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side涼
…良く眠っている。
優也が横になり、信じてると言い残した後数秒後には死んだように寝てしまった。ただ、寒いのか自分を抱きしめるように丸まって時折身震いしている。
…それはそうだろうな。足も腕も晒しまくっているメイド服のままだ。気温も日中は地上でいう春くらいの暖かさだったが、流石に陽が落ちた今は上着を着ていないと肌寒い。
「…………」
ーバサッ
少し迷ったが着ていた制服の上着を優也に掛けた。優也は俺より体力が乏しい。明日からも相当ハードな生活が続くだろう。
…いや、明日からが本番だ。
何せ今からは……命を賭けた鬼ごっこが始まるのだから。
逃げるのは勿論、俺と優也。そして鬼は…フォンデュ国民全て。そして時間が経つにつれ鬼は増殖し、最終的にはこの下水楼ほぼ全ての人が敵になる。
「……はぁ…チッ」
「いはいいはいッ…噛まないでお馬さ…グゥ……」
本当にコイツはいつもいつもやらかしてくれやがる…。寝顔が腹立たしくなり、頬を摘み上に伸ばせるだけ伸ばしてみた。
この呑気に隣で寝てるコイツはきっと気付いていない。チョコフォンデュ店での追い剥ぎ事件…あれはただ店内中の人間が俺達の奇行…って元はと言えば優也の奇行なんだが、それに驚いていただけじゃない。
アイツらの殆どの視線は俺の背中…この虎の刺青に集中していた。確かに背中一面の虎の刺青は迫力があるだろう。たがそれを抜きにしてもあの恐怖に満ちた表情、眼……あれは異常だ。
「…魔王、か」
…そうだ。卍ホールの下の世界、下水楼で何度か言われた、魔王。俺は認めたわけじゃねぇが…そう考えた方がしっくりくる。俺はあの場で畏怖の対象…魔王だと認識されたのかもしれない。
ノリスティン女王にはこの刺青を見てもいないのに魔王認定されたがな…。
その証拠に逃げ込んだ先の千紗の親父さんの商会にあの騒動後直ぐに粗雑なキモカワ兵士が乗り込んで来た。多分あの店内にいた誰かが兵士を呼んだのだろう。
…正直俺一人なら逃げ切れる自信がある。だが運動音痴&最強のトラブルメーカーの優也を連れてとなると……途端に難易度はヘルモードだ。
それでも、やるしかない。
…脱出期限は一年。
「…やってやるさ」
「やれやれッ…ムニャ…ニャ、りょぉ…」
これは寝言だ…寝言だと分かってはいるが、ムカつくものはムカつくので反対の頬も同様に伸ばせる限界まで引っ張っておいた。
「いははッいは…たすけ…お馬ぁ……グゥ」
「…フッ」
優也の馬鹿な寝顔と寝言を見て聞いていると、何故かどうにかなる様な気がして来る。
…俺も寝よう。
ゴロン、と起き上げていた体を元居た位置に戻した。
「…寒っ」
上着、渡さなきゃ良かった…。
とりあえず近くに積んであった藁を自分に盛り、暖を取ってみた。…なかなか悪くない。
思いの外優秀な藁に誘われ、俺もゆっくりと睡魔に身を委ねるのだった。




