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池に向かう途中、さっきのおじさんに何か体を吹くものはないか?と尋ねると貰ったのは…藁で編まれたバスタオル台の大きさのモノ。
千紗の不器用が生み出した兵器かと思ってたが、下水楼ではこの顔面削りタオルが主流らしい。
…このサイズじゃ全身削りか。
さらに足取りが重くなる。
そして直ぐに緑の池へと、全裸に全身削りタオルという心許ない装備で着いてしまう。ちょっとした殺意を感じる池の淵に立ち、涼と深呼吸。
少し…いや、確実に泥の腐ったような臭いがしているが、大丈夫だッ!
俺と涼で出来ない事なんてない、だよなッ!!
「レッツ…ダイブッ!!」
「…いってら」
「え、ちょ、りょぉう?!裏切ー」
り、やがったなぁッいとも簡単にッ!!
ドブボンッー!!
この身体に悪そうな風呂に2人で挑む覚悟しただろ?なぁ涼ッ!!
レッツダイブの掛け声で池に飛び込んだのは俺だけ。死の香りがする池の中へと思いっきりジャンプした。泥水に沈む寸前見た涼の顔は、清々しいほどの悪人ずらだった。
絶対に許さんッ…!!
「うぉのれぇぇえ!!約束破りやがったなぁ!」
「…一緒に飛び込む約束なんてしてねぇけど。それにその池、風呂じゃない」
「わかっとるわぁああッ!!!でも、この世界じゃこれが露天風呂…」
「えぇ(笑)本当に入っちゃったの(笑)」
緑の藻を纏い、意外にも腰くらいの深さしかなかった池の中から涼に人差し指を立て、ブンブンと振り回し怒りを表現しながら抗議していると、その怒声が聞こえたのか、池風呂へと案内したおじさんが半笑いで裏口から戸を開け現れる。
「冗談だったんだけど(笑)」
「…やっぱりな」
………え?えっ?
「さっき藁タオル渡された時のおっさんの顔で気付いた」
「言えよッ!!その時にッ!!」
「なんかごめんね?(笑)」
(笑)じゃねぇよッ!()に入りきれてない笑が憎らしいおっさんの顔面から漏れ出てるっつのッ!!
おっさんの隠しきれてない笑いにも腹立つが…
「あぁ、笑った。優也、やっぱ面白いな」
本当に飛び込みやがった、と隠しもしない爆笑が1番腹立つッ!!
そうかそうか。そんなに俺の不幸が面白いか…。だったら…俺も容赦しねぇ……
怒りを隠し、無言で池から這い出る。藁タオルも池の底に消え、生まれたままの姿だがそんなのもう気にならない。俺の頭を占めるのは、心の底から湧き上がる…復讐心だけだ。
もう笑いを隠しもしなくなったおっさんと、元々隠す気もない爆笑をかましている涼の隣を通り過ぎ、掴んだのは謎のゴツい機械に繋がれたホース。
照準を2人が一直線上になり、尚且つその先が泥池になるように合わせ、ホースの先に付いていたレバーを限界まで引いた。
俺の惨めさを思い知れッ、薄情者共ッ!!!
「くらえぇぇえいッ!!俺の怒りの…涙の放水をッ!!」
ホースから勢いよく飛び出た水は俺の予想より遥かに強い水力で2人に向かって行った。放水に反応出来なかったおっさんはいの一番に死の緑池に頭から着水する。
…クソッ。やっぱり手強い。爆笑の涙で視界がぼやける中、素早く避ける身体能力には多少驚かされたが、涼とは何年一緒に過ごして来たと思っている。1発目を避けることは予測済みだ。
今は藁タオルがある分俺より防御力が高い。だが片手は藁タオルを押さえる手で封じている。そして俺にはこの方水力最強のマシンという武器がある…いけるッ!!
「どりゃあぁあッ!!」
じりじりと、しかし確実に俺の放水はちょこまかと逃げ回る涼を、殺気を放つ緑の池へと追い詰めている。
涼の手元に『ミント』がないこの状況が更に俺に味方した。涼には俺の放水を避けることしか出来ない。攻撃力は明らかに俺の方が上だ…この勝負もらったぁああッ!!
「…チッ」
大量の水で足元が悪くなり、涼がバランスを崩した隙に俺はホースを持ち直し、一気に距離を詰める為に走った。
その心許ないタオル擬きもまとめて弾き飛ばして、俺と同じ屈辱を味合わせてやるッ!
お前はよく頑張ったよ、涼。さぁ…フィナーレだッ!!
「トドメだぁぁああッ……あ?」
「…あ。」
ボンッッシャアッ!!…サァァ……
背後から爆発音が鳴る。そして突然放水を止めたホースに首を傾げていると直後、柔らかい雨が辺りに降り始める。
わぉ、心が洗われる……。
涼と2人星空をバックに降る夜雨に暫く見惚れていた。ついでに俺にまとわりついていた緑の藻も、軽い運動に汗ばんでいた身体も一緒に洗い流してくれた。
「…涼。ごめんな」
「いや、俺も悪ふざけが過ぎた…ごめん」
あんなに心の重かった入浴が結果的に凄く充実したものになった。




