知らん」
うん…冷たいね涼。いつも冷たくて素っ気なくて、そしてやっぱり扱いが雑な俺の親友。
これが俺達の形なんだろうな。
まだ絶賛山火事中の中、俺達は呑気にいつもの漫才を繰り広げるのだった…。




